ドル/円は重要イベントを控え今週もこう着状態が続いています。トランプ大統領の利下げ要求とドル高志向の矛盾する発言やFRBの動向に注目しながら相場に臨むことになりそうです。

日銀会合と米雇用統計を控え、8月はドル/円が動きやすくなるのかに注目です。


重要イベント集中、8月のドル/円相場は動くのか?トランプ氏の...の画像はこちら >>

動きづらい相場が続くドル/円。FRBの次の一手とトランプ発言の矛盾が焦点

 ドル/円は今週も1ドル=148円を挟んだ動きをしています。今週から来月初にかけて重要イベントが控えていることから動きづらい相場が続いています。


  • 7月28~29日:米中通商協議
  • 7月29~30日:米連邦公開市場委員会(FOMC)
  • 7月30~31日:日本銀行金融政策決定会合
  • 7月30日:米国4-6月期GDP、ユーロ圏4-6月期GDP
  • 8月1日:米雇用統計と関税交渉期限

 FOMCと日銀金融政策決定会合では政策金利据え置きが予想されていますが、日本と欧州連合(EU)が米国との貿易協議合意を受けて、据え置き理由となっていた不透明性が一つ後退しました。このことが各中央銀行の見解に反映され、政策姿勢に変化がみられるのかどうか注目したいと思います。


 6月のFOMCでは、パウエル議長は記者会見で高関税政策の影響に関しては、物価上昇として
表れるには「しばらく時間がかかる」「夏の間に多くのことが明らかになる」と述べ、不確実性を見極めるまでは急がない慎重な姿勢を示しました。


 一方で、FOMC後の議会証言ではパウエル議長は、「インフレが低下し労働市場が軟化した場合、利下げ前倒しの可能性も」と述べ、「インフレ率は予想ほど強くない可能性がある」などと発言し、労働市場を気にし始めているハト派姿勢をにじませました。今回のFOMCでは急がない姿勢に変化がみられるのかどうか注目です。


 また、6月のFOMCでは全会一致で据え置きが決定されましたが、今回のFOMCでは据え置きが決定されても、7月利下げを示唆しているボウマン副議長やウォラー理事が反対することが予想されています。また、それ以上に反対者が増えればドル安に勢いがつくかもしれません。


 米連邦準備制度理事会(FRB)は年2回の利下げ見通しとなっており、市場の見方も同じです。

7月据え置き、9月利下げ、12月利下げ期待となっています。今回のFOMCで次回9月利下げが示唆されればドル安に反応することが予想されます。


 24日、トランプ大統領がFRBを訪問し(大統領のFRB訪問自体が異例の出来事)、二人並んでいる時にトランプ大統領がパウエル議長の腰の辺りをポンとたたいて、「利下げしかないだろう」と話しかけていた映像は印象的でした。パウエル議長は苦笑いのような表情をしていましたが、外堀がどんどん埋められていくような映像でした。


 一方で、25日、トランプ大統領は年初から続くドル安について記者団に聞かれ、「眠れないほど心配することはない」と述べ、「私は『強いドル』を好む人間だが、弱いドルははるかに多くの利益をもたらす」と答えました。同時に「私は決して弱い通貨が好きだとは言わない」とも述べ、ドルの信認低下に警戒感も示しました。


 トランプ大統領はドル安を志向しているとの見方が市場にありましたが、FRBに対する利下げ要求を強める中で、利下げによる過度のドル安を避ける意味で発言を変えているのかもしれません。


 トランプ大統領のドル安につながる利下げ要求とドル高志向という矛盾する発言に市場は戸惑いながらも相場に臨む必要があります。


日銀会合と米雇用統計。8月を動かす二大イベント

 先週は日銀の追加利上げ見送り報道で円安に動いたことから、今回の会合で追加利上げ見送りとなってもあまり円安には反応しない可能性があります。一方で年内利上げなしとの見方も根強いため、日銀会合で年内利上げの可能性が示唆されれば円高に動くことが予想されます。


 また、今回発表される展望レポートの経済見通しで修正されるのかどうか注目です。

前回4月見通しでは、2025年度の実質国内総生産(GDP)は1月見通しの1.1%から0.5%に下方修正されました。消費者物価指数(除く生鮮食品)は2.4%から2.2%に下方修正されました。


 今回の展望レポートで消費者物価指数が上方修正されるのかどうか注目です。物価が上方修正されると日銀の利上げ期待が高まる可能性があります。


 7月29日に内閣府が公表した7月の月例経済報告では、景気は6月より改善の報告となっています。6月の基調判断は「景気は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策などによる不透明感がみられる」としていましたが、7月報告では「景気は、米国の通商政策などによる影響が一部にみられるものの、緩やかに回復している」としています。


 米国の通商政策については、日銀よりもいち早く「不透明感」という文言が削除されています。日銀も景気への判断材料として米国の通商政策の「不透明感」について見解を変えるのかどうか注目です。


 しかし、不確実性要因が一つ後退したとしても、政局不透明では日銀も動きづらいかもしれません。


 日銀、FOMCで据え置きとなれば、やはり米雇用統計で相場は動きそうです。先月は非農業部門雇用者数が14.7万人増加と予想を上回り、失業率が4.1%に改善しました。


 しかし、雇用増は教育関係の季節要因であり、失業率の改善は労働参加率の低下によるもの(「隠れ失業者」が増加)という見方があるため、その要因が剥落するような指標になるのかどうか注目したいと思います。

非農業部門雇用者数は低下予想、失業率は上昇予想となっていますが、9月利下げを後押しする指標になるかどうか注目です。


 米雇用統計の前哨戦である6月雇用動態調査(JOLTS)求人件数は743.7万件と前月771.2万件を下回り、予想(750万件)も下回りました。30日には民間調査のADP雇用統計が発表されます。この数字の結果によって、1日の雇用統計への期待が変わりますので注意が必要です。


 また、8月1日は、相互関税交渉期限であり、トランプ大統領は個別交渉ができていない国に対しては15~20%になるだろうと述べています。追加関税が決定することによって先行きの不透明感が後退し、相場が動きやすくなるのでしょうか。8月1日は潮の流れが変わる日になるのかどうか注目です。


(ハッサク)

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