スポティファイ・テクノロジーの2025年12月期2Qは、10.1%増収、52.6%営業増益。会社側ガイダンスは未達となったが、これは主にユーロ高ドル安の影響。

有料会員は順調に増加しており、新規事業のオーディオブックとポッドキャストが好調。楽天証券の目標株価を引き上げる。


決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の...の画像はこちら >>

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の影響を受けたが有料会員が順調に増加中) 」


本レポートに掲載した銘柄: スポティファイ・テクノロジー(SPOT、NYSE)


1.スポティファイ・テクノロジーの2025年12月期2Qは、10.1%増収、52.6%営業増益。

 スポティファイ・テクノロジー(以下スポティファイ)の2025年12月期2Q(2025年4-6月期、以下今2Q)は、売上高41.93億ユーロ(前年比10.1%増)、営業利益4.06億ユーロ(同52.6%増)となりました。子会社スポティファイUSAがEB債(交換可能債。一定の条件のもと、現金、スポティファイ株式、現金とスポティファイ株式の組み合わせのいずれかに転換できる)15億米ドル(2026年3月15日満期)を発行したことにより、一時的なファイナンス費用が発生したため、当期純損失0.86億ユーロ(前年同期は2.74億ユーロの黒字)と最終赤字となりました。


 今1Q決算発表時の会社側ガイダンス、売上高43億ユーロ、営業利益5.39億ドルを下回りましたが、これは年初から進んだユーロ高ドル安の影響によるものです。為替変動の影響を除くと、売上高は前年比15%増と今1Qに続き高い伸びとなりました。


 セグメント別に見ると、プレミアム会員(有料会員)事業は、売上高37.40億ユーロ(前年比11.6%増)、売上総利益12.37億ユーロ(同17.7%増)となりました。

為替変動を除くと売上高は前年比16%増でした。プレミアム会員が今1Q2.68億人から今2Q2.76億人へ順調に増えているため、ユーロ高の影響はありましたが、増収増益となりました。既存の音楽配信だけでなく、オーディオブックとポッドキャストが業績に貢献しました。


 無料・広告型事業は、売上高4.53億ユーロ(同0.7%減)、売上総利益0.83億ユーロ(同36.1%増)となりました。為替変動を除くと5%増収でした。当初計画よりも広告事業の展開が遅れていますが、オーディオポッドと音楽事業が好調なので、広告主が増え広告事業の売上総利益率が上昇しました。


表1 スポティファイ・テクノロジーの業績


決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の影響を受けたが有料会員が順調に増加中)
株価    689.23ドル(2025年8月11日)時価総額    141,586百万ドル(2025年8月11日)発行済株数    205.427百万株(完全希薄化後、Diluted)発行済株数    205.427百万株(完全希薄化前、Basic)1ユーロ=1.1614ドル(2025/8/12)単位:百万ユーロ、ドル、%、倍出所:会社資料より楽天証券作成。注1:当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。注2:EPSは完全希薄化後(Diluted)発行済株数で計算。ただし、時価総額は完全希薄化前(Basic)で計算。

表2 スポティファイ・テクノロジー:セグメント別業績(四半期)


決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の影響を受けたが有料会員が順調に増加中)
単位:100万ユーロ出所:会社資料より楽天証券作成

グラフ1 スポティファイ・テクノロジーのマンスリーアクティブユーザー数


決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の影響を受けたが有料会員が順調に増加中)
単位:100万人、出所:会社資料より楽天証券作成

2.楽天証券の業績予想を下方修正するが、2026年12月期は増収増益率回復へ。

 会社側は今2Q業績ガイダンスを、売上高42億ユーロ(前年比5.3%増)、営業利益4.85億ユーロ(同6.8%増)とさらに伸びが鈍化すると予想しています。ただし、ユーロ高ドル安が打ち止めになれば、今4Qには季節的に音楽需要が増える時期でもあるため業績の伸びが回復すると予想されます。


 楽天証券では、今2Qまでの業績と今3Qの会社側ガイダンスを見て、スポティファイの業績予想を、2025年12月期売上高173億ユーロ(前年比10.4%増)、営業利益19.20億ユーロ(同40.7%増)、2026年12月期を売上高197億ユーロ(同13.9%増)、営業利益29億ユーロ(同51.0%増)と予想します。いずれも下方修正しますが、2026年12月期は伸び率が回復すること、広告事業がある程度拡大することが期待されます。


表3 スポティファイ:セグメント別業績(通期)


決算レポート:スポティファイ・テクノロジー(ドル安ユーロ高の影響を受けたが有料会員が順調に増加中)
単位:100万ユーロ出所:会社資料より楽天証券作成、予想は楽天証券

3.今後6~12カ月間の目標株価を、前回の830ドルから870ドルに引き上げる。

 スポティファイ・テクノロジーの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の830ドルから870ドルに引き上げます。


 今後の成長性を考慮し、楽天証券の2026年12月期予想1株当たり利益(EPS)13.68ドル(楽天証券の2026年12月期予想EPS11.78ユーロを1ユーロ=1.1614ドルでドルに換算)に、2026年12月期楽天証券営業増益率51.0%に対してPEG=1.2~1.3倍程度として、想定株価収益率(PER)60~65倍を当てはめました。


 引き続き中長期で投資妙味を感じます。


本レポートに掲載した銘柄: スポティファイ・テクノロジー(SPOT、NYSE)


(今中 能夫)

編集部おすすめ