先週の日経平均は週間で1,750円高と大幅に上昇し、最高値を更新して4万4,000円台に乗せる展開となりました。今週は日米の金融政策イベントが控える中、足元の力強い相場の地合いが続くかが注目されます。
最高値更新で4万4,000円台に乗せてきた先週の日経平均
先週末12日(金)の日経平均株価は4万4,768円で取引を終え、ついに4万4,000円台を超えました。
前週の終値(4万3,018円)からは1,750円高となり、週間ベースでも3週連続の上昇を記録しています。
<図1>日経平均(日足)とMACDの動き(2025年9月12日時点)

日足チャートで日々の値動きを確認すると、週の半ばまでは4万4,000円台で上値が抑えられていましたが、週末にかけての2日間の上昇で一気にこの節目を抜け出した様子がうかがえます。
そのような状況で迎える今週は、日米で金融政策イベントの開催が予定されており、注目度の高い一週間となります。最高値を更新した先週の株高基調を維持できるかが焦点となりますが、足元の相場ムードが強い反面、「売り」のきっかけになり得る材料も少なくない点には注意しておく必要があるかもしれません。
幻のSQと「達成感」
また、先週末12日(金)は日経225先物取引における清算日(メジャーSQ)でもありました。
算出されたSQ値は4万5,016円でしたが、この日の日経平均の高値は4万4,888円だったため、いわゆる「幻のSQ」となっています。
「幻のSQ」とは、実際の取引でつけた高値がSQ値に届かない状況のことを指しますが、一般的に、「幻のSQが出現した場合、早期に日経平均がSQ値を上回れないと、このSQ値がその後の上値抵抗として意識されてしまい、売りに押されやすくなる」とされています。
教科書通りに従うならば注意すべき状況ですが、実は2025年の相場で幻のSQが出現するのは今回で4回目となります。
<図2>2025年のSQ値の状況

上記の図2が示す通り、5月から7月にかけて3カ月連続で幻のSQが出現しましたが、いずれのケースでも翌週の株価が上昇しており、幻のSQに対する不安を早期に打ち消しています。
こうした直近の傾向や、現在の相場ムードが強いことを踏まえると、今回も幻のSQを乗り越えて上昇する可能性は高いと考えられます。ただ、SQ値超えの達成は必然的に4万5,000円の大台に乗せることを意味するため、4万5,000円台到達による達成感が売りのきっかけになる展開も想定されます。
相場のリズムと「過熱感」
続いて相場のリズムの視点からもチェックして行きます。
前回のレポートでも指摘した通り、4月の株価急落で底を打ってからの日経平均は、25日移動平均線をサポートにしながら、株価との「乖離」と「修正」を繰り返して水準を切り上げるリズムを刻んでいます。
▼前回のレポート
【今週の株式市場】米利下げ期待と景気懸念が交錯、政局不透明感が日本株の重石に?
<図3>日経平均(日足)と移動平均線乖離率(25日)(2025年9月12日)

先週についても、日経平均が最高値を更新していく値動きに伴い、25日移動平均線からの乖離が進みましたが、図3からも分かるように、株価と移動平均線の乖離率がプラス5%を超えたあたりから過熱感が意識され、上昇から調整へと転じる傾向が見られます。
先週末12日(金)時点の25日移動平均線の値(4万2,984円)で計算すると、プラス5%乖離は4万5,133円になります。やはり4万5,000円超えあたりが意識され、売りが出始める展開が考えられます。
日米の金融政策イベントと「出尽くし感」
そして、冒頭で触れたように、今週は日米で金融政策に関する重要イベントが予定されています。
具体的な日程を見ていくと、米連邦公開市場委員会(FOMC)が16日(火)から17日(水)、日本銀行の金融政策決定会合が18日(木)から19日(金)にかけて開催されます。
米FOMCでは利下げの決定がほぼ確実視されており、決定内容自体に大きなサプライズはない見込みです。焦点は、パウエルFRB議長の記者会見や、FRBメンバーによる金利・景気見通し(ドット・チャート)から、次回以降の利下げ期待へと市場の関心を繋げられるかという点になります(市場では今回を含め年内あと3回の利下げが見込まれています)。
日銀の会合についても、金融政策の現状維持が想定されており、取引時間中に発表される決定内容については、米FOMCと同様にサプライズはないと見られています。今後の利上げ時期を探る上で日銀・植田和男総裁の記者会見が注目されますが、記者会見が週末19日(金)の取引終了後に行われるため、その内容が市場に織り込まれるのは来週以降になります。
これらの日米金融政策イベントを無難に通過すれば株高基調が継続するという見方があります。しかし、ここ最近の株高の一因が9月の米利下げ期待であっただけに、材料の出尽くし感から売りに転じるという市場の反応も考慮しておく必要がありそうです。
基本的な相場レンジの見通しは変わらず。だが…
このように、今週の株式市場は、これまで見てきた「達成感」や「過熱感」、「出尽くし感」などが売りの口実となる展開に注意が必要です。
もっとも、これらを要因とする売りは相場の見通しそのものが悪化したわけではないため、下値では押し目買いが入ると想定されます。その際は、キリの良い株価水準や移動平均線などが下値の目安として意識されると思われます。
また、年末に向けた想定レンジについても、前回のレポートから基本的な見通しは変わっていません。
<図4>日経平均(週足)の線形回帰トレンドとMACD

上の図4は、日経平均の週足チャートに2023年1月6日週を起点とした線形回帰トレンドを描画したものです。先週の株価上昇によって、線形回帰トレンドのプラス1σ(シグマ)を上抜けてきました。
これまで見てきた「売りのきっかけ」を退けて、今週もこのまま上昇が続くのであれば、次の上値目安はプラス2σにあたる4万6,809円あたりとなります。
一方で、想定通りに売りが入る展開となった場合には、まずはプラス1σの4万4,469円水準を挟んだもみ合いがメインシナリオとなります。さらに株価が下振れした場合でも、中心線(4万2,128円)を下回るまでは、過度な心配は不要と考えられます。
しかしながら、政治を含めた国際情勢に目を向けると、先週は様々な出来事が発生していました。石破茂首相の退任表明に加え、トランプ大統領に近い若手政治活動家のカーク氏が暗殺事件、議会の信任投票の結果を受けたフランスの首相が辞任、ロシア無人機のポーランド領内侵入など、日米の株式市場が最高値を更新する裏で、実は多くの事件がおこっていました。
現時点の相場は、これらの事象を大きく材料視していません。しかし、地政学的情勢による不安要素が改めて意識されると、リスクオフムードに傾くこともあり得るため、厄介な火種がくすぶっていることは頭の片隅に置いておいた方が良いかもしれません。
(土信田 雅之)