先週の日経平均は終値で最高値を更新も、高値更新はありませんでした。しかし、下値は堅く、買い意欲の強さを示唆しています。

今週は配当権利落ち、日銀短観、自民党総裁選など重要イベントが目白押しです。中国の大型連休による資金流入期待もありますが、相場は上昇トレンドを維持できるかを占う重要な一週間になりそうです。


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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】今週の株式市場 注目イベント控えた慎重見通しの中、株価の上振れはあるか?<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


最高値更新も実は微妙な値動きだった先週の日経平均

 先週末26日(金)の日経平均株価は4万5,354円で取引を終えました。


 前週末終値(4万5,045円)からは309円高、週間でも5週間連続の上昇だったほか、この期間の上昇幅は2,721円と大きくなっています。


 場況解説の報道等でも、「連日で終値ベースの最高値を更新」という文字が躍るなど、相場のムードはかなり前向きの印象でした。


<図1>日経平均5分足の動き(2025年9月18~26日)
【日本株】日銀短観、総裁選、配当落ち…上昇トレンドを維持できるか
出所:MARKETSPEEDII

 ただし、直近の日経平均の値動きを5分足チャートで確認すると、取引時間中を含めた先週1週間の高値は、25日(木)の4万5,824円でした。実はこの高値、日本銀行金融政策決定会合の結果公表後に株価が乱高下した19日(金)の高値(4万5,852円)を超えきれておらず、イマイチ上値を伸ばせていなかった面があります。


 とはいえ、下値については、24日(水)と25日(木)の取引が象徴しているように、前日比でマイナス圏に沈む場面がありながらも、プラスに転じて取引を終える日があるなど、株価が下がったところでしっかりと買いが入る動きも見られました。


 さらに、4万5,000円台もしっかり維持しており、実際のところは、「下値は堅いが、かといって積極的に上値を追っているわけではない」という微妙な展開だったことが分かります。


それでも、相場の買い意欲は強い?

 同じく、最近の日経平均の動きを日足チャートで確認すると、25日移動平均線との乖離率が示すように、乖離率プラス5%の手前あたりでもたついている様子がうかがえます。また、それに合わせて日経平均の上値が抑えられるような展開となっていることが分かります。


<図2>日経平均(日足)の動き
【日本株】日銀短観、総裁選、配当落ち…上昇トレンドを維持できるか
出所:MARKETSPEEDII

 上の図2を見ても分かるように、4月の株価急落時から反発して以降の日経平均は、25日移動平均線との「乖離」と「修正」を繰り返しながら上昇していくリズムを刻んできました。


 これまでは、乖離率がプラス5%を超えてくると、25日移動平均線まで株価が下落していく値幅調整となっていました。しかし、足元では乖離を修正しに行く動きではなく、株価水準を維持しながらのもみ合いが続いていて、売りをこなすだけの買い意欲の強さが感じられます。


 また、株価のもみ合いは相場のエネルギーが溜まっていく局面で表れることが多く、抜けた方向にトレンドが発生しやすいという傾向があります。


 これまでのリズム通りに、25日移動平均線を意識した下落になるのか、それとも再び上値を追っていくのか、今週は「次の動き」が出てくるかどうかが注目されます。


今週のイベントとメインシナリオ

 このような状況で迎える今週の株式市場は、「月またぎ」で10月相場入りとなります。国内株市場では、週初めの29日(月)が9月の権利落ち日にあたり、理論上では配当落ち分だけ株価が下がることになります。


 今回の配当落ちによる株価へのインパクトは、日経平均では300円ほど株価を押し下げることが見込まれています。今週以降も相場の上昇基調を続けて行くには、早い段階で上昇に転じ、配当落ちによる下落分を取り戻していく必要があります。


 しかも、先週末の日経平均終値が4万5,354円だったことを考えると、配当落ちの理論株価がちょうど4万5,000円という節目に該当します。この株価水準を維持できるか、そこから反発することができるかが、今週の最初の焦点になります。


 また、月末および期末を迎えるタイミングもあって、これまでの運用成績を確定させたり、資産配分を調整したりするため、機関投資家による「リバランス売り」が出てくる可能性も指摘されています。


 さらに、今週は注目のイベントや材料が多くなっています。


 まず、月初恒例の米雇用統計や、米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数といった米経済指標が今週発表され、米国の景況感や金融政策に関する思惑が働きやすいでしょう。また、国内では日銀が30日(火)に金融政策決定会合の「主な意見」を公表するほか、翌1日(水)には日銀短観が発表されます。


 さらに、4日(土)には自民党総裁選も予定されています。


 このように、今週の注目イベントが予定されている中、売りをこなして上昇していく必要があるため、メインシナリオとしては、やや慎重な値動きを予想する見方が多いようです。


条件の組み合わせ次第では株価の上振れも

 もちろん、米国株市場が堅調に推移したり、日銀短観でも国内景況感の好調さを示す結果が出てくるなど、好条件が組み合わされば、株価が一段高していく可能性があります。


 例えば、米国で発表される雇用統計などの経済指標が市場予想を上回る強い結果となり、米国株市場が堅調に推移したとします。あるいは、10月1日に発表される日銀短観で、国内の景況感の力強さが改めて示されるような結果が出てくるかもしれません。こうした好条件がうまく組み合わされば、投資家心理が一気に強気に傾き、株価がもう一段高していく可能性があります。


 このほかにも、今週ならではの特殊な要因も追い風になるかもしれません。それは、中国の大型連休です。今週1日(水)から、中国の株式市場(上海と深セン)は国慶節(建国記念日)と中秋節のため、来週8日(水)まで休場となります。


 巨大な中国市場が長期間休みに入るため、アジア地域の株式市場で運用している世界の投資家が、その間の投資先として日本株に資金を振り向けてくる可能性が考えられます。


 また、この連休を利用して多くの中国人観光客が日本を訪れることが予想され、いわゆる「インバウンド消費」への期待が高まります。

百貨店やホテル、鉄道といった関連企業の株が買われ、相場全体を押し上げることも期待されます。これらの要因が重なれば、市場の慎重な見方を覆し、思ったよりも力強い上昇相場となる展開も想定しておくと良いかもしれません。


 その場合、先ほど図2で見てきた25日移動平均線乖離率のプラス5%乖離を超えてくることが考えられます。


 直近でピークをつけた時の乖離率を遡って確認していくと、6.44%、6.46%、5.39%、5.49%、9.04%となっていることが確認できます。先週末29日(金)時点の25日移動平均線の値(4万3,716円)でそれぞれを計算すると、4万6,531円、4万6,540円、4万6,072円、4万6,116円、4万7,667円となり、株価が上昇していった際の上値の目安になりそうです。


株価調整時のポイントと年末までの想定レンジ

 反対に、株価が下落して行った場合には、25日移動平均線あたりで下げ止まって、相場の上昇リズムを維持できるかどうかがポイントになり、「株価の下落が調整なのか、下降基調への転換なのか?」を見極めて行くことになります。


<図3>日経平均(日足)のボリンジャーバンド(2025年9月26日時点)
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出所:MARKETSPEEDII

 仮に、株価が25日移動平均線を下抜けてしまった際には、ボリンジャーバンドのマイナス2σ(シグマ)が注目されると思われます。ボリンジャーバンドは、移動平均線とその上下に描かれる標準偏差のライン(バンド)で構成されています。


 実際に、上の図3は日経平均(日足)のボリンジャーバンドです。


 株価がプラス2σにタッチして、下落に転じた個所を丸で示していますが、25日移動平均線あたりで下げ止まった場合には上昇トレンドが継続します。一方で、25日移動平均線がサポートとして機能せず、明確に下抜けてしまった場合には、マイナス2σあたりまで下落するという傾向があります。


 先週末26日(金)時点でのマイナス1σは4万2,458円、マイナス2σは4万1,200円となっています。

ただし、ボリンジャーバンドの値は日々変化していきますし、先ほどの述べた通り、足元の日経平均はもみ合い気味に推移していますので、バンドの幅が縮小していくことも考えられます。


 したがって、実際に、株価の下落が進行した際には4万2,000円台のどこかで下げ止まりそうというイメージです。


 ちなみに、マイナス1σの値ですが、前回や前々回のレポートで紹介した週足の「線形回帰トレンド」の中心線(26日時点で4万2,478円)と近い水準です。


<図4>日経平均(週足)の線形回帰トレンドとMACD(2025年9月26日時点)
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出所:MARKETSPEEDII

 線形回帰トレンドでは、株価が中心線より下に位置していると「弱気」と判断されます。


 つまり、今後の株価が25日移動平均線を下抜けてしまった場合、線形回帰トレンドの中心線までも下回ってしまうと、弱気相場入りする可能性があるため、注意しておく必要があります。


(土信田 雅之)

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