先週の株式市場は、為替介入への警戒感、前週のトランプ米大統領の動きを受けて、「売り先行から持ち直す展開」が2週続きました。今週は、日米主要企業の決算がヤマ場を迎え、相場の行方を左右するでしょう。

決算以外にも、衆議院選挙の開票日や米雇用統計、次期FRB議長人事の影響など、重要な材料が目白押しで、相場の方向感は不透明です。


【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意...の画像はこちら >>

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 【テクニカル分析】決算・米雇用統計・衆院選、材料過多の株式市場。週足チャートに現れた「調整の兆し」に注意<チャートで振り返る先週の株式市場と今週の見通し> 」


先週の振り返り:2週連続で「売り先行から持ち直す」展開

 先週末30日(金)の日経平均株価は、5万3,322円で取引を終えました。前週末終値5万3,846円からは524円安(0.97%安)となり、週間ベースでは2週連続で下落しています。


<図1>日経平均の5分足チャート(2026年1月26~30日)
【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意
出所:MARKETSPEEDII

 あらためて、先週1週間の日経平均の値動きを5分足チャートで振り返ると、売りが先行するスタートから、持ち直していく展開だったことが分かります。


 前週末23日の夕方から夜間にかけて、日米金融当局による「レートチェック(為替相場の水準照会)」が実施されたとの報道が市場を駆けめぐり、為替介入への警戒感が高まったことで急速に円高・ドル安が進行しました。その流れを受けた週明けの日本株市場では、自動車株などの輸出関連株への重石となって、日経平均は株価水準を切り下げてスタートすることになりました。


 その後は、株価の上げ下げを繰り返しながら持ち直す動きとなりました。とりわけ、半導体関連株の一角( アドバンテスト[6857] など)が堅調な決算を発表したことなどが相場を支えましたが、選挙情勢を見極めたい思惑も絡み、相場全体を大きく押し上げる原動力にはなりませんでした。


 結果的に、前週に続いて「売り先行から持ち直す」展開となりました。

前週はトランプ米大統領によるグリーンランド領有を巡る発言が売り材料となり、先週は日米金融当局による「レートチェック」を発端とする円高進行が売り材料となった格好です。


 外部環境のノイズに揺さぶられつつも大崩れはしませんでしたが、上値を追うには材料不足という、もどかしい展開がここ2週間の動きだったと言えそうです。


基本は企業決算にらみの展開

 そんな中で迎える今週は、2月相場入りとなります。日米の企業決算をにらみながらの展開がメインシナリオになります。


 主な決算発表予定を簡単にまとめると、国内企業では、 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306) や みずほフィナンシャルグループ(8411) といったメガバンクをはじめ、 トヨタ自動車(7203) や ソニーグループ(6758) などが決算を発表します。また、 三菱商事(8058) や 三井物産(8031) 、 伊藤忠商事(8001) など大手商社の決算動向も、バリュー株相場の行方を見ていく上で重要です。


 米国でも、主役級の企業決算が相次ぎます。アルファベット( GOOGL 、 GOOG )や アマゾン・ドット・コム(AMZN) といった「ハイパースケーラー(巨大IT企業)」に加え、半導体関連では アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD) や クアルコム(QCOM) 、そして ソフトバンクグループ(9984) 傘下の アーム・ホールディングス(ARM) などが発表を予定しています。


 また、AI・ビッグデータ解析で注目され、昨年の株価が爆騰した パランティア・テクノロジーズ(PLTR) も決算を発表します。


 とりわけ、米国のAI・半導体関連などをはじめとするテック系の決算動向が注目されます。


 いわゆる「AI・半導体相場」は現在も継続していますが、昨年末あたりからその中身に変化が生じています。


<図2>米マグニフィセント・セブン(M7)のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年1月30日時点)
【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意
出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 図2は、2025年末を100とした、米国の巨大テック企業群「マグニフィセント・セブン(M7)」のパフォーマンス比較です。昨年までのAI・半導体相場を牽引していたM7銘柄ですが、足元では明暗が分かれています。

 


 象徴的だったのは、先週に決算を発表した マイクロソフト(MSFT) と メタ・プラットフォームズ(META) に対する米株市場の反応でした。AIへの巨額投資が続き、収益貢献へのタイムラグが懸念されたマイクロソフトが売られる一方で、広告事業の好調さとAI活用の効率化が評価されたメタが買われる動きとなりました。


 さらに、AI・半導体関連銘柄の中でも「色分け」が進んでいます。


<図3>米注目企業のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年1月30日時点)
【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意
出所:MARKETSPEEDIIデータを元に作成

 図3を見ると、昨年の相場を牽引したパランティア・テクノロジーズや クラウドストライク(CRWD) をはじめ、 ブロードコム(AVGO) 、アームHD、アドバンスト・マイクロ・デバイスなどのパフォーマンスは控えめです。


 一方で、 サンディスク(SNDK) や シーゲイト・テクノロジー(STX) 、 ウエスタン・デジタル(WDC) 、 ラムリサーチ(LRCX) といった、メモリ関連やデータセンター向け部材、半導体製造装置の銘柄が比較的強い動きを見せています。


 このように、AI・半導体相場の中でも、物色動向が変化している様子が垣間見えます。


 足元で株価が伸び悩んでいるハイパースケーラーの株価が、今週のアルファベットやアマゾンの決算発表を機に持ち直した場合、足元で上昇していたメモリー関連や製造装置関連株がいったん利益確定売りに押される(セクターローテーション)のか、それとも、相場全体をもう一段階引き上げる原動力となるのかが、今週の相場のムードを左右することになりそうです。


相場の方向感は探りにくい?

 また、今週は企業決算以外にも注目材料は多く、相場の方向感が掴みにくい状況が続くかもしれません。


 例えば、週末の日曜日(8日)に、衆議院選挙の投開票日が待っています。各種報道機関の情勢調査では、与党側が優勢と報じられており、今のところは「高市早苗首相の退陣リスク(=政治的混乱)」は後退しています。


 とはいえ、「(選挙は)蓋を開けてみるまで分からない」のが常であるほか、選挙後の議席数によっては連立政権の枠組みや政策運営のスピード感が変わるため、「高市トレードを先取りする展開よりも、様子見ムードの方が強まるかもしれません。


 また、週末6日(金)には、月初恒例の米雇用統計(1月分)が公表されます。昨年までの相場では、「悪いニュースは良いニュース(景気減速見通しが利下げ期待につながって株高)」という反応が多く見られましたが、最近は米経済の底堅さが際立っており、解釈が難しくなっています。


 さらに、後述する米連邦準備制度理事会(FRB)議長人事も踏まえると、強すぎる雇用統計は「利下げが遠のく」としてネガティブ視されるリスクも残ります。


そして、先週末にトランプ米大統領が次期FRB議長に、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏を指名しました。


 これを受けた30日(金)の米国市場は、株式市場(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数、ナスダック総合指数)が下落、債券市場も下落して利回りが上昇しました。為替市場ではドルの買い戻しが入り、円安・ドル高が進行。これまで大きく価格が上昇していた金(ゴールド)が急落という初期反応を見せました。


 ケビン・ウォーシュ氏に対して、市場は「意外とタカ派(インフレ抑制重視・金融引き締めに積極的)」と見做しており、「米国の追加利下げのペースが鈍化するのではないか?」との見方が強まったと思われます。


 このように、今週は市場参加者が注目すべき視点が多岐にわたるため、たとえ株価が動き出したとしても、企業決算以外の材料によっては、相場が長続きせずに荒い値動きとなったり、材料過多によるお見合い状態で小動きにとどまる可能性が高そうです。


持っておきたい調整局面への意識

 これまで見てきたことを踏まえつつ、今後の日本株の見通しについて、テクニカル分析の視点でもチェックしていきます。


 特に、中長期的には調整局面入りの準備が整いつつある状況であることを意識しておく必要がありそうです。


<図4>日経平均(週足)と順位相関指数(RCI)の動き(2026年1月30日時点)
【日本株】衆院選直前、 週足チャートの「調整の兆し」に要注意
出所:MARKETSPEEDII

 図4は、日経平均の週足チャートとRCIの推移を示しています。


 RCIは、「Rank Correlation Index:順位相関指数」と呼ばれるオシレーター系のテクニカル指標の一種で、主に中長期のトレンドの強さや過熱感、転換点を探るのに使われます。


 細かい説明は省きますが、時間の経過と株価の強さを考慮して数値を求め、プラス100%からマイナス100%の範囲内で動きます。

RCIの数値が高いほど買われ過ぎ、反対に低いほど売られ過ぎと判断します。


 図4では、短期(9週)、中期(26週)、長期(52週)の3本の線を描いていますが、過去のチャートを遡ると、「中期線と長期線が、高い位置からともに下向きに転じた場合」に、株価が本格的な調整局面を迎えていることが分かります。


 現在の状況を見ると、中期線(26週)がすでに下向きに転じていますが、長期線(52週)はまだ上を向いています。まだ、「調整入り」のサインが点灯しているわけではありませんが、長期線が下に向き始めた場合には注意が必要です。


 したがって、今週の株式市場は、企業決算を手掛かりに上昇する展開が期待できます。一方で、市場を取り巻く相場環境は読みにくい材料が複数存在しています。


 さらに、テクニカル分析的には中期的な調整局面入りの兆候が出始めていることもあり、国内衆議院選挙通過後や決算シーズンが一巡した後の展開を想定すれば、無理にポジションを傾け過ぎず、早めの手仕舞いを心がける方が良いのかもしれません。


(土信田 雅之)

編集部おすすめ