高速道路がビルを貫通している――そんな未来都市さながらの景観が大阪にあります。本来、道路は道路、施設は施設と空間が分離されるのが基本ですが、それらを一体的に整備した事例は、他にもあります。
街を開発する際、一般的に道路は道路、施設は施設で空間が分けられます。たとえ地下の道路であっても、地図で見て、道路空間をふさぐように建物が立っている例はほとんどありません。
しかし、これらを一体的に整備した例はいくつか存在し、なかにはその景観がある種の観光名所になっているケースまであります。今回はそのような都市ならではの光景を呈する道路を5つ紹介します。
ビルを道路が貫通:阪神高速11号池田線 梅田出口「道路が貫通しているビル」として有名なのが、阪神高速の梅田出口です。本線の池田方面から梅田の出口へ分岐すると、すぐにトンネルのようにビルが目の前に立ちはだかります。ここは、地上16階建てに相当するオフィスビル「TKPゲートタワービル」(大阪市福島区)の5~7階部分を通過するのです。
ビルを貫く阪神高速の梅田出口(佐藤 勝撮影)。
この梅田出口は1992(平成4)年に完成しています。ビルの新築計画と阪神高速の出口を作る計画が重なり、土地の売却をめぐって折り合いがつかなかったことから、当時、国の制度として立ち上がっていた「立体道路制度」を活用。これにより道路の上下空間に建築物をつくれるようになったことで、ビルに穴を設けて道路を通しました。
ビルから道路がにょきにょき…:阪神高速15号堺線 湊町PA/湊町出入口湊町PAは、複合施設「湊町リバープレイス」の2階部分に整備されており、ここへ接続するランプと、湊町出入口のランプ(15号上り→一般道、一般道→1号)がそれぞれ、建物の一部を通過します。
かつて、ここには一般道(千日前通)から1号環状線方面へ向かう入口のみが存在しましたが、立体道路制度を活用して2002(平成14)年に湊町リバープレイスが完成し出口が開通、入口も現在のようにリバープレイス経由に付け替えられました。
なお、下り線側の湊町出口ランプも、立体道路制度を活用して建設されたOCAT(大阪シティエアターミナル、JR難波駅)を貫いています。
名古屋には「道路ぐるぐる巻きビル」名古屋や東京にも、道路と施設が一体的に整備された場所が存在します。
ループ道路の中に「本社ビル」:名古屋高速1号楠線 黒川出入口名古屋高速で唯一、すべての方向に出入り可能なフルインターが、黒川出入口です。限られた敷地のなかで地上からの高低差を克服しつつ、高架の上下本線に各2本のランプをつなげるため、ループ線が2つ連なる構造を採用。うち、東側のループのなかに、地上6階建ての黒川ビル(東棟)が立っています。ここには名古屋高速道路公社の本社機能や、一般人も見学可能な広報資料センター(ネックスプラザ)があります。
この黒川ビル東棟は完全な円筒形ではなく、北側が上から切り取られたように半円筒形をしています。北側には街路を挟んで川が流れているためです。ループ線やランプの橋脚は黒川ビルの敷地のほか、この川の空間を利用して立てられています。
ビル1階エントランスの真上に橋桁:首都高5号池袋線 東池袋出入口首都高5号線の本線から分かれた東池袋出入口のランプは、サンシャインシティ西側の敷地内を貫いたのち左へ急カーブ、ワールドインポートマートビルと文化会館ビルのわずかな隙間を縫って高度を下げ、敷地東側の一般道路へ接続しています。
地上では、両ビルをつなぐ連絡通路が、建物へのエントランスになっていますが、その直上に首都高の橋桁がスロープ状に渡されているため、まるで道路が建物に突っ込んでいくかのように見えなくもありません。
出入口の開設は1978(昭和53)年で、前出した立体道路制度が設けられる以前ですが、旧巣鴨拘置所(巣鴨プリズン)跡地を再開発する際に、池袋サンシャインシティと道路が一体的に整備されたことで生まれたものです。なお、文化会館ビルの1階は高速バスも発着するバスターミナルになっており、発車してすぐ首都高に乗れるという利便性を実現しています。

池袋サンシャインシティ内を貫通する首都高 東池袋出入口のランプ(中島洋平撮影)。
道路の上にビルを建てた:虎ノ門ヒルズ
一般道で立体道路制度を活用した最近の例として挙げられるのが、2014(平成26)年に開業した東京の虎ノ門ヒルズです。道路が通っているのは、ビルの地下部分ですが、立体道路制度によって環状2号線のトンネル(築地虎ノ門トンネル)上の空間を開発しており、敷地内にはトンネルの換気塔も立っています。
虎ノ門ヒルズにはバスターミナルもあるほか、東京メトロ日比谷線の虎ノ門ヒルズ駅も隣接するなど、交通の拠点にもなっています。