かつて、国内外の多くの航空会社が乗り入れ「中日本の空の玄関」だったものの、中部国際空港が開港したことで、その座を譲った県営名古屋飛行場は、現在どのようになっているのでしょうか。実はカタチを大きく変えながら、人が行きかう空間になっています。
2021年現在、「中部地方の空の玄関」といえば、愛知県常滑市の沖合いにある中部国際空港です。ただ、この空港が開設される2005(平成17)年までは、県内にある別の空港がその役割を担っていました。これが、航空自衛隊小牧基地に隣接して広がる県営名古屋飛行場、通称「名古屋空港」です。
「名古屋空港」とも称される県営名古屋飛行場(乗りものニュース編集部撮影)。
かつて名古屋空港は、JAL(日本航空)やANA(全日空)はもちろんのこと、ノースウエスト航空(現デルタ航空)をはじめとする海外の航空会社も多数発着しており、年間利用者数は1000万人を超えることもあった、国内屈指の大空港でした。しかも、名古屋駅から直線距離で15kmほどの距離にあり、アクセスの良さもポイントでした。なお、2021年現在も名古屋駅からバスで20分から30分ほどで行くことができます。
ただ、反面で市街地にあることなどから、「今以上の拡張が困難であるため21世紀初頭には空港容量が限界に達すると予測される」「航空機騒音のために空港利用時間の制約があり、24時間離着陸可能な国際空港としての機能が十分発揮できない」(愛知県)といったデメリットもあり、そのため中部空港が新設され、そちらに「中部の玄関口」の座を譲っています。
ところが、名古屋空港はそれでまるっきり使われなくなったかというと、そのようなことはなく、2021年現在も、ふたつの意味で一般市民に「利用」されています。
まったく違う施設に生まれ変わった旧国際線ターミナル2021年現在、名古屋空港に乗り入れし、定期便を就航している航空会社が、静岡に本社を構えるFDA(フジドリームエアラインズ)です。
同社は100席以下のエンブラエル170型、175型を運航する地域航空会社ですが、名古屋空港へは2011(平成23)から就航し、2021年現在では、拠点空港としてここから9都市へネットワークを広げています。そのため年度別の利用者数は、90万人前後を維持しており、この人数は奄美空港(鹿児島県)や釧路空港(北海道)とおよそ同程度といえる規模です(東急エージェンシー、全国空港乗降客数一覧より)。
実際、2021年3月に訪れてみると、新型コロナウイルス感染拡大の影響があるにもかかわらず、旅客便の発着前には、人でにぎわう様子が見られました。
「名古屋空港」の国際線ターミナルを再利用した「エアポートウォーク名古屋」(乗りものニュース編集部撮影)。
なお、かつて名古屋空港にあった国際線ターミナルは、いまでは別の施設に流用されています。それが2008(平成10)年にショッピングモールとしてオープンした「エアポートウォーク名古屋」です。
再開発によって誕生した「エアポートウォーク名古屋」、空港ではない施設に大変身を遂げたものの、インフォメーションカウンターは空港の案内板を再利用するなど、元空港らしさを存分に残しているのも特徴といえるでしょう。
加えて2017(平成29)年には、「エアポートウォーク名古屋」に隣接する形で、かつての名古屋空港内に、県立の航空博物館「あいち航空ミュージアム」も開館し、国産ターボプロップ機YS-11などを間近で見ることができます。
このように名古屋空港は、中部地方の空の玄関口を譲ったあとも、エンターテイメント性の高い新たな「空港都市」として、いまだ健在といえるでしょう。