山手線などで停電が発生し、線路上へ乗客を降ろす対応などが行われました。できれば駅へ降ろしてほしいところですが、鉄道会社にとってもそのほうがよく、そうできるよういま、進化しています。

鉄道会社も本当は駅で降ろしたい…

 2021年6月20日(日)の17時半ごろ、渋谷区にあるJR東日本の変電所でトラブルが発生。停電のため、山手線、埼京線、湘南新宿ラインがおよそ4時間にわたって運転できない事態になりました。

 駅間を走行中に停電が発生して止まった列車から、乗客を線路上へ降ろして最寄り駅へ誘導する対応も行われています。

今回 山手線が青かったら…停電で線路へ下車 対策ないのか 実...の画像はこちら >>

山手線のE235系0番台(画像:写真AC)。

 ただこうした場合、できれば駅で降ろしてもらえると、乗客としては楽でしょう。

 実は鉄道会社にとってもそうで、線路上へ乗客を降ろすためには、まず線路を乗客が降ろせる安全な状態にすることが必要で、その後の運転再開にあたっても、線路が安全な状態か(線路に人が残っていないか)、しっかり確認せねばなりません。

 そのためトラブルが短時間で回復する場合、乗客を線路に降ろしてしまうと、それによって運転再開までより時間が必要になることもありえます。

 よって鉄道会社にとっても、できれば乗客を線路ではなく駅で降ろせたほうが、手間や時間がはぶけ、スムーズなのです。

 そこで鉄道会社はいま、「できれば駅で降ろして」の実現に向けて進化しています(山手線は残念ながら非対応でしたが)。

もし今回 山手線の電車が「青いやつ」だったら…?

「できれば駅で降ろして」のためどうするか、ひとつ目の方法は車両への走行用バッテリー搭載です。駅間走行中に停電しても、最寄り駅まで自走できるぐらいのバッテリーを搭載することで実現します。

 ここ数年で広がってきたもので、東京メトロでは銀座線の全編成と丸ノ内線の新しい車両(2000系)に、京王電鉄では2017年デビューの5000系電車にそうしたバッテリーを搭載。

2020年にデビューした東海道・山陽新幹線の最新車両「N700S」も、高速鉄道車両として初めて走行用バッテリーを搭載しています。

今回 山手線が青かったら…停電で線路へ下車 対策ないのか 実は進化中の電車停電対策

横須賀・総武快速線のE235系1000番台(2020年12月、恵 知仁撮影)。

 今回トラブルがあったJR東日本でも、走行用バッテリー搭載車が2020年12月にデビューしています。横須賀・総武快速線用のE235系電車1000番台です。

 この青いE235系電車1000番台は、2015年にデビューした山手線の現在車両(E235系0番台)の弟分ともいえる車両。もし兄貴分である黄緑色の山手線0番台にも走行用バッテリーがあったら、今回のトラブルは「停電しても電車が動いてる! すごい!」とSNSで話題になったかもしれませんが、登場時期の違いなどを考えると、言っても仕方がありませんね。

 さて、ふたつ目の方法ですが、こちらは走行用のバッテリーを車両ではなく、地上に設置します。変電所からの送電にトラブルが発生した場合、その地上バッテリーから架線に送電して列車を走らせる形で、東京メトロや小田急電鉄などで導入されています。

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