東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、全国から警察官やパトカーが集結し、会場周辺の警備に就いています。一見すると全国共通のように見えるパトカーも、各都道府県で個性がありました。

見比べると案外違うパトカーのご当地表記

 2021年7月下旬から始まった東京オリンピック。万一に備えてオリンピックスタジアム(国立競技場)を含む各地の会場周辺には、道路封鎖も含む厳重な警備態勢が敷かれています。

 警察庁の発表では、東京オリンピック・パラリンピックの警備に約6万人の警察官が従事しているとのこと。これは過去最大規模の警備態勢だといいます。東京には全国から応援の警察官が入っており、「大阪府警」を始めとして「○○県警察」と記されたパトカーが都内を走り回っています。

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警視庁のパトカー(柘植優介撮影)。

 日本のパトカーというと、基本的には白黒のツートンカラーをまとい、フロントグリルには金色に輝く警察章(旭日章)を配置、屋根の上には赤色灯を備えています。このスタイルは全国共通ですが、一方で意外と都道府県ごとにバラバラなのが、ボディ側面に記された警察名を含む文字デザインです。

 最近では多くなってきたものの、県警によっては「POLICE」の英語表記がない車体も存在します。また警視庁では当たり前のように入っている盾のような形をした金色の警察エンブレムも、それ以外の道府県警察では描いていないところの方が多いほど。

 加えてよく見てみると、「○○府警」や「○○県警察」といった所属表記の書体もバラバラ、記載位置も警察ごとに異なっています。

 そのようななか、都道府県警察のパトカー表記で唯一、“手書きの文字”を採用しているのが熊本県警察のパトカーです。

全国でも熊本だけ なぜ毛筆の手書き文字?

 パトカーのボディ側面に書き込まれる、「警視庁」や「北海道警察」「○○府警」「○○県警察」といった文字は、基本的にはゴシック体が用いられます。

 実際、中央官庁である警察庁が、各都道府県警察に通達した「警ら用無線自動車等への識別標識等の表示について」においても、字体、色および大きさの項で「警察名は、ゴシック体を用いて黒色で表示し、一字の大きさは、一辺が10センチメートルから15センチメートルを目安とする」と明記しています。

全国唯一「熊本県警察」の毛筆書体はご当地ルール? パトカーのデザイン 地域で結構違う

熊本県警のパトカー。全国の警察で唯一、手書きの文字を使っている(柘植優介撮影)。

 しかし、そのようななかで、熊本県警はあえてゴシック体ではなく毛筆体の手書き文字を使用しています。なぜ手書き文字を用いているのか、熊本県警察本部警務部警務課装備係補佐の森田卓巳警部によると、それはこの文字が熊本県警OBで元柔道主席師範である、西山 巌氏によって書かれたものだからだといいます。

 使い始めた時期は不明であるものの、すでに1975(昭和50)年頃からパトカーに用いていたとのこと。なお、昔はボディ右側面の表記については、右から左に『察警県本熊』と記されていたそうで、昭和40年代のパトカーなどで見られたそうです。

 この毛筆体での表記について熊本県警察本部も、公式Twitter(ツイッター)において「熊本県警のパトカーの『熊本県警』の文字は、全国で一番かっこよかばい! 普通はゴシック体などですが、熊本県は直筆の文字を使用しています」とコメントするほど。全国唯一という点に誇りを持っていることが感じられます。

 ちなみに、お隣の鹿児島県警もゴシック体ではない書体で警察名を記しています。使っているのは明朝体。

これまた、かなり珍しい書体といえるでしょう。