かつて中央線の駅が置かれ、地下鉄銀座線も一時終点としていた秋葉原近くの「万世橋」。その橋のたもとにある「謎の空間」に、千代田区の調査が入りました。

橋の上から一部が見えるものの、到達手段が一切ない空間、何なのでしょうか。

小部屋の用途は諸説あり

 東京・秋葉原を流れる神田川にはいくつもの橋が架けられていますが、そのうち国道17号(中山道)が通るのが万世橋です。戦前には中央線や地下鉄銀座線の万世橋駅があったことでも知られます。

 その万世橋の南東詰、公衆トイレがある下に、どこからもアクセス不可能な空間があります。橋から見下ろすと奥に上り階段が見えますが、地上に入口はなし。階段に隣接して小さな窓が連続する小部屋があることも伺えます。用途不明ということで、SNSなどでもしばしば話題になっていたこの空間に、地元である千代田区の調査が入りました。

 調べたのは千代田区の広報広聴課で、その様子を9月発行の広報誌に掲載しています。

 それによると、階段はやはり地上側の入口が塞がれています。階段に続く小部屋の入口はアーチ状で、モダンな印象を覚えます。部屋の壁にはタイルが張られているものの、がらんどう。水道の蛇口と思しき設備の形跡が残るのみです。

床には大きめのマンホールがあります。入口の横にはさらに小さな扉があり、中には古いポンプやパイプも確認されましたが、いずれも錆びだらけで、相当古いもののようです。

ネットで話題「万世橋の下に見える謎の小部屋」に区が潜入 外か...の画像はこちら >>

オレンジ色の○囲いが今回話題にしている空間(広報千代田2021年9月20日号より)。

 結論は、やはり千代田区も「不明」とのこと。この空間に関する資料が一切見つからないうえ、付近の住人などにも詳細を知る人がいなかったといいます。なお、管理しているのは国土交通省の東京国道事務所 万世橋出張所だそうです。

 ただ、区は「推定の域を出ない」としつつ、この空間はトイレや地下鉄関係の施設、船の荷揚げを行うスペースだったのでは、としています。万世橋の真下には、橋と同一方向に銀座線が通っています。かつて末広町~神田間を建設する際、この場所で工事が難航したため、2年ほど臨時に万世橋駅が設けられていました。

 荷揚げスペース説は、かつて秋葉原が水運と陸運をつなぐ結節点だったことに由来するでしょう。神田川沿いには掘割や船着き場が設けられていたので、ここにも舟が来ていた可能性はあります。ちなみに秋葉原駅自体が初めは貨物駅として開業しており、国鉄の線路と神田川を伝って物資が行き来していました。

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