JR北海道で最新の特急車両「ラベンダー編成」に乗車。既存形式をベースに「多目的特急車」として新造され、車内にも様々な工夫が凝らされています。

今回はこの車両で、日本最北駅の稚内へ向かう宗谷本線の車窓を堪能しました。

最新の特急車両はリゾート車両の代替 定期列車にも充当

 JR北海道の261系5000代は、既存の形式である261系の「多目的型特急車両」として新造されたJR北海道でも最新の在来線特急車。2022年5月14日(土)、このラベンダー編成による特急「サロベツ」稚内行きに乗車しました。

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特急「サロベツ」ラベンダー編成(須田浩司撮影)。

 2020年度にデビューした261系5000代は、リゾート車両「クリスタルエクスプレス」「ノースレインボーエクスプレス」の代替として計画されたものです。観光列車やイベント列車、修学旅行団体臨時列車として道内各地へ顔を出すだけでなく、定期列車の代替輸送や繁忙期の臨時列車などにも使われる想定で、日本最北の宗谷本線を走る特急「宗谷」「サロベツ」にも期間限定で充当されています。5両編成2本(10両)が新製され、それぞれ「はまなす」編成・「ラベンダー」編成の愛称がついています。

 このうち、「ラベンダー」編成は2021年5月に運行を開始しました。導入にあたっては国や自治体からの補助が活用され、同年10月1日付で北海道高速鉄道開発(JR北海道・道・自治体出資の第三セクター会社)がJR北海道から編成を取得・保有、JR北海道へ無償貸与するというかたちをとっており、取得に際して北海道高速鉄道開発は、国と北海道から計17億円の支援を受けています。

 ラベンダー編成は、普通車4両と、「ラベンダーラウンジ」と称するフリースペース車1両とで構成されています。フリースペース車は、通路を挟んでカウンター席10席と4人掛けボックス席(テーブル付)4か所16席を配置。内装を木目調で統一しており、流れゆく車窓を落ち着いた雰囲気でゆったりと過ごすことができます。

また、窓付近にはスマホ置き場にもなるコンセントを設けており、ビジネス利用も想定されています。

 一方の普通車は、261系1000代の車内を基本にしつつ、背ずりの2重構造化をはじめとする座り心地の改良やインアームテーブルの採用、コンセントの設置、客席内荷物置き場の設置など、車内サービスの向上が図られています。

いざ日本最北の「宗谷北線」へ

 この日は旭川から宗谷本線の観光急行列車「花たび そうや」を名寄まで乗り、駅前の三星食堂にて昼食をとるなどしたのち、ラベンダー編成の特急「サロベツ1号」で稚内へ。名寄から稚内までの通称「宗谷北線」は、みどころ盛りだくさんです。

 名寄から美深、音威子府にかけての地域は、かつて林業で栄え、沿線には材木工場が点在。駅そばが有名であった音威子府を過ぎると、列車は天塩川に沿って走行します。筬島(おさしま)駅を通過後、川の向こう側を見渡すと、『北海道命名之地』碑が見えました。幕末の探検家である松浦武四郎がこの付近で「北加伊道」と名付けたと『天塩日誌』に記されていることから、記念の木柱が建てられているのです。

 列車はさらに天塩川が形成した谷間を進みます。糠南駅を過ぎると、川沿いに架けられた陸橋「問平陸橋」があります。天塩川が春の雪解けで水位が上昇するため、線路の位置を高くするために架けられたもので、川を横断しない変わった陸橋として有名です。雪解けの季節など、天塩川の水位が上昇すると橋桁に水がつく恐れがあるため、桁下と水面との距離に応じて25km/hの減速や運転中止などの措置を講じているとか。

その際には、橋脚が洗堀されていないかどうか点検して、安全を確認してから列車の運転を再開するなど、保守上の苦労もあるそうです。

JR北海道の盛り上げ役!最新特急「ラベンダー編成」で日本最北の地へ 既存車両と全然違う!
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車内では沿線自治体による特産品の販売も。この日は豊富町(須田浩司撮影)。

 問平陸橋を過ぎ、宗谷本線唯一のトンネル「下平トンネル」を通過。その先の幌延駅付近では、日本海側を縦断していた旧羽幌線の跡も見ることができます。

 この先は風景が一変し、サイロや牧草地など、酪農地帯の雄大な景色が広がります。兜沼(かぶとぬま)に差し掛かる直前、突如として電話ボックスが現れます。中には保線用の鉄道電話が入っていますが、実はこの電話ボックス、NTTが公衆電話撤去の際に取り外したものを、JR北海道が譲り受けたものだそう。同様の電話ボックスは、抜海を通過してすぐの線路沿いにも設置されています。

いよいよ稚内へ… え、3時間も乗ってたの?

 日本最北の木造駅舎が残る抜海を過ぎると、左手に日本海が見えます。晴れていれば、その向こう側に利尻島(利尻富士)が見えるのですが、この日はあいにくの空模様でした。

 丘陵地を駆け抜けた列車は、かつての初代稚内駅であった南稚内に到着。

そして、街の高架橋を渡り、右手に港が見えると、日本最北の駅「稚内」に到着します。

 名寄から稚内までは3時間ほどかかりますが、時間の長さを感じさせない、素晴らしい車窓が展開されるのが、宗谷北線の最大の魅力といえましょう。

ANAや沿線自治体とのコラボ企画も 宗谷本線を旅するなら今がおすすめ

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稚内に到着した列車は、折り返し札幌行き特急「宗谷」として運行される(須田浩司撮影)。

 ラベンダー編成の「ラベンダーラウンジ」では、ANAとコラボしたステッカーやフライヤーを仕様した装飾が施されていました。宗谷本線の地域活性化に向けて、JR北海道はANAと連携した各地からの誘客、情報発信も行っています。

 ANAの商品で北海道へ来た人が利用できる「ANAきたフリーパス」などが継続販売されるほか、車内では自治体PRやANAふるさと納税の案内、特産品の販売などが行われます。参加自治体は運行日によって変わるため、どの自治体が参加するかは、JR北海道やANAの公式サイトなどで確認しておくとよいでしょう。

 春先から夏にかけての宗谷本線は、観光に最適の時期を迎えます。特急「宗谷」「サロベツ」へのラベンダー編成の充当は6月初旬まで、それ以降、6月中は「はまなす編成」での運行も決まっています。

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