航空自衛隊が保有するF-2およびF-15J戦闘機などと共同訓練を実施するために、インドからスホーイSu-30MKI戦闘機が飛来しました。スホーイ戦闘機が航空自衛隊の飛行場に着陸するのは初のケースだといいます。

Su-30戦闘機だけじゃなくIL-78空中給油機も

 茨城県の航空自衛隊百里基地に2023年1月10日(火)、インド空軍の戦闘機Su-30MKIが飛来しました。目的は16日から同基地で実施される「ヴィーア・ガーディアン23」と呼ばれる航空自衛隊とインド空軍による戦闘機共同訓練に参加するためです。

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茨城県の百里基地に到着したインド空軍のSu-30MKI戦闘機(布留川 司撮影)。

 インド空軍は今回の「ヴィーア・ガーディアン23」参加のため4機のSu-30MKI戦闘機(所属は西部航空コマンド第220飛行隊)と150名の人員を百里基地へ派遣。これを支援する2機のC-17「グローブマスターIII」輸送機(同西部航空コマンド第81飛行隊)と、1機のIL-78空中給油機(同中央航空コマンド第78飛行隊)も合わせて飛来しています。

 インド空軍の公式Twitter(ツイッター)の投稿によれば、派遣部隊は1月8日にインドを出発し、タイとフィリピンを経由して百里基地へ飛来したそうです。

 百里基地へはまず、支援機材と人員を搭載したC-17輸送機が先行して飛来し、午後に本隊である4機のSu-30MKIが百里基地に到着。滑走路からエプロンへとタキシングする途中で、消防車の放水による歓迎を受けたのち、インド空軍と航空自衛隊の関係者それぞれが参加した歓迎セレモニーが行われました。

 航空自衛隊側は、百里基地から第7航空団所属のF-2戦闘機4機が参加しますが、それだけではありません。石川県の小松基地からも航空戦術教導団(通称アグレッサー)所属のF-15戦闘機が4機参加するほか、警戒監視任務を担う中部航空警戒管制団もこれに加わるとのこと。

 これら航空自衛隊側の参加部隊の陣容を見ると、今回の「ヴィーア・ガーディアン23」は部隊交流以上の高度な訓練内容が用意されていると思われます。

 また、訓練とは直接関係はありませんが、百里基地所属のF-2戦闘機の1機が、今回の演習を記念した特別塗装機として準備。

機体の垂直尾翼にはラッピングによる図柄が入れられていました。

対地・対空の両方に秀でたマルチロールファイター

 Su-30MKIはロシア製戦闘機として有名なSu-27「フランカー」をベースにしたインド空軍専用のモデルです。ちなみに型式に付く「MKI」の末尾「I」はインドの頭文字になります。

 本機は前後に座席があるふたり乗り、いわゆるタンデム複座の機体で、対地攻撃と対空戦闘の両方の任務が可能なマルチロール(多用途)機です。生産数はロシアからの輸入と、自国でのライセンス生産を合わせて272機にもなり、インド空軍においては主力級の戦闘機といえる存在です。

ロシア製戦闘機「フランカー」日本初降臨 空自とインド空軍の共同訓練 かつての“仮想敵機”世界は変わった
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百里基地司令兼第7航空団司令の石村尚久空将補(右手前)とインド空軍展開部隊指揮官のロヒト・カピール大佐(布留川 司撮影)。

 ベースになったSu-27「フランカー」は、ロシア空軍の現在の主力機でもあり、1980年代の東西冷戦期の頃から、日本が有事となった場合には航空自衛隊が実戦で相まみえる可能性が一番高い戦闘機でした。

 今回、「フランカー」系列の機体が日本に来ること自体が初めてのことですが、それがインド空軍の機体であること、そして冷戦以降の安全保障環境の変化によって、そのインドが安全保障上のパートナー的な存在となり、航空自衛隊との共同訓練目的で来日したというのは、近年の国際情勢の変化を如実に表すものであるといえるでしょう。

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