2023年6月、台風で浸水した地域の住民を救うべく大型水陸両用車「レッドサラマンダー」が出動し話題になりました。しかし、総務省消防庁はこれ以外にも多数の水陸両用車を全国に配備しています。

大型水陸両用車「レッドサラマンダー」そのお値段は?

 2023年8月15日現在、台風7号が近畿地方を中心に日本列島を縦断しようとしています。2か月前の6月には日本近海に近づいた台風2号に伴う大雨で、四国や近畿、東海地方で線状降水帯が発生したことは記憶に新しいところです。

 このとき豪雨によって浸水や冠水が起きた愛知県岡崎市では、日本で唯一、同市消防本部に配備されていた連結式の水陸両用車「レッドサラマンダー」が出動し、孤立した市民の救助に力を発揮していました。

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岡崎市消防本部の大型水陸両用車「レッドサラマンダー」。写真はイベントでのもの(画像:岡崎市)。

「レッドサラマンダー」は全長8.2m、全幅2.2m、高さ2.6m、重量約12t。

最大積載量は4400kgで、車両の前部に4人、後部に6人が搭乗可能です。足回りにはゴム製クローラー(いわゆるキャタピラ)を採用し、最高速度は50km/h、登坂傾斜角度は約27度、最大60cmの段差や最大2mの溝を乗り越えられ、水深1.2mまでなら走破可能です。また水上浮航することもでき、その際はクローラー部分が水かきの役割を果たします。製造元はシンガポールの軍需関連企業であるSTキネティクス、国内販売代理店は消防車両最大手のモリタ(兵庫県三田市)です。

 同車が岡崎市に配置されている理由。それは同市が日本のほぼ中央に位置するからです。

高速道路のインターチェンジに近く、東・西日本両方に出動しやすいという観点から岡崎市消防本部に2013年3月、消防庁が約1億円を投じ配備しました。

 ただ、消防が装備する水陸両用車はこれだけではありません。実は大雨に伴う水害が激甚化していることを鑑み、総務省消防庁では様々なタイプの水陸両用車を全国の消防本部に配備中です。

「レッドサラマンダー」と似て非なるものとは?

 総務省消防庁が導入を進めている水陸両用車は「大型」「中型」「小型」の3種類あり、前出の「レッドサラマンダー」は「大型」にあたります。そして同車とともに消防が運用するもう1つの大型水陸両用車、それが「レッドヒッポ」になります

「レッドヒッポ」は、2022年4月より大阪市消防局で運用が始まった水陸両用車です。岡崎市の「レッドサラマンダー」と同じく、前部ユニットと後部ユニットを連結した屈折式と呼ばれる構造で、足回りもゴム製クローラーとよく似ていますが、車体は全長7.87m、全幅1.98m、高さ2.54m、重量約7.03tと一回り小型です。

一方で、乗車定員は14名(前部ユニットに4人、後部ユニットに10人)と「レッドサラマンダー」よりも多くなっています。

 最高速度は65km/h、登坂傾斜角度は31度、最大1mの溝を乗り越えられるほか、水に浮くことで最大3.5km/hで航行可能です。

「レッドサラマンダー」ちゃうで! 消防の“水陸両用車”実はかなり増えていた 実際“使える”のか?
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奈良市消防局の中型水陸両用車。徳島県千葉県、愛知県、熊本県宮城県にも同様のものが配備されている(画像:陸上自衛隊)。

 一方、中型水陸両用車といわれるのが、2019年から全国に配備が始まっている全地形対応車です。ベースはアメリカ・ハイドラトレック社製の車両で、足回りはゴムクローラー式であるものの、「レッドサラマンダー」や「レッドヒッポ」のように連結式の屈折仕様ではなく、単車構造のため小回りが利き、運転もしやすいのが特徴です。

トーハツ(東京都板橋区)が輸入し、消防向けとして追加の艤装を行っています。

 車体サイズは全長4.93m、全幅2.36m、高さ2.94m。アルミボディのため重量は約3.6tと軽いです。陸上では最大20km/h、水上では車体後部のプロペラ(スクリュー)を回すことで最大5.6km/hで航行できます。乗車定員は陸上8名、水上6名と前出の2車よりも少ないものの、車体が軽量コンパクトなため、専用の搬送車も2軸4輪の小型のもので対応可能であり、その点でも「レッドサラマンダー」「レッドヒッポ」より運用しやすくなっています。

 配備先も多く、すでに徳島県(板野東部消防組合)や千葉県(山武郡市広域行政組合消防本部)、奈良県(奈良市消防局)、愛知県(豊橋市消防本部)、熊本県(宇城広域連合消防本部)、宮城県(大崎地域広域行政事務組合消防本部)などに引き渡されています。

47都道府県すべてに配備されている水陸両用車って?

 これら「大型」および「中型」の水陸両用車が、限られた消防組織への配置なのに対し、47都道府県すべてに配備が進められているのが「小型水陸両用車」です。ベースはカナダ製の8輪バギー「アーゴ(ARGO)」。これに消防車両として必要な艤装を施しています。

 車体サイズは全長3.02m、全幅1.525m、高さ1.17m。重量は約600kgで、定員は陸上6名、水上4名です。陸上であれば32km/h、水上なら最大4km/hで移動できます。

 この小型水陸両用車は警視庁を始めとした警察も独自に導入しているほか、地方自治体や民間企業も万一の時に備えて調達しているケースが見受けられます。

 なお、大阪市消防局には大型水陸両用車である「レッドヒッポ」とは別に、この小型水陸両用車も配備されています。

「レッドサラマンダー」ちゃうで! 消防の“水陸両用車”実はかなり増えていた 実際“使える”のか?
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大阪市消防局の小型水陸両用車。同様の車両は警察も導入している(画像:大阪市)。

 これらが出動するケースは極めてまれです。最初に導入された「レッドサラマンダー」は2013年3月の導入以来、出動してもなかなか実績をあげることがなかったため、必要性に疑問符が付くこともありました。

 確かに消防車は金額だけで捉えると、高く感じてしまうかもしれません。しかし、万一の際にひとりでも救うことができたら、整備にかかったコストは賄えるとも言われています。それだけ人命は尊いということ。出動しないに越したことはありませんが、いざというときのために備えるという点では「はしご車」や「大型化学車」も同様です。

「助けられる命は必ず助ける」全国の消防組織はそのために、装備をそろえ常に訓練をしているといえるでしょう。

※誤字を修正しました(8月15日12時50分)