北陸新幹線の金沢延伸開業によって、大ダメージを受ける新潟県のローカル鉄道、北越急行。しかしその「隙」を狙い放たれた北陸新幹線への刺客「超快速」が、一矢を報いました。
2015年3月の北陸新幹線金沢延伸開業に伴い、非常に大きなダメージを受ける鉄道会社があります。新潟県の第三セクター鉄道、北越急行です。
同線には現在、越後湯沢駅(新潟県)で接続する上越新幹線と連携して、首都圏と北陸地方を結ぶ在来線特急「はくたか」が走っており、北越急行の営業収益のうち実に約9割を稼いでいます。しかしその在来線特急「はくたか」が、北陸新幹線の金沢延伸で廃止されてしまうのです(「はくたか」の列車愛称は北陸新幹線へ引き継がれる)。
「巨人」北陸新幹線によって、存亡の危機に立たされる小さな地方ローカル線、北越急行。しかし北越急行はその収益源を奪った「巨人」に対し、ただ黙ってはいませんでした。2014年11月、新たに「超快速」を走らせると発表したのです。そのとき具体的なダイヤは発表されませんでしたが、状況によって「超快速」は、北陸新幹線といい勝負ができることが予想されました。
そして2014年12月19日、ついにその「超快速」と、ライバルである北陸新幹線のダイヤが発表されました。「超快速」VS「北陸新幹線」、はたしてその結果はどうなったのでしょうか。
「鷹」に立ち向かう「雪うさぎ」戦いの区間は東京駅と、新潟県第3位の人口を持つ上越市の港町、直江津駅とのあいだです。この区間を北陸新幹線で移動する場合、次のようになります。
東京駅 7時52分発
↓ 北陸新幹線「はくたか」553号
上越妙高駅 9時44分着/10時07分発
↓ えちごトキめき鉄道 普通列車
直江津駅 10時22分着
これに対し、北越急行の「超快速」に乗った場合は次のようになります。
東京駅 7時48分発
↓ 上越新幹線「Maxとき」305号
越後湯沢駅 9時08分着/9時17分発
↓ 北越急行 超快速「スノーラビット」
直江津駅 10時14分着
北越急行の超快速「スノーラビット」が見事、北陸新幹線「はくたか」へ一矢報いることに成功しました。運賃・料金についても北陸新幹線経由が9520円なのに対し、北越急行経由は8050円と約1500円安いのもポイントです(普通車指定席、通常期の場合)。
また北越急行の「超快速」は、1日1往復が運転されます。先ほどとは逆に直江津駅から東京駅へ向かう場合について、まず北陸新幹線経由は以下のようになります。
直江津駅 17時07分発
↓ えちごトキめき鉄道 普通列車
上越妙高駅 17時23分着/17時48分発
↓ 北陸新幹線「はくたか」572号
東京駅 20時00分着
これに対し、北越急行の「超快速」に乗った場合は次のようになります。
直江津駅 17時55分発
↓ 北越急行 超快速「スノーラビット」
越後湯沢駅 18時53分着/19時00分発
↓ 上越新幹線「Maxとき」342号
東京駅 20時12分着
やはり北越急行の超快速「スノーラビット」が有利です。東京と新潟県上越市周辺を移動する人にとって、直江津駅が便利な人もいれば、上越妙高駅のほうが便利な場合もあるため、上越市へ行くなら必ずしも北越急行が速いとは言えません。しかし、少なくともこのように地方ローカル線経由の方が速くて安くて便利な場合もあること、地方ローカル線がその収益源を奪った「巨人」北陸新幹線に一矢報いたことは事実です。
「超快速」が日本一速くなる可能性も2015年3月14日から運転され、北陸新幹線と勝負する北越急行の「超快速」には、「スノーラビット」という愛称名が付けられました。北陸新幹線金沢開業と共に廃止される在来線特急「はくたか」用車両のうち、北越急行所有の車両へ命名されているのと同じものです。北越急行は「はくたか号の思いを引き継ぐ名前となりました」としています。
また超快速「スノーラビット」は最高速度110km/hとそれほど速くはありませんが、越後湯沢~直江津間の84.2kmを最短57分で連絡。途中停車駅は十日町駅のみで、表定速度(駅への停車時間を含めた平均速度)は88.6km/hにもなります。
この88.6km/hという数字は、列車の「始発駅~終着駅間の表定速度」で考えた場合、関西エリア(最高速度130km/h)や中京エリア(最高速度120km/h)の「新快速」より高いものです。2015年3月のダイヤ改正について詳細が発表されるまで断言はできないものの、北越急行の超快速「スノーラビット」が特急などの別料金を必要としない列車で「日本一表定速度が高い列車」になる可能性があります。
ちなみに北越急行によると、六日町~犀潟間の北越急行線内に限れば、超快速「スノーラビット」の表定速度は99km/h。さらに高い数字になっているとのことです(越後湯沢~六日町、犀潟~直江津間はJR東日本線を走行)。
※初出時に、ダイヤ改正の行われる年月を「2014年3月」と記述しておりましたが、正しくは「2015年3月」でした。修正してお詫び申し上げます。