「バリ鉄」と呼ばれる鉄道ファンが、電車の備品を盗んで逮捕される事件がありました。この「バリ鉄」という単語について、各メディアでは「熱心な鉄道ファン」などと説明されていますが、本来は別の意味合いが強いものでした。

「乗り鉄」や「撮り鉄」とは別

 2015年3月24日(火)、「バリ鉄」と呼ばれる少年が電車の備品を盗み、逮捕されたと各メディアが報じました。そのなかで「バリ鉄」という単語について、「特に知識が豊富な」「熱心な」鉄道ファンを意味する言葉として説明されていることが多いようです。

 しかし鉄道ファンの世界において「バリ鉄」という単語は、それ以外にも意味や背景、使い方があります。

 まず鉄道ファンには、列車に乗るのが好きな「乗り鉄」や撮影が好きな「撮り鉄」、模型が好きな「模型鉄」、発車メロディなどが好きな「音鉄」、コレクションが好きな「収集鉄」など、様々なジャンルとその呼び方があります。しかし「バリ鉄」というのは、それらとはタイプの違う言葉です。

 「バリ鉄」の「バリ」は「バリバリ」が語源で、「勢いが盛んで活動的な・こと(さま)。また、そのような人」(大辞林 第三版)という意味の通り、様々なジャンルの鉄道ファン活動に対し特に熱心な人を指します。

 ただそれは、「広義では」と付け加えることができるかもしれません。

「撮り鉄」と縁が深い「バリ」

 この「バリ鉄」、自然発生的な単語であるため明確にはいえませんが、基本的に「撮り鉄」の世界で使われることが多かった言葉です。たとえば、珍しい列車が走るという情報を得るとそれを極力最優先にし、時間の許す限りアクティブに西へ東へ撮影に赴く、という人を「バリ鉄」と呼んだりします。

 また写真用語で、被写体に正面からまんべんなく光が当たっている状態を「順光」といいますが、「撮り鉄」の世界には「バリ順」という用語もあります。カメラのある方向から車両の正面、側面に対し綺麗に光が当たっている状態を指すもので、いわば「バリバリ順光」の省略形です。

 「編成写真」という、車両編成の先頭から最後尾まで綺麗に入った写真について「バリ鉄写真」と呼ぶこともあります。編成写真は「なによりまず被写体を綺麗に写す」といった理由で「鉄道写真の基本」ともされ、「王道的・典型的な鉄道写真である」といった意味などから「バリバリな鉄道写真」、そして「バリ鉄写真」という言葉が生まれた、というのが考えられるところです。

 「バリ~」という表現。特に「撮り鉄」の世界で縁の深いもので、狭義における「バリ鉄」は「熱心な撮り鉄」を意味します。

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