クルマの運転について、女性は男性の約3倍の割合で「合流」が苦手というアンケート結果が出ました。しばしば運転技術に違いがあるとされる男性と女性。
クルマの運転技術について「男女で違いがあるのでは」とする見方があります。
2015年5月8日(金)、コインパーキング「タイムズ」などの事業を行っているパーク24は、クルマの運転技術に関するアンケート結果を公表。「苦手な運転技能は何ですか?」という設問について、「バック」という回答が最も多く見られました。
しかしこの「苦手な運転技能」を男女別に見た場合、大きな差が出ています。「車線変更」を苦手とした女性は男性の3倍、「合流」を苦手とした女性は男性の3.2倍も割合が大きかったのです。このアンケートのほかにも、例えば日産自動車や(財)交通事故総合分析センターの調査研究などで「事故のシチュエーションに性別で異なる傾向がみられる」という報告が出されています。
はたして運転技術において、男女の差というものが本当にあるのでしょうか。
その謎を探るべく、まずは自動車教習所にお話を伺いました。取材に応じていただいたのは、フジドライビングスクール(東京都世田谷区)の田中さんです。氏によれば「(男女で運転技術に)差があるとは言い切れませんが、女性に『空間認識』が苦手な人が多いのは事実」といいます。
「空間認識」能力とは、例えば「地図を見て目的地を把握する」というのがそれです。これが苦手な人は「○丁目の交差点を右折」「その次を左」といった具合に地図を“読む”ため、途中でひとつでも曲がる場所を間違えると目的地がわからなくなってしまう……という話を、耳にしたことはないでしょうか。地図の全体像を言語的に順を追って把握していくため、瞬時に全体をとらえられない、ということのようです。
この「空間認識」能力は、車両感覚や視覚情報による速度の把握など、クルマの運転において様々な場面で要求されるものです。フジドライビングスクールの田中さんはこれを「車の運転が得意、不得意の差が出る要因のひとつ」としたうえで、「女性が合流を苦手というのは、車両感覚や速度、ほかの車両との位置関係などを瞬時に把握せねばならず、『空間認識』能力が必要とされる究極の場面だからではないでしょうか」との見解を示しました。
一方、元プロレーシングドライバーで「injured ZERO(死亡・負傷事故ゼロ)」を目標としたドライビングスクールを開いている太田哲也さんは、男女の運転技術の違いについて「『ある』と言えばある、『ない』と言えばない」と、そして「女性は運転に関心のある人が少ないのが違い」といいます。
「関心があるかないかが、運転が上達するポイント。漫然と運転せずイメージを考えて走って、上手く曲がれたとかダメだったとか考えると上達しますね」(太田哲也さん)
前述の田中さんも、空間認識が苦手な人に対しては「ミラー見て、次は右見て、と、ひとつひとつ順を追って指導します。人によっては煩わしく感じられるかもしれませんが、結果的にはこの方が早く上達します」と話します。
つまり空間認識が苦手でも車の運転は上達可能で、そして煩わしく感じつつも指導を受けて上達する人は、それだけ車の運転に対する関心や積極性があるということ。「運転技術における男女間の差」は、このあたりに要因があるのかもしれません。
上手く合流するコツは「積極性」では、どのようにすれば上手く「合流」できるのでしょうか。
それが上手くできない理由について、太田さんは「『合流』とひと口に言っても色々なパターンがありますが、主に高速道路ですよね。そもそも合流のスピードが遅いから、上手く入れないんです」と話します。そして上手く合流するコツについて、本線を走るクルマと同等以上のスピードで走ること、慎重になりすぎソロソロすることなく積極的に合流する意思表示をし、入れてもらうことが大事だといいます。
「1台1台入るのがマナーなので遠慮しないで加速してください。むしろ、自分のスピードが遅いと後ろのクルマにブレーキを踏ませてしまうので、マナーとしてもよくないですね」(太田哲也さん)
合流においては慎重になりすぎると、時として事故にもつながるということでしょう。積極的かつマナーを守った運転、そして合流させる側もマナーを意識する、このあたりがスムーズな「合流」のコツのようです。