定期券などを販売する駅の窓口で、しばしば発生する行列。そこに並んでいる無為ともいえる時間を活用するシステムが東急大井町駅に登場しました。
定期券などを発売する駅の窓口では、しばしば長い行列が発生します。そうした行列に並ぶ無為ともいえる時間を2016年4月27日(水)、東急大井町線の大井町駅(東京都品川区)では“活用”できるようになりました。
その日に開業した、東急大井町駅直結の商業施設「エトモ大井町」では定期券売り場と旅行代理店(東急トラベルサロン)、カフェ(スターバックスコーヒー)、書店(ブックファースト)が一体化した空間に設けられ、定期券売り場と旅行代理店には「整理券発券機」が導入されました。つまり定期券を購入する際に整理券を取ったのち、呼ばれるまでコーヒーを飲んだり本を読んだりすることが可能。並ぶ時間を“活用”できるのです。
また商業施設側にとっても、“行列を活用している”といえそうです。
「『待ち時間があるから寄ろう』という定期券を購入されるお客さまがいらっしゃれば、来店機会が増えることになります」(東急電鉄)
定期券売り場付近にはその週のベストセラーが「見本」として自由に読める形で展示されているほか、店舗部以外にイスが設置された共用部があり、そこでテイクアウトしたコーヒーを飲みながらベストセラーを読みつつ、呼ばれるのを待つ、ということが可能です。
変化の時期を迎えている鉄道の定期券販売「エトモ大井町」のように、定期券売り場と商業施設を一体化し相乗効果を生み出す構造は東急電鉄で初とのこと。ただ、当初から「行列の活用」ありきだったわけではないそうです。
「お客さまのライフスタイルに合わせて、このような展開が可能なのが鉄道会社の強みだと考えています」(東急電鉄)
同社は各駅に商業施設「エトモ」を展開するにあたり、その駅の特性を考慮。JR京浜東北線やりんかい線と接続し、通勤・通学客の多いターミナル駅の大井町ではこのような形になったといいます。
ただ近年、鉄道会社では定期券購入にあたりインターネットから事前予約し、券売機でかんたんに買えるサービスが広まりつつあり、東急電鉄も2016年3月22日から導入。4月10日までで約1万件の利用がありました。
そうしたなか、「エトモ大井町」のような定期券売り場の展開は時代に逆行するように思えるかもしれませんが、東急電鉄によるとネット予約だけではニーズをカバーできないとのこと。また、複数の方法を用意することで購入者が分散する、すなわち混雑緩和・サービス向上が可能で、導入されたばかりながらネット予約の効果として、利用者の分散傾向、混在緩和がすでに確認できているそうです。
東急電鉄は今後も駅の改良や高架下開発などにより「いい街」と「いい電車」を創造、「日本一お客さまに選ばれる沿線」を目指すとしています。