池袋付近で、地下が道路トンネル、地上が「側道と都電」セット、その下を走る地下鉄も含めると3層構造となる道路の建設が進んでいます。明治通りのバイパスであり、池袋駅前「大改造」のカギを握る路線です。
渋谷、新宿、池袋という山手線の3大ターミナルの東口駅前を貫通する「明治通り」は、港区南麻布二丁目から江東区夢の島に至る環状道路です。その西半分は、東京都の都市計画道路「環状5号線」に相当しますが、戦後長らく、新宿と池袋の付近に“未開通部”があり、その部分は別の道路が明治通りに指定されています。
環状第5の1号線の本線を地下に通すため、軌道が仮受けされている都電荒川線。目白通りと交差する千登世橋付近。完成後の環状第5の1号線の地上部は目白通りとT字路で平面交差する(植村祐介撮影)
うち、新宿の未開通部「環状第5の1号線(千駄ヶ谷)」は2022年に上下二層構造のバイパスが開通し、付近の交通混雑緩和に大きく貢献しました。そしていま池袋でも、同様に池袋駅前をバイパスする「環状第5の1号線(雑司ヶ谷)」約1.4kmの工事が、東京都により行われています。
現在、この区間の明治通りは、「千登世橋下」交差点で「目白通り」と立体交差したあと、ゆるい上り坂を進み、「南池袋一丁目」交差点から「池袋駅東口北」交差点を抜け「池袋六ツ又陸橋」下の交差点まで、池袋駅前に広がる繁華街を通り抜けます。このエリアは路上駐車も多く、また場所によって駐車場の入庫待ちの列が明治通り上に伸びることもあり、外回り、内回りとも渋滞が慢性化しています。
一方、建設中の環状第5の1号線は、千登世橋下交差点の手前、都電「学習院下」電停付近で明治通り現道から片側1車線で分岐して地下に入ります。
そしてすでに開通済みの「東京メトロ副都心線」と、地上を走る「都電荒川線」との間を北に向けて進み、「グリーン大通り」(池袋駅東口正面から延びる大通り)の「東池袋」交差点で、再び地上に出ます。ここまでが未開通部です。
その先は「首都高5号池袋線」の高架下を走り、池袋六ツ又陸橋の側道から明治通り現道に復帰します。
このルートができることで、池袋駅前を通過する交通が繁華街から切り離され、交通混雑の緩和が期待できます。さらに地元の豊島区は、通過交通を排除することで生まれるスペースを活かし、池袋駅前の再開発による活性化を目指しています。
事業は2011年度の着手から、すでに15年近くが経過しています。現在、進捗はどうなっているのでしょうか。現場を歩いてみました。
トンネルの“出口”は完成済み! 「入口はどこ…?」まず学習院下電停から千登世橋付近までの「1工区」です。ここは明治通りを拡幅し、中央線側に外回りと内回り、合計2車線のトンネルの出入口を構築することになっています。

グリーン大通り側から見た環状第5の1号線。当初は、地上4車線で整備される予定だった(植村祐介撮影)
そのスペースを確保するため、明治通り現道の外回りは今後、やや西側にオフセットされます。現在は歩道のみが西側に移設され、車道が通るべき場所は用地こそ確保されているものの、本格的な移設はこれからという段階です。
千登世橋の北側では、大きく掘り込まれた地盤の中央で、鉄骨に仮受けされた都電の線路が走るさまを、地上から目視できます。
つぎに千登世橋付近から「東通り」との交差点付近(都電雑司ヶ谷電停付近)までの「2工区」です。この工区では、地上を走る荒川線を仮線に移設もしくはいったん仮受けして、その下に道路を通すという複雑な工程での工事が進められました。
この道路の中央部分は工事のフェンスで囲まれ、工事現場そのものは見通せません。ただボックスカルバートによるトンネルの躯体構築はすでに終了しているとのことで、今後は都電荒川線の本線への復帰および道路の整備が進められるものと思われます。ちなみにここまでの区間は、地上が都電と環状第5の1号線の側道、その地下に環状第5の1号線の本線、さらにその下に東京メトロ副都心線のトンネルという3層構造となります。
地上部については「鬼子母神前」電停から「都電雑司ヶ谷」電停まで、多くの区間で供用がはじまっていますが、両端が主要道路と接続していないため、交通量はきわめて少なく、地域内に配達する宅配便のトラックが目立つ状況です。
東通りとの交差点からは、都電は右(東)にわかれ、「補助第81号線」の整備予定地を通過して「東池袋四丁目」電停方面へと走ります。対して環状第5の1号線は左に進み、豊島区役所前を通過すると、グリーン大通りとの交差点です。
前述の通りトンネル躯体の工事はすでに終了し、工事のフェンスの隙間から開口部を目にすることができます。そして周辺では、開通後を見すえ、高層ビルの建築が進んでいました。
このように全体的には順調に工事の進む環状第5の1号線ですが、事業の認可期間は2028年3月までとなっているものの、完工までにはまだ時間がかかりそうです。
池袋駅前「大改造」のための基盤となる道路なお冒頭で触れたように、豊島区はこの環状第5の1号線の整備を踏まえ、池袋駅前を大規模に再開発する予定です。
その計画には、現在明治通りで南北に通り抜け可能な池袋駅前をクルドサック化(袋小路化)し通り抜け不可とすること、またグリーン大通りを広場化して歩行者優先の空間を作ることなどが盛り込まれています。
こうして池袋駅前から排除された通過交通は環状第5の1号線、および都電雑司ヶ谷電停付近で分岐し、都電沿いに春日通りまで通り抜ける補助第81号線が担うことになります。現在の片側2車線の明治通りの交通量を、この両路線でまかなうことができるのかどうか、不安が残るところです。
また現在の道路構造では、環状第5の1号線から明治通りに流れる交通は、“事故件数全国ワースト1”という不名誉な称号を与えられたこともある池袋六ツ又陸橋下の交差点で右折することになり、事故の増加も懸念されます。将来的には、この極めて複雑な交差点の構造の見直しも必須となりそうです。