アンダーパス構造で東京都心部を貫く南北道路が「昭和通り」です。60年以上前に誕生した“立体道路”は、いまなお時間によっては快走路となりますが、そのぶん、初心者にとっての分かりにくさは都内でも屈指です。

何がどう「難しい」のでしょうか。

60年前にできた“下にも上にも”立体道路

 東京都心部には、初心者にとって走るのが難しい道路がいくつかあります。交差点が複雑、そもそも首都高に沿っていて地図上で分かりにくい、実は地上区間だけでなくアンダーパスも並行している……それらが全て当てはまり、「ほとんど初見殺し」という通りが「昭和通り」ではないでしょうか。

都心貫通のスイスイ道、だが“初見殺し”すぎる!? 60年前の...の画像はこちら >>

昭和通り北行き、宝町の地下道(乗りものニュース編集部撮影)

 昭和通りは、第一京浜(国道15号)・銀座の中央通り・外堀通りが交差する「新橋」交差点)から築地、銀座、日本橋、秋葉原、上野など繁華街を通り、明治通りと交わる「大関横丁」交差点までをつなぐ南北の道路です。中央区の「本町三丁目」交差点以北は国道4号に指定されており、都心を貫通して郊外へ向かううえでも大動脈となっています。

 この通りは関東大震災の復興道路として1930年に開通した当時は、広い地上道路でした。それが戦後の昭和30年代、江戸橋以南の地下に都営浅草線(地下2階レベル)が開通、さらに主要交差点をスルーする地下道(アンダーパス、地下1階レベル)が設置されました。また都心の駐車需要を満たすため、アンダーパス部分に出入口を設け、日本橋、宝町、新京橋、東銀座と4か所の地下公共駐車場が完成します。

 さらに昭和40年代には、江戸橋以北の道路直上に首都高1号上野線の高架が完成し、その姿を変容させました。

 このように銀座エリアは地下道で、それ以北は首都高でと、速達性を担保する構造が今から60年近く前に完成したのは先進的と言えるでしょう。しかしそれゆえに、「見通しの悪い道路構造」と「方向により異なる道路構造」という“わかりにくさ”が生まれました。以下に詳しく見ていきましょう。

「初見殺し」がぎっしり詰まった道!?

 まず、新橋から日本橋エリアにかけての地下道区間、それ以北の高架下区間とも、似たような景色が延々と続き、走り慣れない人は「どこを走っているのかわからない」状態に陥りがちです。

都心貫通のスイスイ道、だが“初見殺し”すぎる!? 60年前の立体一般道「昭和通り」のワナ構造たち 使いこなせば超便利!
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江戸橋の南で右車線がいきなり右折レーンとなるため、車線移動を強いられる(乗りものニュース編集部撮影)

 地下道区間では、地上レベルに上がり、側道に流出して交差する道路への右左折ができるような設計となっていますが、側道との合流部はわずかな距離で、かつ側道から本線に流入するクルマと交錯します。

 そもそも、案内の青看板は複数枚が同じ場所に掲出されるため、走りながら見て理解するには、その情報量が多すぎる印象です。カーナビの助けがなければ、適切な場所で地下道から流出することは困難でしょう。

 地下道区間では左からの合流が、高架下区間では宅配便のトラックなども含めた路上駐車が多いことから、昭和通りを通過したい場合は最も右の車線を進むと基本的にはスムーズです。ただそれにも注意すべきポイントがあります。

 たとえば北行きの場合、「江戸橋北」交差点と「上野駅」交差点は、最も右側の車線が右折レーンになるため、事前に左へ移動しなければなりません。しかし、どちらも見通しが悪いうえ、案内の情報量が多すぎるためか、あわてて車線変更するクルマで詰まりがちです。

「右折レーンどこ!?」「え、右折禁止!?」

 また、高架下区間特有の構造が、「わかりにくい右折レーン」です。

 この区間の右折レーンの多くは、高架下の橋脚の間を潜り込むように設けられています。いくつかの交差点ではその入口がわかりやすいとは言えません。そのため初見では右折レーンの入口を通り過ぎて交差点まで来てしまう人もいるほか、そもそも方向によっては右折レーンがなく“右折禁止”になっているところもあります。

 たとえば「上野駅」交差点の北側の「東上野」交差点は、高架下部分が南行きの右折レーンと直進レーンとなり、北行きからは右折できない形状となっています。

 このように北行きと南行きで道路のつくりが異なる「方向により異なる道路構造」のため、どちらから往復しても「行きと帰りで違う道を走る」ような感覚となり、注意して走らないとアンダーパスに入れない、右折レーンを見過ごすなど、余計な時間を費やしてしまいます。

空いていれば都内屈指のスイスイ道なんだけど…

 付け加えるなら、細かい部分での”初見殺し”も見逃せません。

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南行きの高架下区間、秋葉原付近。歩行者も極めて多い(乗りものニュース編集部撮影)

 北行きは、第一京浜の品川方面から昭和通りへの入口となる「新橋駅前」交差点先のアンダーパスへ入ると、銀座七丁目でいったん地上に出るものの、そこに側道への流出路はなく、側道に流出できるのははるか先、新京橋の手前となってしまいます。この新橋駅前からのアンダーパスは北行きのみにある「方向により異なる道路構造」のひとつです。

 南行きでは、昭和通りの最終区間「銀座東七丁目」交差点が要注意です。アンダーパスを抜けてすぐのこの交差点では、「外堀通り方面2車線」「第一京浜方面2車線」「海岸通り方面1車線」となり、側道からのクルマも含め、流れが複雑になります。もし昭和通りから首都高1号羽田線の高架に沿う海岸通り方面を目指すなら、わずかな距離で2車線分を横切っていちばん左の車線まで寄る必要があるのです。

 ただ、このようにわかりにくさもある昭和通りですが、空いているときの流れは都内の一般道でも屈指です。とくに新橋から江戸橋南までの地下道区間が空いていれば、新橋から秋葉原まで10分かからずに移動することも可能です。

 また、2022年12月には、築地と虎ノ門を結ぶ「新虎通り」(環状2号線)の築地虎ノ門トンネルが全線開通し、昭和通りとの連続利用がしやすくなりました。

たとえば六本木から秋葉原方面を目指す場合、皇居の外周などを経由するより、「新虎通り~昭和通り」で地下道を連続して通った方が早いケースもあります。

「手強いけれど、使いこなすととても便利な通り」が、昭和通りの本質と言えるのではないでしょうか。

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