ケチってはいけない部分では…?「非常電話」停止の是非

 高速道路の路肩に設置されている「非常電話」が少しずつ姿を消しています。NEXCO東日本北海道支社が2025年10月から、トンネル以外の一部区間で試行的に運用を停止します。

【え…】けっこう多い「非常電話」運用停止路線(地図)

 すでに東北地方の一部路線では今年初めから、一部区間で運用が停止されており、このまま廃止になる可能性も考えられます。NEXCO東日本北海道支社で、幹部らにその事業を聞くと、意外な側面も明らかになりました。

 非常電話は高速道路の路肩に約1kmおき、トンネル内では200mおきに設置している緊急通報用装置です。受話器を取るだけで道路管制センターにつながり、会話の不自由な人のために「故障」「事故」「救急」「火災」の状況を表示したボタンが設置されているものもあります。

 この一部運用停止の理由は、「老朽化および利用実態が携帯電話に移行していること」とされますが、ネット上では「ケチっちゃいけない部分では?」「車両火災で慌てて非難する場面などでケータイ持ってなかったらどうするの?」などといった意見が見られました。

 ただ実際には、北海道支社の交通管制センターの幹部に聞くと、「非常電話からの通報はほぼない」「あるとしたら、点検のときに使うか、工事業者が連絡のために使うくらい」とのこと。事故時も、ケータイによる道路緊急ダイヤル「#9910」(無料)もしくは110番通報がメインだそうです。「110番すれば警察から交通管制センターにも情報が入ります」とのことでした。

 道路管理者の垣根を越えて、通報された場所から交通管制センターなどへ自動で連絡される「#9910」は、2005年に始まったサービスですが、この普及も非常電話の運用停止の背景にあるという意見も聞かれました。

非常電話があることが「負担」に

 もう一つ、寒冷地ならではの理由が「除雪」です。

高速道路の「非常電話」廃止していいのか? 「ほとんど使われて...の画像はこちら >>

トンネル内では非常電話が重要(画像:PIXTA)

 非常電話は機械での除雪ができないため、雪に埋もれた電話ボックスをひとつひとつ、手作業で雪かきして掘り出しているのだそう。除雪の人員確保が難しくなるなか、この作業は負担になっているといいます。

 今回の北海道支社管内での運用停止箇所は、深川留萌道や日高道など、国が管轄する無料区間がメインの道路の起点側にあたる、わずかな有料区間で実施されます。なお、先に運用が一部停止された東北地方の高速道路でも、トンネル内の非常電話は継続しています。

 北海道などでは特に、無料の高規格道路の整備が進み、NEXCO管轄の有料道路のライバルになりつつあります。人員確保や労務単価の高騰が課題となるなか、非常電話の停止も経費削減策の一環とのこと。地方部ならではの経営環境の厳しさが、非常電話の存続にも表れているのかもしれません。

 他方、国土交通省が管轄する無料区間でも、非常電話の停止や見直しが進んでいるようです。北海道ではありませんが、NHKが以前「名阪国道」を管轄する国道事務所に取材したところ、トンネル内以外の非常電話は全て故障、または意図的に電源を抜いているものもあると判明し、その後、それらは全て撤去されたということがありました。

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