那覇空港を拠点とする「MRO Japan」はさまざまな航空会社からの依頼をうけ航空機整備を実施する整備専門企業で、「航空会社の整備部門」ではない、日本においては初めてのスタイルを取る会社です。同社が創立10周年を機に、新たな整備士制服のコンセプトを2025年9月12日に公開しています。
【写真】あまりに概念変わる! これが「MRO Japanの先端すぎる整備士制服」全貌です
MRO JapanはANAホールディングス出資のもと2015年に伊丹空港で立ち上がり、2019年には那覇空港へ拠点を移し、現在に至ります。最初はANAグループ出向社員180人で事業を開始しましたが、現在は沖縄県出身者が多数を占める「プロパー社員」も多く採用し、2025年の従業員数は470人まで拡大しています。
2025年現在、同社はANAグループやAIRDO、スターフライヤーを始め、台湾のスターラックス航空、そして航空自衛隊、海上自衛隊などの機体整備を手掛けています。同社で整備された航空機はこれまで約650機(ドック整備のみ)。広く知られる実績としては、AIRDOが2021年より運航している「ポケモン」の特別塗装機「ロコンジェット北海道」の塗装作業を担当。このほか、航空自衛隊那覇基地のF-15戦闘機などの洗浄作業なども担当し、「民間航空整備士が戦闘機を洗う」というユニークな業務が日常的に行われています。
そのようなMRO Japanが新たに打ち出した新制服とは、どのようなものなのでしょうか。
MRO Japanの新制服、超最先端なコンセプトとはコンセプトとして公開された新制服のひとつが「ファン付きジャケット」です。航空機整備が行われる格納庫や駐機場は冷暖房がないことが一般的です。とくに沖縄という立地であれば、暑さのなかで作業することは日常茶飯事でしょう。
「MRO Japan」創立10周年記念式典の様子(乗りものニュース編集部撮影)。
そうしたことから、ファン付きジャケットの採用により、スタッフが常に風を浴びている環境のなかで作業に集中することが可能に。さらに素材に汗を気化熱に変えて体を冷やす機能の採用で、暑い気候下でも快適な作業環境を提供するといいます。そしてこのジャケットは、通常の航空機整備の現場ではベルト形式で腰に巻き付けることが一般的な「安全帯」とも呼ばれる墜落静止用器具を、取り付けしたままでも着ることができるのもポイントです。
もうひとつ打ち出されたのが、駐機場で機体の発着のあいだの整備・点検を行う「ライン整備部門」むけの「高通気速乾性ポロシャツ」です。その名の通り、吸汗速乾ニット素材が採用されています。
新制服コンセプトには”沖縄らしさ”も表現されました。両制服の左肩に採用されているのは、琉球紅型と首里城のモチーフ。これは沖縄を拠点とするエンジニアの誇りを表現したものとのことです。
同社の湯川恭史社長は「2022年には欧州航空安全庁の認定を取得し世界中の顧客をお招きする準備が整いました。近隣諸国で高まる航空機整備需要をしっかりと掴み、アジアを代表するMRO会社を目指して挑戦し続けてまいります」とコメントを発出しました。現在は多くの国内航空会社における、航空機版の”車検”的立ち位置にあたる「重整備」や特別塗装の実施、海外航空会社のライン整備などを業務の主軸とする同社ですが、今後は欧米などの顧客の獲得を狙うほか、旅客機を貨物機に改修する事業などに挑戦するとしています。