なぜ「山の姿に戻す」のか?

 NEXCO東日本は2026年5月26日、上信越道リニューアル工事の一環として長野県坂城町で行っている「蓬平地区地すべり対策事業」の現場を公開しました。

「山を切り開いた高速道路を、山の姿に戻す」なぜそんな工法を…...の画像はこちら >>

 案内されたのは、本線上の「蓬平トンネル」の上部です。

正確にはボックスカルバート(函体)ですが、このトンネルは2025年8月に完成したもの。以前、ここはただの切土区間でした。

 トンネルをつくったのは、その上に盛土をするため。現場の奥では跨道橋がトンネルをまたいでいるのですが、「あの橋の高さ近くまで盛土します」とのこと。「山を切り開いて作った区間を、山の姿に戻すような工事」だと、NEXCO東日本 長野工事事務所の山岸睦功所長は話します。

 蓬平地区を含む小諸IC-更埴JCT間は1996年に開通しましたが、ここは「流れ盤」と呼ばれる地質のため、建設時から崩落が発生するなどしていました。供用後も数々の対策を行ってきたものの、微細な地盤の変位がなかなか収まらず、抜本的な対策として「押さえ盛土」と呼ばれる工法が採用されたのです。かんたんに言えば、「山を作って、山の動きを止める」といったところでしょうか。

 工事は次のような工程で進められました。まずは高速道路の上にかかる跨道橋を1本撤去し、本線の中央部と両側に最大長さ(高さ)12mにも及ぶ鉄の杭を606本、立てていきました。この杭を基礎にしてコンクリートの壁を作り、さらに天井に部材を構築してコンクリートで覆います。こうして交通を止めずに、長さ291mのボックスカルバートを構築しました。

 ちなみに、鉄筋の重さは約1830トン(新幹線の車両約40台分の重さ)、使われたコンクリートの体積は約2万300立方メートル(25mプール約40倍分)。この強固なカルバートで、約34万トンになるという盛土を受け止めます。その体積は最終的に約17万立方メートル(25mプール約340倍分)相当だそうです。

 盛土工事はもう始まっており、現在はカルバートの脇のスキマが埋まった状態。このためトンネルの上は広い工事ヤードになっています。その脇の法面を見るとおびただしい数のグラウンドアンカーが上から下まで打ち込まれています。

 では、なぜわざわざ「切った山を元に戻す」くらいの大規模な工法をあえて選んだのでしょうか。山岸所長によると、当初は山をより切り開く工法も検討されたそうですが、法面の上に立つ鉄塔を移設しなければならず、「結局、押さえ盛土が最もコストが低かった」のだそう。

 上信越道は1998年2月の長野オリンピックに間に合わせるため、暫定2車線で開通した経緯があります。建設時の崩落を受け約1400本のグラウンドアンカーを法面に打ち込み、開通後もさらに計約190本を追加で施工してきたといいます。それでも変動は進行し、抜本的な対策を施さなければ「いずれ安全度が所定よりも低くなるのは確実」だということで、2018年から現在の事業が始まっています。

【ココ埋めます!?】これが「山の姿に戻す」壮大な工事です!(地図/写真36枚)

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