自転車はペダルをこいだ力を後輪に伝えて走るのが一般的ですが、近年、前輪にモーターを備えた「両輪駆動」の電動アシスト自転車が登場しています。ハイブリッド自動車に似た部分もあるその仕組みは、どのようなものなのでしょうか。
自転車は一般的に、ペダルをこぎ、その力をチェーンなどを介して後輪に伝達する「後輪駆動」です。しかし近年、前輪にモーターを備えた「両輪駆動」の電動アシスト自転車が登場しています。
「両輪駆動」の電動アシスト自転車「アルベルトe」の前輪。中心部にモーターがついている(画像:ブリヂストンサイクル)。
従来の電動アシスト自転車と比べて、何が違うのでしょうか。自転車メーカー大手のブリヂストンサイクル(埼玉県上尾市)に聞きました。
――両輪駆動自転車はどういったしくみなのでしょうか?
ペダルをこいで後輪を動かすことに連動して、前輪部に搭載されたモーターが作動し、走行をアシストします。当社製品の場合、こぐ力を後輪に伝えるチェーンの代わりに、カーボンベルト(ベルトドライブ)を採用しているのも特徴です。
――いつごろから開発し、製品化したのでしょうか?
2012年から開発に着手しました。2014年にはそのテスト機種となる「エベルト」を発売し、2015年から本格的にラインアップを拡げています。
――これまでの電動アシスト自転車とはどう違うのでしょうか?
従来の電動アシスト自転車は「センターマウントドライブ」といい、モーターがペダルをこぐ動作をアシストし、前輪は操舵(ハンドルさばき)だけを担っていました。後輪をベルトドライブ、前輪をモーター駆動とすることで力が分散され、バランスのよい乗り心地を実現しています。
――前輪が電動になると、どうなるのでしょうか?
従来の電動アシスト自転車は「うしろから押す」ような感覚でしたが、前輪にモーターがあることで、「前から引っ張る」ような形で、こぎ出しからアシストされます。また、下り坂で後輪のブレーキをかけると、前輪のモーターがブレーキを補助するほか、そのときの抵抗を電力に変換し、バッテリーに充電します。
――「プリウス」などのハイブリッド車に見られる回生ブレーキと同じしくみなのでしょうか?
原理としては同じで、ブレーキ時にモーターが発電機の役割を果たします。
――ずばりメリット、デメリットは?
バランスがよく、たとえば前とうしろ両方に子どもを載せる場合などに適しています。後部に負荷が集中する「センターマウントドライブ」と比べ、部品にかかる負荷が分散されることもメリットでしょう。デメリットは、前輪が重くなっているので、たとえば自転車をラックに載せる場合などに少し力が必要かもしれません。

「アルベルトe」の「回復充電」のイメージ。前輪のブレーキ抵抗が電力に変換され、バッテリーに充電される(画像:ブリヂストンサイクル)。
※ ※ ※
ブリヂストンサイクルの両輪駆動電動アシスト自転車は、現在8種類。価格はおよそ12万円から15万円程度だそうです。従来型である「センターマウントドライブ」の車種は13種類だといい、両輪駆動の車種を増やしていることがわかります。価格も両者で大きくは変わらないそうです。

ペダルをこいだ力を後輪に伝えるのは、チェーンではなくカーボンベルト。それに連動して前輪のモーターも駆動する(画像:ブリヂストンサイクル)。