インターネットの「官公庁オークション」では、自治体で公用車として使われた乗用車のほか、バスやトラック、救急車、さらにははしご車まで出品されています。こうした「はたらくクルマ」は、一般の人も買えるのでしょうか。
インターネットオークションサイト「ヤフオク!」には「官公庁オークション」のページがあり、そこでは自治体が出品したさまざまな公有財産が見られます。その対象にはクルマもあり、公用車として使われた乗用車などの一般車両はもちろん、バスやトラック、救急車や消防車といった、いわゆる“はたらくクルマ”まで出品されています。
三重県名張市が「ヤフオク!」に出品中のはしご車。日野自動車の車両でモリタが製造したもの(画像:名張市)。
一般に公開される形で、消防車などの緊急車両までがオークションにかけられる背景には、何があるのでしょうか。2017年7月末現在、35mはしご付き消防車(はしご車)を出品している三重県名張市に話を聞きました。
――はしご車はどのような経緯で出品したのでしょうか?
インターネットオークションを利用した車両の売却は全国の自治体で行われており、名張市でもこれまでに公用車を9台売却しています。いずれも想定より高値が付いたことから、今回、消防車を初めて出品することとしました。
従来、市の車両は買い替えの際に古い車両を業者に引き取ってもらっており、それによって新車の購入額が若干値引かれることはあるものの、ほとんどの場合、古いクルマがお金に変わることはありませんでした。オークションで売却するほうがいくらか高くなる傾向があり、そのぶんを市の収入に還元しています。
――どのような人が買うのでしょうか?
乗用車の場合は一般の方や企業からの入札がありますが、今回のはしご車のようなものについては主に、流通業者などからの入札が想定されます。ルートは不明ですが、落札後、海外で引き続き消防車として使用されるケースもあるようです。
――はしご車は一般人がサイレンを鳴らしたり、はしごを使ったりすることはできるのでしょうか?
いえ、サイレンや回転灯などは、一般の方は使用できません。消防章や「名張市」の文字、マークなども含め、当市が指定するものについては落札者が除去し、その写真を当市の消防本部に提出していただく必要があります。また、はしごを使用することは可能ですが、日本消防検定協会が示す「消防車両の安全基準」による17年の使用期限を経過しているため、安全を保証できません。乗用車に近い形でご使用いただくことになろうかと思います。
――どれほどの落札額を想定していますか?
予定価格は65万円で、その2倍くらいにはなるかと思います。これまでの実績では、予定価格1万円のものが10万円、6万円のものが12万円となるなど、2倍から10倍で落札されています。

現在は一時抹消登録をしており、ナンバープレートはない(画像:名張市)。

資器材類の多くは撤去されている(画像:名張市)。

はしごの操作部(画像:名張市)。
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今回のはしご車は、1995(平成7)年3月に導入され、2017年2月まで同市の消防本部で使われていたものです。名張市にとって初めて購入したはしご車だったといい「幸いにも出番があまりなく、走行距離は1万6000kmほどで、メンテナンスもしっかり行われてきました。どこかで役に立ってくれればと思います」と話します。
入札期間は2017年8月17日(木)から24日(木)までで、入札には8月2日(水)までのオンライン上の仮申込と、8月10日(木)までに名張市へ必要書類を提出する本申込が必要です。
ちなみに、「ヤフオク!」の「官公庁オークション」では、消防車や救急車だけでなく、塵芥車(じんかいしゃ。ゴミ収集車のこと)や糞尿車(バキュームカー)なども出品されています。