かつて鉄道ファンを魅了した豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」の客室が、大阪・天王寺に新規オープンするホテルで再現されました。「寝台列車」がコンセプトというそのホテル、ほかにも鉄道にちなむさまざまな仕掛けがされています。
JR西日本は、コンパクトホテル事業を展開するファーストキャビンと共同で、JR西日本ファーストキャビンを設立。同社が運営する初の施設「ファーストキャビンステーション あべの荘」が2017年10月28日(土)のオープンを前に、10月25日(水)、報道陣へ公開されました。
「ブルートレイン」がイメージされた「ファーストキャビンステーション あべの荘」のビジネスクラスキャビン(伊原 薫撮影)。
「ファーストキャビンステーション あべの荘」は、かつてJR西日本の福利厚生施設として建設された「安倍乃荘」をリノベーション。3階建ての建物に、ベーシックな「ビジネスクラスキャビン」(1泊5900円)101ブースと、テーブルなども備えた「ファーストクラスキャビン」(1泊6800円)11ブース、そしてビジネスホテルのような「プレミアムクラス」(1泊1室1万2000円から)17室の、計129ブースを備えます(料金は税込、季節や曜日で変動)。
繁華街にあるJR天王寺駅から徒歩6分という距離ながら、敷地のエントランス部分には樹木を配し、ロビーの奥には広々とした庭園があるなど、都会とは思えない贅沢な空間が広がっています。玄関脇には、京阪神地区で快速列車などに使われる221系電車の車輪や連結器をオブジェとして配置。庭園にも特急「サンダーバード」などに使われる683系電車の部品が置かれているほか、通路部分には福知山地区で使用されていたマクラギを再利用しています。ちなみに、玄関脇に敷かれた線路はJR西日本の天王寺保線区が施工。“プロの技”が見られます。

「ファーストキャビンステーション あべの荘」の外観。

庭園の様子。

ロビーに飾られた鉄道部品。
庭園が見渡せるロビーは、木などの自然素材を取り入れた温かみのある空間で、旅の合間にホッとしたやすらぎを与えてくれます。ここにはSLのナンバープレートや運転台のメーター、タイフォン(警笛)、駅員が使う合図灯など、鉄道や駅で使われている本物の部品を展示。壁にかけられたパネルも、鉄道にちなんだものが中心です。
またロビーでは、一角に置かれたピアノの自動演奏がゆったりとした雰囲気を演出してくれますが、同ホテルの支配人を務める船津宣之さんは、なんと音楽大学のピアノ学科を卒業し、ピアノの先生という経歴の持ち主。タイミングが良ければ、船津さんの演奏が聴けるかもしれません。
3タイプの客室、それぞれの特徴は?気になるお部屋ですが、1階と2階はキャビンタイプの部屋が並びます。ファーストキャビングループの各ホテルは、飛行機のファーストクラスをイメージしたデザインが特徴ですが、このたび登場する「ファーストキャビンステーション」のコンセプトは“夜行列車の個室”。キャビンを仕切るスクリーンは、青い車体の寝台特急「ブルートレイン」を意識したカラーリングで、ロゴも夜行列車をアレンジしたものになっています。
またカプセルホテルとは違い、各キャビンには天井の高い空間が広がり、壁パネルも列車の窓をイメージした意匠に。上級グレードの部屋「ファーストクラスキャビン」には、サイドテーブルも備え付けられています。

「ビジネスクラスキャビン」の内部。

「ファーストクラスキャビン」の内部。サイドテーブルなども設置。

3階「プレミアムクラス」は鍵がかかる個室が展開。写真はツインルーム。
なお、このホテルは旅館業法上の「簡易宿所」として営業するため、各キャビンは鍵をかけることができません。ですがキャビン内には施錠可能なセーフティーボックスが完備されているほか、キャリーケースが置ける大型の荷物置き場を各所に設置。フロントでワイヤーロックの貸出しもあるそうです。
一方、3階部分は鍵がかかる個室タイプの最上級グレード「プレミアムクラス」。シングル、ダブル、ツインの各タイプがあり、大きな窓のある客室内にはクローゼットなども用意。ユニットバスを省いたビジネスホテルといった感じです。
豪華寝台列車「トワイライトエクスプレス」の最上級客室、天王寺で復活!?今回開業する「ファーストキャビンステーション あべの荘」、その最大のポイントは、「プレミアムクラス」のうちシングル・ツイン各1室で用意されたコンセプトルーム。
ツインルームのドアを開けると手前にベッドが並び、奥にはソファが。列車の最後尾から流れ去る景色を眺められた、あの雰囲気がそのまま目の前に広がり、鉄道ファンには正に“感涙モノ”です。

ツインタイプのコンセプトルーム。扉横のプレートは「トワイライトエクスプレス」車両で実際に使われていたもの。

ツインタイプのコンセプトルーム。内部の配置まで「トワイライトエクスプレス」の実車とそっくり。

シングルタイプのコンセプトルーム。
この部屋をつくるにあたっては、デザイナーが京都鉄道博物館に保存されている「トワイライト」のスイートルームを何度も訪れ、その雰囲気をできる限り取り入れたそうです。また、ブラケットライトや壁に飾られた絵など、一部の調度品は廃車となった実際の車両から取り外したものを設置。部屋の入り口に取り付けられた、「A-1」などと書かれたプレートや、ドアスコープ部分の飾りも本物です。さらに、コンセプトルームの利用者は「トワイライト」で実際に使われていた浴衣の貸出しもあるとのこと。
プレミアムクラスの利用者には、ロゴ入りのスリッパなどもサービス。雰囲気を盛り上げてくれます(スリッパは数量限定、なくなりしだい終了)。
共用スペースには大浴場、シャワーブースなど「ファーストキャビンステーション あべの荘」にはこのほか、1階部分に男女別のシャワールームや大浴場を設置。浴槽からは小庭が眺められ、とても開放的な気分が味わえます。シャワーブースやドレッサーも充実していて、旅の疲れを癒してくれます。

コンセプトルームで使用できるオリジナルの浴衣と、数量限定「トワイライトエクスプレス」ロゴ入りスリッパ。

窓から小庭が眺められる浴場。写真は男性用。

女性用の浴室はドレッサーも充実。
報道陣に内容が公開された10月25日(水)は、同ホテルの開業記念セレモニーも実施されました。JR西日本ファーストキャビンの来海忠男社長は「“コンパクト&ラグジュアリー”というファーストキャビンのコンセプトをベースにしつつ、広々とした庭や開放的な空間、そして寝台列車をコンセプトにしたデザインなど、ほかとは趣の異なるホテルができました。『ステーション』ブランドの第1号店として、幅広いお客さまに利用していただき、この空間を楽しんでほしい」と話していました。
「ファーストキャビンステーション あべの荘」は10月28日(土)にオープン。すでに問い合わせも多く、土日を中心に予約も好調だそうで、注目の高さが伺えます。予約は公式ウェブサイトから可能ですが、コンセプトルームの「トワイライトシングル」「同ツイン」は、電話でのみ予約を受け付けているとのこと。皆さんもぜひ、よみがえった「トワイライトエクスプレス」の“乗り心地”を味わってみてはいかがでしょうか。