つくばエクスプレスの一部車両に設けられていた、いわゆる「ボックス席」の多くが、ロングシートに付け替えられました。これにより、座席数は減少しています。
鉄道車両の座席配置にはおもに、窓を背にしたロングシート、進行方向または逆方向に向いたクロスシート、その両方が1両のなかで混在するセミクロスシートがあります。首都圏の通勤列車は、その多くがロングシートですが、たとえばJRでは東海道本線や宇都宮線(東北本線)、私鉄では相模鉄道、つくばエクスプレスなどで、一部車両のなかほどに2人掛けのクロスシートが向かい合わせで配置された、いわゆる「ボックス席」が設けられています。
つくばエクスプレスのTX-2000系電車。一部の編成は6両のうち3、4号車にボックス席が設けられている(画像:首都圏新都市交通)。
しかし、つくばエクスプレスを運営する首都圏新都市鉄道(東京都千代田区)は、TX-2000系電車に設けられたボックス席の多くを、2017年度に順次ロングシートへ変更したといいます。同社に話を聞きました。
――TX-2000系は何本あって、そのうち何本でボックス席をロングシートにしたのでしょうか?
全23本のうち16本で、2017年度から順次実施しました。なお、ボックス席があるのは6両編成のうち中間に位置する3、4号車です。
――そもそもなぜボックス席を設けていたのでしょうか?
TX-2000系は秋葉原~つくば間全線を走行でき、乗車時間の長い列車で運用されることが多いため、一部にボックス席を設けていました(編集部注:つくばエクスプレスにおけるもうひとつの車両形式であるTX-1000系は、電力方式のちがいから守谷~つくば間を走行できない)。
増える定員は12人 しかしそれ以上の効果も――なぜロングシートに変更したのでしょうか?
ボックス席を有する構造ですと、ラッシュ時などにお客様が車両のなかほどまで進みづらく、混雑の原因となっていたからです。混雑緩和に向け「できるところから進めていこう」という取り組みとして実施しました。
――ロングシート化でどれほどの人が乗れるようになったのでしょうか?
定員は131人から143人にアップします(編集部注:国土交通省基準の数値。車両諸元上の数値では異なる)。混雑率の緩和効果としては2%ほどですが、お客様が車両のなかほどまで進みやすくなるので、乗り降りもしやすくなります。ただし、座席定員としてはボックス席を有するセミクロスシートが60人なのに対し、全席ロングシートは54人と、6人分少なくなります。
――利用者からはどのような声があるでしょうか?
「(ボックス席が)なくなってしまうのは残念」という声もあります。しかし、沿線全体でご利用が増えており、輸送力増強が喫緊の課題と考えています。

ロングシート化されたTX-2000系(中段)。下は、ロングシート化に際し追加されたつり革(画像:首都圏新都市交通)。
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首都圏新都市鉄道によると、TX-2000系のうちボックス席を残した7本は、おもに休日のレジャー向けに使われる予定だそうです。
新しい車両でボックス席をなくした相鉄 復活はある?一方、前述した相模鉄道では、1980年代から90年代にかけて登場した新7000系電車の一部と8000系、9000系電車で、10両編成のうち2両にボックス席が設けられています。しかし、2000年代以降に登場した10000系、11000系電車は、いずれも全席がロングシートです。新しい車両でボックス席を廃止した理由について、相模鉄道の広報業務を担う相鉄ビジネスサービス(横浜市西区)は次のように話します。
「10000系、11000系電車はJRの車両に準じて設計されており、その基本とした車両にセミクロスシート(ボックス席)がなかったことと、ラッシュ時においてスムーズに乗降いただくことを目的に、ロングシートのみとしました」(相鉄ビジネスサービス)
相鉄ビジネスサービスによると、ボックス席のある車両ではやはり、乗客が入口付近に滞まってしまい、なかほどにいる人が降りづらくなるという状況もあるとのこと。10000系および11000系電車にボックス席がないことについては、「そのままでよいという声と、やはり欲しいという声の両方があります」と話します。

相模鉄道が導入する新型車両20000系。上は回送中の姿、下は車内のイメージ(画像:相模鉄道)。
ちなみに、相模鉄道は現在、JR線および東急線との相互直通運転に向け、それに対応した新型車両の20000系電車を準備していますが、こちらも全席ロングシートとのこと。「相互直通運転が始まったあと、やはりボックス席が欲しいという声があれば、導入を検討していきます」としています。
【写真】相鉄のボックス席は本革張り!?

相鉄9000系リニューアル車。ボックス席は本革張りとなっている(2016年3月、恵 知仁撮影)。