時刻表には、『JR時刻表』のような全国的なものから、各私鉄で発行しているものまで様々な種類がありますが、なかには、乗れない貨物列車ばかりを集めた『貨物時刻表』もあります。どのような人が使うのでしょうか。

もともとは国鉄の業務用資料

 冊子になった紙の時刻表は、JR各社監修の『JR時刻表』や、90年以上の歴史を持つ『JTB時刻表』といった全国版から、私鉄などが発行する自社線内のダイヤを中心に掲載しているものまで、様々な種類が存在します。これらは基本的には、旅客を乗せて走る営業列車の情報が載っているものです。

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2018年3月に発行された『2018貨物時刻表』。販売価格は税込み2500円(画像:鉄道貨物協会)。

 一方、全国を走る貨物列車のダイヤを掲載した『貨物時刻表』というものも毎年発行されています。貨物列車ですから、当然ながら“乗れない列車”しか載っていません。どのような目的で発行されているのか、発行元の鉄道貨物協会(東京都千代田区)に話を聞きました。

――『貨物時刻表』はいつから発行しているのでしょうか?

 もともと、国鉄時代に業務用の資料として発行されていたものを、1978(昭和53)年から当協会が発行するようになりました。

――本来はどのように使うものなのでしょうか?

『貨物時刻表』を使っているのは、たとえばJRなど鉄道事業者もありますが、おもには「利用運送事業者」(荷主と貨物駅とのあいだで集荷や配達を行う事業者。「通運」とも呼ばれる)です。時刻表をもとに運送事業者は、何時にどこの貨物駅へ(貨物列車に載せる)荷物を届ければいいのか、あるいは貨物駅からの荷受けに行けばいいのか、といったことがわかります。

発行部数は2万部超 業者向けだけでないその内容とは

 この『貨物時刻表』、一般の人が書店で購入することもできます。

鉄道貨物協会に再び話を聞きました。

――一般の人はどのような目的で買い、どのように使っているのでしょうか?

 貨物列車の通過時間などがわかりますので、列車の撮影といった趣味にお役立ていただいているケースが多いと思います。ちなみに、個人で貨物列車をお使いいただく場合は、全国の利用運送事業者が窓口になります。

――どのような編集方針で作っているのでしょうか?

 私どもがこれを一般の方に向けて発行しているのは、広報的な側面があります。鉄道貨物でどのようなものが運ばれているのか、どのような事業が行われているのか、どう生活に関わっているのかを、国民の皆様に広く知っていただけるような誌面づくりをしています。

――業務で使う人と一般の読者で、比率はどれほどでしょうか?

 厳密にはわかりません。というのは、『貨物時刻表』は取り扱い書店や当協会ウェブサイトから購入できますが、たとえば業者向けに販売、あるいは進呈しているわけではありません。業者の方も、一般の方と同じように購入しています。

乗れない列車だけの『貨物時刻表』とは 「業務用」だけにあらず 一般販売されるワケ

1984年2月発行の『貨物時刻表』。同月のダイヤ改正で全国的に貨物を扱う駅が大幅に減り、都市と都市のあいだを直行する現在の貨物輸送方式が主流になった(画像:鉄道貨物協会)。

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『貨物時刻表』にはおもに、JRや第三セクター、私鉄を含めた全国の貨物列車のダイヤが掲載されていますが、そこには始発駅、終着駅、停車駅などのほか、たとえば「コンテナ」「石油」「空返(空になった貨車を所定の貨物駅まで送り返すこと)」といったように、ひとつひとつの列車が運ぶものの内容まで明記されています。

 また、業界の動きや貨物輸送の仕組みを紹介するページ、車両紹介、読者投稿による貨物列車のフォトギャラリーなどのコーナー、さらには別刷りの「貨物列車運行図表(ダイヤグラム)」「貨物列車卓上カレンダー」といった付録もついています。

『貨物時刻表』は現在、毎年3月のJR貨物ダイヤ改正に合わせて発行。2016年1月時点で、全国42の書店などで取り扱われています(JR貨物の支店含む)。鉄道貨物協会によると、取り扱い書店の数は大きく変わってはいないものの、発行部数は年々増えているといい、2017年版は2万2000部だそうです。部数が増えていることについて、「鉄道貨物輸送の認知が広まったこと、そして鉄道ファンの裾野が広がったことではないでしょうか」と話します。

【画像】前身は国鉄の「業務用時刻表」

乗れない列車だけの『貨物時刻表』とは 「業務用」だけにあらず 一般販売されるワケ

『貨物時刻表』の前身ともいえる国鉄貨物営業局の業務用時刻表。1966年当時のもの(画像:鉄道貨物協会)。

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