トンネルといえば、オレンジ色の照明で照らされた薄暗いイメージがあるかもしれませんが、近年できたトンネルでは、壁や路面など全体が白っぽいものも。単に新しいだけなのでしょうか、それとも、実際に白いのでしょうか。

「白っぽい」理由は照明と舗装にあり

 トンネル内部といえば、オレンジの照明で照らされたやや薄暗い空間を思い出すかもしれません。しかし現在は、なんとなく白っぽく見えるトンネルが増えている気がします。

最近のトンネルはなぜ「白っぽい」のか 進化する照明、トンネル...の画像はこちら >>

国道253号「八箇峠道路」の八箇峠トンネル。トンネル全体が白っぽい(2018年5月、中島洋平撮影)。

 たとえば、2017年11月に開通した国道253号「八箇峠道路」の八箇峠トンネル(新潟県南魚沼市~十日町市、全長2840m)は、オレンジの照明が見られないだけでなく、トンネル全体が白っぽく、壁や舗装面の境目もわからないほどです。単に新しいからなのでしょうか。

国土交通省長岡国道事務所に話を聞きました。

――八箇峠トンネルは全体的に白っぽく見えますが、なぜでしょうか?

 トンネルでよく見られるようなオレンジのナトリウムランプではなく、明るい白色LEDを照明に採用していること、また路面をアスファルトではなく、壁面と同様にコンクリートで舗装にしていることから、確かに白っぽく見えるかもしれません。

――LED照明やコンクリート舗装は、珍しいものでしょうか?

 コンクリート舗装は、トンネル内の舗装としては一般的です。理由は、トンネル内での視認性に優れることと、耐久性の高さにあります。一般的に道路で用いられる黒いアスファルト舗装は、費用は安いものの、定期的に補修していかなければなりません。補修に際しては当然、交通規制をかけることになりますが、特に長いトンネルほど、工事規制された場合の迂回が難しくなるのです。

そのため、補修の回数をできるだけ少なくする目的などから、耐久性の高いコンクリート舗装が使われます。

 LED照明については、2015年に国土交通省がトンネルへLED照明を導入するガイドラインを改定し、LED照明の全面的な使用を認めて普及を促進していることもあり、増えているでしょう。従来のナトリウムランプや蛍光灯よりも明るく、省エネで、はるかに寿命が長くなっていることから、既存の照明をLEDに置き換えることも行われています。

明るさ向上でLED普及 緑・赤・黄色のトンネルも

 国土交通省が道路トンネルへLED照明を導入するガイドラインを定めたのは、2011(平成23)年のこと。このときは、LEDの導入はトンネルの中間部(基本照明)のみとされました。外との明暗の差にドライバーの目を慣れさせるため、基本照明の10倍程度の明るさを必要とする出入口部分については、高出力化が困難であるとして対象外とされたのです。

しかし、技術の進歩で高出力化が可能になったことから、2015年の改訂版では出入口部の照明もLED導入の対象とされています。

 八箇峠トンネルのようなコンクリート舗装のトンネルは珍しいものではないものの、全体にわたって白いLED照明を採用したトンネルが増えているようです。NEXCO西日本も「従来の蛍光灯を用いた照明も白色の光でしたが、LEDはさらに明るく、白っぽくなっています。近年新設されたトンネルには基本的にLEDが採用されています」といいます。

 また、NEXCO西日本によると、トンネルでは壁面の下方に白っぽいタイルが貼られていることもあるとのこと。「トンネル内の明るさを確保するためです。

交通量が多いトンネルでは、排気ガスの影響で明るさが足りなくなることがあります。そのため、壁面の一部にタイルを貼り、クルマのヘッドライトを反射させています」と話します。

最近のトンネルはなぜ「白っぽい」のか 進化する照明、トンネルならではの工夫も

新名神高速 高槻JCT~神戸JCT間のトンネルに採用されている緑の「ペースメーカーライト」(上)、赤と黄色の「サイン照明」(画像:NEXCO西日本)。

 ちなみに、2018年3月に開通した新名神高速・高槻JCT~神戸JCT間のトンネルでは、渋滞が発生しやすい箇所で、LED照明がつくる緑色の光の輪をクルマの速度に合わせて前方へ移動させ、ドライバーを誘導する「ペースメーカーライト」が日本で初めて採用されています。また、火災発生時にはトンネル全体が赤い光で、事故や落下物の発生で通行に注意が必要な際には黄色い光で照らされます。

【写真】トンネル照明、「照らす方向」にも工夫

最近のトンネルはなぜ「白っぽい」のか 進化する照明、トンネルならではの工夫も

外環道・三郷南IC~高谷JCT間の地下区間に採用された「プロビーム照明」。
LEDがケースからやや傾いた形で取り付けられており、クルマの進行方向を照らす(2018年5月、中島洋平撮影)。