都市部の駅や列車内で増えているデジタルサイネージ広告。いま、商品などの単なるPRのみならず、「それを見た人に、そこでの行動を促す」ものにしようとする、新たな取り組みが進んでいます。

注目されている「その瞬間、その場所ならでは」の広告

 都市部の駅では、液晶モニターなどを使ったデジタルサイネージ広告が増えており、テレビCMのような動画広告を放映する例も多く見られますが、いま、その“使い方”が変わってきているようです。東京メトロの広告代理店であるメトロ アド エージェンシーの井上達也さんは、次のように話します。

「特に駅の広告では、その瞬間、その場所ならではのコンテンツを配信するものが、ここ1、2年で注目されてきており、その広告の場所から付近の商業施設へ人を誘導し、直接的な購買へ結びつけることを狙うものもあります」(メトロ アド エージェンシー 営業企画局長 井上達也さん)

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丸ノ内線新宿駅のデジタルサイネージを利用したマスカラの広告。付近にあるその自販機へ、「GO!→」と誘導する(画像:メトロ アド エージェンシー)。

 たとえば、東京メトロ丸ノ内線新宿駅の地下通路に連続して立つ9本の柱を利用した計35面のデジタルサイネージでは、2018年7月30日(月)から1週間、新発売されたマスカラの動画広告が配信されています。複数のサイネージで一斉に、マスカラの自販機がそこに立ち並んでいるように見せ、そこからすぐのところにある駅直結の商業施設に特設された本物のマスカラ自販機へ誘導するものです。

 ただ、このデジタルサイネージ広告は、マスカラ自販機へ人を誘導する意味がありますが、最終的な目的は、自販機の売り上げアップではなく、そのマスカラの認知度向上、全体的な売り上げアップです。広告主である資生堂ジャパン ブランドマネジメント部の釣谷麻実さんは、この場所だけの「コト」体験を通じて、ターゲットにワクワクしてもらうことを狙っているといいます。

 商品のPRにあたって、単にデジタルサイネージで商品の動画広告を流すのではなく、なにか面白そうなものがある、と人が誘導されて、実際に商品を購入、「面白いから買ったけど商品の使い心地もよかった」といった体験を、口コミ評価やSNSなどでの拡散してもらう、それによる商品のPRが期待されているのです。

 このマスカラは通常、ネット通販のみで購入できるものであり、また、この特設自販機で購入するとオマケも付属。“特別感”も、クチコミを促す仕掛けのひとつです。

駅の広告に「いまなら近くの映画館、すいてるよ!」といった情報をリアルタイム表示

 いま、その場所にいる人を動かすために、デジタルサイネージの内容を状況に応じてリアルタイムで変化させる取り組みも行われています。

 2018年1月から2月にかけて、東京メトロの六本木駅と銀座駅、有楽町駅のデジタルサイネージで、近隣にある映画館の空席情報を表示させる取り組みが行われました。サイネージに大きく「今ヒマ?」といった文言を表示したのち、近隣シアターの上映作品と空席情報を配信するというもので、「『空いているなら観にいこうか』、あるいは『今日は無理でも明日ならば』ということにもなります」と、メトロ アド エージェンシーの上原哲朗さんは話します。

 このような広告は「ダイナミックデジタルOOH」と呼ばれ、海外では普及しているといいます。たとえば野球場などでは、試合が始まってチケットの値段が下がったことをリアルタイムにサイネージで周知する、といったことも行われているそうです。

変わる駅のデジタル広告 単なるPRから「そこにいる人を動かす」ものへ

「今ヒマ?」の文言ののち、駅近くにある映画館の空席情報をリアルタイムで表示した広告(画像:メトロ アド エージェンシー)。

「駅の広告はデジタルになり、できることが大きく広がっています。たとえば商業施設近くのデジタルサイネージでは、食品が割引タイムになる19時台以前の広告と、19時台の広告、閉店間際の広告と出し分けたり、天候に応じて商品の広告を変えたりすることができるわけです。このように『なら行こう』という気にさせる広告を出せるのは、看板やテレビCMなどのマス広告と、大きく異なる点です」(メトロ アド エージェンシー 媒体戦略局戦略企画部 上原哲朗さん)

 メトロ アド エージェンシーによると、デジタルサイネージでその瞬間、その場所ならではのコンテンツを掲出することにより、商品の売り上げが数倍伸びたケースも確認されているそうです。

【動画】連動して動く圧巻の35面デジタルサイネージ
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