ウィラーが夜行バスの豪華シート「コクーン」の販売を終了します。1車両につき全席2列で配置され、シェルと呼ばれる大型のパテーションでプライベート空間が確保されるなど、豪華夜行バスの先駆けとなった商品です。

ウィラーのフラッグシップ

 ウィラーが高速バス「ウィラー・エクスプレス」の2列シート「コクーン」の販売を終了します。すでに関東~関西便での取り扱いは2018年10月1日出発の夜行便をもって終了、最終運行は12月23日(土)、関東発名古屋行きの夜行便です。

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プライベート空間が確保された2列独立シート「コクーン」。座席は通路に向かって斜めに配置されている(画像:ウィラー)。

「コクーン」は2010(平成22)年に登場しました。車両の左右に1列ずつ、しかも各席が進行方向に並行ではなく、通路側に向かってやや斜めに配置された2列独立シートで、シェルと呼ばれる大型のパテーションでそれぞれプライベート空間が確保されているというもの。各席にはテーブルや電源コンセント、スーツ掛けハンガー、靴収納スペース、テレビや映画などを楽しめるプライベートモニターなどが設けられています。「コクーン」専用車両で運行されており、1車両あたりの座席数はわずか19席。運賃は関東~名古屋間で6630円~となっています。

 全席個室タイプのシートを備えた豪華夜行バスの先駆けといえる存在であり、登場当時から現在に至るまで、マスコミなどでも取り上げられることの多い商品です。ウィラー自身もフラッグシップと位置付ける「コクーン」、なぜ販売を終了するのか同社に聞きました。

――なぜ販売を終了するのでしょうか?

 車両の老朽化および安全面の観点から決定しました。

「コクーン」は2010(平成22)年の導入から8年が経過しています。シートのオーバーホールは定期的に行っているものの経年劣化があり、また、車両の安全装置も以前のものです。当社では現在、最新の車両に入れ替えを行なっていることもあり、快適で安全なサービスの提供という観点で必要なことと考えております。

――「コクーン」はどのような経緯で誕生したのでしょうか?

 お客様の「後ろの人を気にせずにリクライニングしたい」「もっと寛げるプライベート空間が欲しい」といった声を基に、移動に求める理想空間の実現を目的として、「いままでにないプライベート空間」をコンセプトに開発いたしました。お客様からは「周りの音や視線が気にならない」「プライベートモニターがよい」といったお声があります。

――運行終了について、どのような声がありますでしょうか?

「寂しい」というお声が多いです。「今後の革新的なサービスにも期待」といったお声も頂いております。

「コクーン」だけじゃない 2列シート全廃へ

 ウィラーでは「コクーン」に先駆け、2008(平成20)年に初の2列独立シート「エグゼクティブ」を導入しています。こちらは、2階建て車両の1階部分に3席のみ配置(当初は4席)、ウィラーの商品では最大となる80cmのシート幅が確保されているもの。現在は関東~関西便での運行で、運賃は1万1100円~となっています。

豪華夜行バス「コクーン」販売終了へ 2列シート全廃、3列を強化するウィラーの事情

2列独立シート「エグゼクティブ」。ウィラーの現行商品では最も値段が高い(画像:ウィラー)。

 じつはこの「エグゼクティブ」も「コクーン」と同様、2018年内に引退予定とのこと。これによりウィラーでは2列シートの商品がなくなり、2017年2月に登場した3列シートの「リボーン」が現行商品のなかで最上級クラスの位置づけになるそうです。

「リボーン」は3列独立シートながら、各座席が側面から背面にかけて硬い「シェル」で包み込まれていることが特徴で、「コクーン」よりも1席少ない全18席が配置された専用車両での運行。シェル内側には木製アームレスト、ドリンクホルダー、読書灯、コンセントなどが備わっているほか、電動シートは最大156度まで傾斜します。

「レッグレストとフットレストが連結し、フラットに近い感覚で足を伸ばしてお休みいただくことができます。2列シートのほうが確かに特別感はあるかもしれませんが、『コクーン』をよりゆったりさせたものが『リボーン』であり、快適性はこちらのほうが上と考えています」(ウィラー)

 現在、「リボーン」は関東~関西間(7900円~)、関東~名古屋間(6900円~)で運行されていますが、ウィラーによると「ほかの路線をご利用になるお客様からも『乗りたい』というお声をいただいております」とのこと。今後は「リボーン」を「ウィラー・エクスプレス」のフラッグシップとして販売を強化していく予定だそうです。

 ちなみに、「リボーン」には「コクーン」のようにプライベートモニターは設置されていませんが、これについても代替となる新サービスを検討中。スマートフォンなど、利用者が持つデバイスで映画などのストリーミング視聴が可能なサービスを現在テスト運用してるといいます。ウィラーは、「特徴的なシートの運行が終了してしまいますが、お客様のニーズにお応えするサービスを今後も継続して提供していきたいと考えております」としています。

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