パイロットや管制官が無線でやり取りする際、用いられる航空会社の名称「コールサイン」のなかには、一見どちらの会社かわからないユニークなものも存在します。それは古今東西、そして日本でも見られ、それぞれに由来がありました。
2020年5月にデビューが予定されているJAL(日本航空)グループの国際線中長距離LCC(格安航空会社)「ジップエア(ZIPAIR Tokyo)」の、無線交信で交わされる航空会社の呼び名「コールサイン」が、「ジッピー(ZIPPY)」に決定しました。
「コールサイン」は、パイロットや管制官が無線でやり取りする際、人によって航空会社の呼び方がブレてしまうのを防ぐために定められています。JALの「JAPAN AIRLINES」からくるコールサイン「ジャパンエア(Japan Air)」のように、会社名に由来しているものが多く見られます。
ところが航空会社のなかには、一見したところどの航空会社か分からないような、ユニークなコールサインを持つ会社が存在します。そのなかから5つを以下に挙げました。それぞれどのようなものがあり、そしてどういった経緯でつけられたのでしょうか。
パンナムのボーイング747型機。機首部分には「Clipper Rainbow」の文字が入っている(画像:clipperarctic[CC BY-SA〈https://bit.ly/2TugrZ0〉])。
「クリッパー」は、アメリカにかつて存在した大手航空会社のひとつ、「パンナム」ことパンアメリカン航空のコールサインです。
パンナムは戦前の長距離国際線参入時、19世紀の大型船「クリッパー」にちなんで、マーチンM-130飛行艇に「チャイナ・クリッパー」といったような、所有機体に「クリッパー」を含む愛称をつける慣習がありました。これがコールサインにも及んだといわれています。
大手フラッグキャリア&LCCも 海外のユニークなコールサイン現在運航している海外の航空会社で、ユニークなコールサインを持つといえば次の2社でしょう。
「スピードバード」はイギリスの大手航空会社、BA(ブリティッシュ・エアウェイズ)のコールサインです。「伝書バト」を意味するこの言葉は、同国にあったインペリアル航空のロゴマークの名称でした。
ブリティッシュエアウェイズのボーイング747-400型機(画像:Pixabay)。
インペリアル航空は1939(昭和14)年に、ほかの国内航空会社と併合しBOAC(英国海外航空)になります。このBOACも1974(昭和49)年、ほかの航空会社と併合し現在のBAになりました。
「ビックバード」は2014(平成26)年に、タイのノックエアーとシンガポールのスクートの両航空会社が合併し設立された中長距離LCC、ノックスクートのコールサインです。成田、関西、新千歳からバンコク発着路線を就航させています。
同社広報担当によると、鳥のペイントが施された同社の飛行機の塗装と、LCCとしては比較的大型の飛行機を使用していることがコールサインの由来と話します。
また鳥をモチーフにした同社のキャラクターにも、「ビッグバード」という名称がついているそうです。
2020年1月現在、ユニークなコールサインを使っている日本の航空会社といえば、次の2社でしょう。しかし、導入までの理由は両社で大きく異なるようです。
ニュースカイ(New Sky)「ニュースカイ」は宮崎県を拠点に、羽田発着の九州路線などを運航する新規系航空会社、ソラシドエアのコールサインです。同社広報部によると、このコールサインは前身であるスカイネットアジア航空から使われていたものだそうです。
「ニュースカイのコールサインは、スカイネットアジア時代の2002(平成14)年に決められたものです。『スカイ』は当時の社名から来ていますが、この言葉が入るコールサインは他社でも見られました。
ソラシドエアの前身、スカイネットアジア航空(画像:lovefreephoto)。
オレンジライナー(Orange Liner)
「オレンジライナー」は日本を拠点とするLCC、ジェットスター・ジャパンのコールサインです。同社は、オーストラリアを拠点とするジェットスターグループの1社です。
「就航前に、そのとき在籍していた社員全員にコールサインの名称を募りました。集まった候補名称のなかから社員投票を行ったところ、トレードカラーのオレンジを入れた『オレンジライナー』がもっとも高い得票があり、これが正式なコールサインとして採用されました」(ジェットスター・ジャパン 広報部)
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このほか、グループ全体の傾向としてユニークなコールサインを使うところも見られます。LCCのエアアジアグループでは、タイ・エアアジアXが「エクスプレスウイング」、インドネシア・エアアジアが「ワゴンエアー」、エアアジア・フィリピンが「クールレッド」といったようなコールサインを使用しています。