駅ホームの番号は通常、1番線から順番に振られていきますが、駅によっては「0番線」が存在するケースがあります。どのような事情で生まれたのでしょうか。
駅で時々「0番線」や「0番のりば」といったホームを目にします。「0」だから列車に乗り降りできない、ということはもちろんありませんが、どのような経緯で誕生したものでしょうか。
乗り場が複数ある駅では、ホームに1番線、2番線……のように番号が振られています。番号を振る順番は鉄道会社によって異なりますが、国鉄では「駅本屋」という駅業務を行う主要な建物に近いホームを1番線とし、そこから遠ざかるにつれて2番線、3番線……と番号を振っていました。
綾瀬駅の北綾瀬行きホームを示す0番線の看板。1番線の先端に追設したため0番線を名乗る(2006年5月、児山 計撮影)。
この場合、駅本屋のない方向にホームを拡張するときは既存の番線に数字を付け足すだけですが、駅本屋側に線路を拡張するとなると、単純に番線の数を増やすわけにはいきません。
ひとつの解決法として、駅本屋に近い新ホームを1番線とし、以降のホーム番線をすべて付け直す方法がありますが、これでは既存のホームの番線表示、案内表示などを取り換えなくてはならず、工事が大規模になってしまいます。
そこで、駅本屋から見て1番線の手前にホームを増設する際に、1より小さい数ということで「0番線」と命名するケースが生まれます。これなら旅客案内の更新は、0番線に関連する部分だけで済みます。
他社への影響を避ける場合も0番線が生まれる首都圏では、東京メトロ千代田線 綾瀬駅のケースがそれにあたります。
綾瀬駅には当時、すでに4番線までホームがあり、さらにホームを付け足すとすれば5番線になりますが、そうなると1番線の隣が5番線となってしまい案内上不適切なため、0番線と命名されました。
駅本屋側にホームを増設した場合、ほかの番線を変更しないよう0番線と命名されるケースがある。写真は越後湯沢駅の0番線(2014年3月、児山 計撮影)。
このほか0番線が生まれるケースとしては、複数の鉄道会社がホーム番号を共有している駅でも見られます。
たとえばJR東日本と京成電鉄が乗り入れる日暮里駅(東京都荒川区)では、ホームが京成電鉄とJRで通し番号になっており、駅本屋に近い京成が1番、2番線、JRのホームは3~12番線(5~8番線は欠番)となっていました。
ところが京成電鉄が日暮里駅の改良工事を行い、スカイライナーの乗車ホームを増設した結果、ホームがひとつ増えることになりました。この際、1番線から付番し直すとJRの番線も変更することになるので、影響が他社に波及しないよう京成線の上野方面を0番線としました。なお、同じく日暮里駅に乗り入れる日暮里舎人ライナーは、JRや京成とやや駅の位置が離れているためか、独立して1番線、2番線を付番しています。
このように他社に影響を及ぼさずに番線を追加する場合、私鉄や第三セクター鉄道のホームが0番線となるケースが見られます。
かつて本屋側に2線以上増えた大阪駅 「マイナス1番線」ともこのほか、変わった0番線の活用例としては、米子駅(鳥取県米子市)のJR境線ホームが挙げられます。米子駅の場合も1番線の本屋側にホームを増設したことで0番線が生まれたのですが、境線の終点となる境港は妖怪漫画で有名な水木しげる氏の出身地。
JR四国の後免駅では、土佐くろしお鉄道開業の際に本屋側にホームを増設した結果、0番線が生まれた(2006年11月、児山 計撮影)。
ところで、これまではホームが本屋側に1線増えたケースを紹介しましたが、2線以上増えた場合はどうなるのでしょう。
過去の例としては、大阪駅に大阪環状線ホームを新設する際、すでに0番線まで拡張されていたにもかかわらず、さらに本屋側にもう1線追加したことがあります。
工事中の資料などによると、このときは「マイナス1番線」と呼ばれたこともあったそうですが、さすがにマイナスを使うのは旅客案内上好ましくないことから、大阪環状線ホーム完成後はそれぞれ「環状1番線」「環状2番線」と命名することで、東海道本線の1番線や2番線と区別していました。
なお、大阪駅はその後、大規模な駅改良工事を行って発着番線を整理した結果、大阪環状線ホームは「環状」がとれた1、2番線(のりば)となり、独特な付番方法は解消されています。