ぐるぐると回りながら高度を上げていくループ構造の道路が日本各地にあります。土木構造物としても注目され、なかには観光スポットになっているものも。
道路や鉄道では、大きな高低差を克服するため、「ループ構造」が用いられることがあります。
かつてトンネル技術も未発達な時代、山を越える道路は、何度もヘアピンカーブを描きながら斜面を登っていくような線形がよく見られました。現代の高規格な道路では、長いトンネルが多くなってきましたが、どうしても高低差を埋めなければならず、スペースに制約もあるなどの場合に、ループ橋などが設けられます。
同様の理由で、高速道路のICやJCTのように高架と地上をコンパクトにつなぐ際にも、ループが多用されます。
大自然や都会の真っ只中を道路がヘビのように渦巻く様子は、土木構造物の機能美を感じさせられるダイナミックな光景でしょう。この記事では、東京から日帰り圏内にある無料で通れるループ道路を紹介します。
レインボーブリッジ取付部(東京都港区・江東区)東京港に架かる吊り橋のレインボーブリッジ(東京港連絡橋)は、貨物船や豪華客船が通過できるよう、海面上52mもの高さに橋桁が架かっています。
もともと高架を走っている首都高はそのまま海上の吊り橋部につながっていますが、首都高の下を走る一般道路と新交通のゆりかもめは、西側でループを描きながら高度を上げ、吊り橋部に取り付きます。
鉄道と道路が一体的にループになっているのは、全国でもここだけです。
河津七滝ループ橋(静岡県河津町)国道414号の河津七滝ループ橋(画像:写真AC)。
河津七滝ループ橋(七滝高架橋)は静岡県の下田市と沼津市を結ぶ国道414号にあります。
直径80m、ぐるりぐるりと2周回って、高低差45mを稼ぎます。周辺は桜の名所になっており、花見のシーズンはループ橋と桜が織りなす美しい光景が見られます。
1978(昭和53)年、伊豆大島近海地震によりこの周辺で大規模な土砂崩れが発生したことを受け、高低差を稼ぐ新道が建設されることになり、ループ橋が採用されました。
ダムの真ん前にループ!山の中のダイナミックなループ橋もあれば、住宅街のループ橋もあります。
雷電廿六木橋(埼玉県秩父市)雷電廿六木橋(らいでんとどろきばし)は、埼玉県の秩父地方と山梨県をつなぐ国道140号の橋です。

雷電廿六木橋と滝沢ダム(画像:写真AC)。
秩父市中心部から荒川とその支流の中津川をさかのぼった所に滝沢ダムがありますが、このダムの上流側と下流側に生じた約120mもの高低差を稼ぐため、ループが設けられました。「大滝大橋」と「廿六木大橋」の2橋が一つの大きなループを形成しています。
橋は高さ132mに及ぶ滝沢ダムのコンクリート堤体の真正面にあり、麓から見上げても、ダムから見下ろしてもダイナミックな光景です。細身の橋脚が飄々とした印象で美しく、1999(平成11)年にグッドデザイン賞を受賞しています。
桃花橋(山梨県南アルプス市)桃花橋は甲府盆地の西端の山裾を走る農道に架かるループ橋です。
特徴は富士山を間近に眺められること。展望台も設置されていて、夜は道路照明と甲府盆地の街の灯りが織りなす夜景を楽しめます。
田浦「のの字坂」(神奈川県横須賀市)最後に、街なかをぐるっと回るループ道路を紹介します。JR横須賀線の田浦駅から山側へ少し入った所に通称「のの字坂」があります。
歴史は戦前までさかのぼり、防空のため山腹に砲台を設置するための物資輸送を目的に設けられたといいます。ループにかかる橋は、当時は木製でした。
規模は小さいものの、約一周半のループをなす道路です。そのまま山を登っていくと、明治・大正時代の旧国道の難所「十三峠」に通じます。
なお、周囲は住宅地になっていますので、訪問の際は近隣住民の方々に配慮するよう心がけましょう。
【動画】首都高の元祖ぐるぐるランプ降りてみた