取引先の増収増益率 トップは沖縄銀行、2位に琉球銀行
ネット銀行が躍進、GMOあおぞらネット銀行が増加率トップ
全国160万5,166社の“メインバンク”は、三菱UFJ銀行(12万7,264社)が13年連続トップだった。2位は三井住友銀行(10万1,697社)、3位はみずほ銀行(8万840社)で、メガバンク3行が上位を占めた。
2025年1月に青森みちのく銀行、あいち銀行がそれぞれ合併により誕生し、銀行で1万社超えが36行に。
人口減少や地域経済の停滞、さらに金利上昇を背景に、取引先の移動やメインバンク変更など、金融機関の立ち位置にも濃淡が出てきた。取引先の増収増益率では、1位沖縄銀行、2位琉球銀行と沖縄県勢が取引先への支援効果が出ている。取引社数の増加率では、GMOあおぞらネット銀行などネット銀行の存在感が増し、枚方信金(大阪)や滋賀中央信金(滋賀)などの信金勢も健闘し、業態を超えた競争が激化している。
※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベースから2013年-2025年の各3月末のメインバンクを集計、分析した。
※商号変更や統合等は、2025年6月末を採用。メインバンクが複数の場合、最上位行をメインバンクとした。
※ 統合した金融機関の統合前の社数は単純に合算し、順位は合算後の順位を採用した。
※ 1県1行体制は、経営統合や子会社化、合併の予定も含み、本店所在地を基に集計した。
業態別ランキング 三菱UFJ銀行、京都中央信金、茨城県信組のトップは不動
銀行は、1位の三菱UFJ銀行と2位の三井住友銀行が10万社超え。3位のみずほ銀行も8万840社とメガバンクが他の追随を許さず圧倒。
信用金庫は、トップの京都中央信金が9,000社超え。2位の大阪シティ信金、3位の多摩信金、4位の尼崎信金はともに大幅に社数を増やした。
信用組合は、茨城県信組(3,156社)の強さが光る。2位の広島市信組は3.7%増の1,435社。3位は長野県信組(1,233社)が4位からランクアップ。4位は逆転を許した新潟縣信組(1,190社)。5位の大分県信組(1,154社)、6位の山梨県民信組(1,120社)も僅差で続いている。
都道府県別シェア ≪東日本≫
【北海道】全国5位の北洋銀行(シェア37.9%)がシェアを伸ばしトップ。2位の北海道銀行(同15.9%)は、北陸銀行と「ほくほくFG」を形成。3位の北海道信金(同5.7%)、4位旭川信金(同4.1%)、5位帯広信金(同3.5%)と信金も強い。6位は「ほくほくFG」の北陸銀行。
【東北】青森は、2025年1月に誕生した「青森みちのく銀行」が1県1行で1万2,432社(同71.5%)と7割超え。岩手は、秋田銀行と包括業務提携の岩手銀行(同45.4%)が半数近くを占める。2位東北銀行(同16.8%)、3位北日本銀行(同16.0%)は激烈な競争を続け、3行体制が継続。宮城は、1万社超えの七十七銀行(同56.9%)が圧倒的なシェアを占める。2位は山形のきらやか銀行と「じもとHD」形成の仙台銀行(同13.2%)。秋田は、1位の秋田銀行(同54.5%)、2位に「フィデアHD」の北都銀行(同29.5%)も一定のシェア維持。山形は、山形銀行(同37.4%)がトップで、2位「じもとHD」のきらやか銀行(同23.9%)はシェア減が続く。3位の荘内銀行(同18.3%)と北都銀行が合併し「フィデア銀行」へ。福島は、1万社超の東邦銀行(同41.0%)が強い。2位に大東銀行(同9.3%)、3位はSBIHD提携の福島銀行(同8.6%)で、県内3行体制。
【北関東】茨城は、足利銀行と「めぶきFG」形成の常陽銀行(同48.1%)が1万社超で50%近いシェア確保。
【首都圏】 埼玉は、2万社に迫るりそなHDの埼玉りそな銀行(同28.4%)がトップ。2位は千葉銀とアライアンスを締結している武蔵野銀行(同12.0%)。千葉は、2万社超の千葉銀行(同41.1%)が圧倒、3位の千葉興業銀行(同8.3%)と経営統合で調整。統合が実現すると単純合計で2万7,160社(同49.4%)と過半に迫る。2位は京葉銀行(同14.1%)。東京は、三菱UFJ銀行(同22.7%)、みずほ銀行(同20.5%)、3位の三井住友銀行(同17.6%)はいずれもシェア微減。神奈川は、横浜銀行(同21.8%)が2万社に迫るが、シェアは21.8%とメガバンク、信金との競争激しい。横浜銀行は、東京14位の東日本銀行と神奈川15位の神奈川銀行で「コンコルディアFG(横浜FGに変更予定)」を形成し、グループでは1県1行体制。
【甲信越】新潟は、2万社に近づく「第四北越FG」の第四北越銀行(同59.8%)がシェア約6割で、群馬銀行と統合へ協議。2位にSBIHD提携の大光銀行(同11.5%)。山梨は、1万社に届かないが1県1行の山梨中央銀行(同57.1%)がトップ。長野は、1位の八十二銀行(同56.6%)が2位の長野銀行(同7.7%)と2026年1月に合併し、「八十二長野銀行」で1県1行体制へ。シェアは64.4%に。
【中部】岐阜は、1位の十六銀行(同33.6%)と2位の大垣共立銀行(同20.6%)が鎬を削る。静岡は、2万社が目前の「しずおかFG」の静岡銀行(同39.3%)がトップ。2位に浜松磐田信金(同10.6%)、3位しずおか焼津信金(同7.0%)など、統合が進む信金が続く。愛知は、1位は三菱UFJ銀行(同22.9%)。2位に統合したあいち銀行(同12.1%)が1万社超え、3位の名古屋銀行(同10.7%)は1万社が目前。三重は、百五銀行(同45.1%)、三十三銀行(同27.5%)が続く。

都道府県別シェア ≪西日本≫
【北陸】富山は、北海道銀行と「ほくほくFG」の北陸銀行(シェア48.7%)がトップ。2位の富山第一銀行(同13.7%)、3位の富山銀行(同7.6%)が追いかける。
【近畿】滋賀は、滋賀銀行(同60.9%)が独走、1県1行。京都は、1位に1万社超えの「京都FG」京都銀行(同32.5%)。2位は信金トップの京都中央信金(同25.5%)。大阪は、1位の三菱UFJ銀行(同19.2%)、2位の三井住友銀行(同18.7%)がともにシェア減で僅差。3位のりそな銀行(同12.7%)と4位の関西みらい銀行(同9.8%)の「りそなHD」も強い。兵庫は、トップに三井住友銀行(同21.6%)、2位に「りそなHD」のみなと銀行(同12.5%)。奈良の南都銀行(同59.6%)、和歌山の紀陽銀行(同62.2%)は1万社弱ながらシェアが約6割。ともに1県1行。
【中国】鳥取と島根は、山陰合同銀行が鳥取48.3%、島根66.9%でシェアトップ。
【四国】徳島は、阿波銀行(同55.8%)がトップ。2位の「トモニHD」の徳島大正銀行(同21.2%)のシェアがジワリ上昇。香川は、1位の百十四銀行(同47.9%)、2位が「トモニHD」の香川銀行(同18.3%)。愛媛は、四国唯一の1万社超の「いよぎんHD」伊予銀行(同57.5%)が盤石。2位の愛媛銀行(同18.5%)がシェア伸ばす。高知は、1位の四国銀行(同51.5%)、2位の高知銀行(同29.0%)の競争続く。伊予銀行、百十四銀行、阿波銀行、四国銀行は「四国アライアンス」を組み、四国創生などで連携中。
【九州・沖縄】激戦の福岡の1位は、「ふくおかFG」の福岡銀行(同37.1%)で、2位「西日本FHD」の西日本シティ銀行(同32.5%)がともにシェアアップ。3位福岡ひびき信金(同4.0%)、4位にSBIHDと提携の筑邦銀行(同3.6%)、5位は「ふくおかFG」の福岡中央銀行(同2.8%)。6位にランクアップの佐賀銀行(2.3%)と7位の「山口FG」の北九州銀行(同2.3%)は接戦。
佐賀は、佐賀銀行(同57.2%)が高シェア。2位に佐賀共栄銀行(同7.4%)。長崎は、「ふくおかFG」で1万社超の十八親和銀行(同82.8%)がシェア全国トップ。2位の長崎銀行(同3.2%)は「西日本FHD」。熊本は、1万社超の肥後銀行(同57.9%)は、鹿児島銀行と「九州FG」を形成。2位に「ふくおかFG」の熊本銀行(同20.7%)。大分は、大分銀行(同51.4%)がトップ。2位に豊和銀行(同11.9%)。宮崎は、宮崎銀行(同60.1%)が高シェアを持続。2位は宮崎太陽銀行(同13.9%)が続く。鹿児島は、トップは「九州FG」で1万社超の鹿児島銀行(同53.3%)が強い。2位に鹿児島相互信金(同12.1%)、3位に南日本銀行(同11.0%)。沖縄は、琉球銀行(同41.7%)と2位「おきなわFG」の沖縄銀行(同38.8%)が高シェアで競る。取引先の増収増益ランキングは1位沖縄銀行、2位琉球銀行で、取引先支援の効果も出ている。3位は沖縄海邦銀行(同12.8%)、4位にコザ信金(同2.7%)が続く。

取引先企業の増収増益率ランキング 1位沖縄銀行、2位琉球銀行、3位北國銀行
メインバンク別に、取引先企業(2024年1-12月期)の売上高、最終利益を対象とした増収増益率を算出した。
取引企業の増収増益率トップは、「おきなわFG」の沖縄銀行の39.3%。取引先の約4割が増収増益だった沖縄銀行は、「金融をコアとする総合サービスグループとして、お客さまの成長支援や販路拡大支援を図っており、資金需要へのスピーディな対応に加えて、各種コンサルティングやビジネスマッチング、事業承継/M&A等の提案を強化している」とコメント。様々な支援や提案で取引先の成長につなげている。
2位は同じ沖縄県の琉球銀行(39.0%)が続く。琉球銀行は、「コロナ期間中に資金供給だけに留まらない資金繰り支援を積極的に行い、取引先の業況が円滑に回復したこと、また、事業承継(第三者承継)コンサルティング業務を中心とした多岐にわたるソリューションを取引先に提供し、事業継続および成長をサポートしたことが奏功したのではないか」と分析した。
3位は、3年連続で3位内のランキング常連の北國銀行(構成比38.3%)。「事業性理解(お客さまの事業内容を深く理解する取組み)とコミュニケーションを重視した営業活動によりお客さまと課題を共有し、北國FHDが提供する様々なソリューションを通じて、解決サポートした結果と考えている。引続き、この取組みを継続・進化させていくことで、お客さま及び地域の持続的な成長に繋げていきたい」とコメントした。

倒産企業のメインバンク調査
各年度(4-3月)に倒産した企業(負債1,000万円以上)のメインバンク(判明分)を分析した。
業態別では、最多は取引社数が多い地方銀行が1,879社(構成比36.1%)。次いで、信用金庫1,458社(同28.0%)、都市銀行1,049社(同20.1%)、第二地銀564社(同10.8%)、信用組合154社(同2.9%)だった。取引社数の多い業態が当然、上位に入った。
業態別メインバンクの取引社数を分母にして、2024年度の倒産企業数を除した「倒産比率」(その他除く)は、信用組合の0.44%が最も高かった。次いで、信用金庫の0.40%、第二地銀の0.36%、地方銀行の0.29%、都市銀行の0.28%だった。
倒産比率は、小・零細企業との取引が多い信用組合や信用金庫の倒産比率が高くなる。だが、数値だけで倒産の多寡を論じるのは早計だ。コロナ禍を経て、窮境状態の企業との取引も少なくないなか、倒産比率が0.4%台に抑えられている点も注目したい。
メイン企業数の増加率ランキング
メインバンクの取引社数(500社以上)を前年と比較した増加率ランキングを作成した。
1位は、2年連続トップのGMOあおぞらネット銀行が倍増で、断トツの増加率を持続。2位はNTTドコモが買収を発表した住信SBIネット銀行(51.1%増)、3位にPayPay銀行(18.6%増)、4位に楽天銀行(16.9%増)。GMOあおぞらネット銀行など、ネット銀行の快進撃が続いている。
5位以降、信金、信組のランクインが目立つ。5位は枚方信金(9.5%増)、6位に滋賀中央信金(7.56%増)、7位に大阪商工信金(7.51%増)、8位に大阪信金(7.4%増)、9位に永和信金(7.3%増)、10位に空知信金(5.7%増)など。
地方銀行では、20位に池田泉州銀行(4.3%増)が前年45位から大幅にランクアップした。
