多彩な魚種に出会える好釣り場の三重県・尾鷲湾。このエリアの冬の風物詩がメタルスッテを使用してヤリイカ、アカイカ(ケンサキイカ)、スルメイカを狙う「メタルスッテゲーム」だ。
(アイキャッチ画像提供:週刊つりニュース中部版APC・橋本広基)
尾鷲湾のメタルスッテゲーム
尾鷲湾は三重県の南部に位置し、山水が流れ込むミネラル豊富な水質に加え、水深があり潮通しが良いため多彩な魚種に出会える好釣り場だ。また、寒風厳しい真冬の季節でも、自然豊かな山々が北風をブロックしてくれるため、穏やかな海で釣りを楽しめる。そんな釣り人にとって、パラダイスともいえるエリアで、私が四季を通じてお世話になっているのが、三重県・紀北町引本浦から出船しているエヌテックマリンだ。
笑顔が素敵な船長のガイド船や乗合船だけでなく、レンタルボートのラインナップも非常に豊富なため、遊び方のアレンジは無限大。四季折々の魚やイカをルアーゲームやエサ釣りで楽しめる。
夜釣りでイカを狙う
そんなエヌテックマリンで、私が冬の訪れを待ち焦がれて楽しみにしているのが、メタルスッテゲームだ。このエリアの冬の風物詩ともいえるこの釣りは、LEDライトを照らした夜釣りがメインとなり、メタルスッテと呼ばれる日本古来の漁具をアレンジしたルアーでヤリイカ、アカイカ(ケンサキイカ)、スルメイカを狙う。
潮の速さが重要
そんな冬のイカ御三家を求めて、1月17日の夕方から出船。ポイントまでは20分程度で到着し、当日は風も非常に穏やかで冬の夜釣りとは思えないほど穏やかな状況であった。日も傾き始め、まずは仕掛けを投入し潮の流れをチェックする。
メタルスッテゲームにおいて潮流の強さは非常に重要で、ライトの明かりでイカのエサとなる小魚を寄せるため、潮の流れが速すぎると遊泳力の弱い小魚はその場にとどまることが難しくなる。
また、捕食する側のイカにも同様のことが言えるため、捕食行動がうまく行えずアタリはあるけど、ハリ掛かりしないなどのミスバイトが多発する要因となってしまう。
30号のスッテで開始
ポイントの水深は40m前後。まずはメタルスッテの15号からスタート。海中へ入れるやいなや、ビューーンッと船尾方向に流されていく。
開始から1時間。ライトの明かりが海面を煌々(こうこう)と照らし、そろそろアタリがあってもいい時間。
メタルスッテの誘いのコツ
特に私の師匠? 勝手に私が思っているだけかもしれないが、中井船長との釣り談義は非常に勉強になることが多い。
今回もイカの生態を理解した上でのアプローチ法には、非常に興味深いものがあった。それというのも、イカは優れた眼を持っており、視力が高いということは有名な話だが、どの方向が見やすいのかという話はあまり聞いたことがない。
私たち人間であれば、もちろん正面が見やすいわけだが、イカ類は足側の水平よりやや下方向が一番見えやすいということが、学術的に証明されている話を教えてくれた。
これらのことからメタルスッテゲームにおける誘いのアプローチでは、下から上方向へと誘い上げる場合、必ずアプローチの頂点で止めるのではなく、再度下方向へとフォールアクションなどで戻し、そのタイミングでイカをヒットへと持ち込む意識を大切にすることで釣果が大幅に変わってくるということだった。
ファーストヒットはビッグなスルメ
そんなイカ談義に夢中になっていると、速かった潮流もやや収まり同船者に大型のスルメイカがヒット。私の集中力も一気に高まる。仕掛けは2段仕掛けのショートタイプ。上側には速い潮流でも、シンカーが舵の役割をしてくれ、動きが安定するエギタイプ。鉛スッテも15号程度で仕掛けが流されずナジむようになってきた。
すると、ランテンションがフッと抜けたり、フォールが止まった際にガツンッとティップをたたくような明確なアタリが連発。ロッドは大きく弧を描き、スルメイカのダブルヒットでは、上腕二頭筋が悲鳴を上げるほどの強烈な引きだ。
ヒットレンジは10~20mが中心。
スルメの次はアカイカを狙う
もうスルメイカはお腹いっぱい。お次は柔らかい身が超美味なアカイカを狙うため、水深の中層から底付近まで広範囲を探っていく。その際、水深方向を手返し良く探るコツとしては、枝間の長さとリールの1回転当たりの巻き取り量を頭に入れておくこと。
仮に二段仕掛け間の長さが1mであれば、30mから29m、29mから28mといったようにブロックを積み上げていくようなイメージではなく、探り終わった後は、リールハンドルを3~4回転させ、30mから29m、28mから27mといった感じで探ったレンジがかぶらないことを意識し、階段を下りるようなイメージで探っていく。
するとアカイカ特有のコツンッ、モゾッといった繊細なアタリが連発。アタリを待つ際は、波の周期や揺れも感じ取る。ティップの入り方に違和感があったときは、アタリと判断し必ずアワセを入れるようにしていた。
またイカの反応があった水深では、時間をかけて複数回誘いを入れることで、グウンッという締め込むような明確なアタリが誘発され、ペットボトルサイズ近い良型のキャッチにも成功した。
貴重なヤリイカも登場
そして、圧巻は底付近を丹念に探っていた中井船長。この時期の高級イカの代表格であるヤリイカをキャッチ。このようにメタルスッテでは、イカの生態を理解し誘うレンジを絞ることで、ある程度の釣り分けが可能となる。
大まかには上層でスルメ、中層でアカイカ、底付近でヤリイカとなり、狙って釣るといった醍醐味も楽しみのひとつだ。
バチコンではギガアジも
そして、冬のイカ御三家もそろい踏みとなり大満足だったが、誰が言ったか「イカが落ち着いたらアジを釣れ!」。イカの反応が落ち着いた際には、アジを狙うといった楽しみもある。早速仕掛けの上段にメタルスッテ、下段に1gのジグヘッドに2インチのワームを装着。イカもアジも狙える欲張り仕掛けだ。
アジの反応が底付近に映るということで、着底後は少し底を切ってからロッドを持ち上げてからのテンションフォール。するとその1投目。カチンッといった金属的なバイトから、ロッドが締め込まれる。グイグイと締め込む引きは「本当にアジか?」と思わせるほどの強い。そして、海面へと上がってきた姿を見てビックリ。なんと45cmに迫る超ビッグなギガアジだ。あらためてこの海域のポテンシャルに驚かされるモンスターだった。
サバ対策の方法
しかし、その後はサバの大群に大苦戦。海面付近でサバが次々とヒットし、なかなか底までルアーが落ちていかない。そこで、そんなときの対処法として、ルアーを沈めていく沈下速度を遅くした。ついついサバの猛攻を避けるため、ルアーの沈下速度を上げてしまいたくなるが、ルアーの動きが速いことでリアクション的なバイトを誘発してしまい、逆効果になることが多い。
今回もその効果は的面でサバゾーンを通過。欲張り仕掛けの本領が発揮され、良型のアジに加えアカイカも追加。まだまだ釣れ続ける状況だったが、楽しい時間は早いもので11時に納竿とした。
今後は水温が下がってくることで、ヤリイカの数釣りも期待でき、個人的には春先の大型スルメイカの猛ラッシュも非常に楽しみにしている。尾鷲湾のメタルスッテシーズンはこれからが最盛期だ。
広い視野とメンタルが重要
最後に毎回感じることではあるが、今回の釣行でもメタルスッテゲームで釣果を伸ばすためには、周りを見る広い視野とメンタルも重要だと感じている。刻々と変わるヒットレンジや選り好みをするイカたちとの知恵比べは、時にアタリが途絶え、何をしても釣れないといった迷走に入るときもある。そんな時は「なんで釣れない?」、「どうして?どうして?」と焦るのではなく、ひと呼吸置いて周りの人のヒットカラーや誘い方、ルアーを変えてみるなどで、考え方を整理することも良いと感じている。
いつも新しい発見や学びが多いメタルスッテゲーム。手軽に楽しめるが、このようなテクニカルな部分がどっぷりとこのゲームのトリコになる部分だろう。
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<週刊つりニュース中部版APC・橋本広基/TSURINEWS編>
▼この釣り船についてエヌテックマリン
この記事は『週刊つりニュース中部版』2023年2月10日号に掲載された記事を再編集したものになります。The post 夜釣りで3種類のイカを狙う『メタルスッテゲーム』を徹底解説 first appeared on TSURINEWS.