どの釣り物にも、人と競う大会的なものがあると思うが、今回紹介するアジングカップは一味違う。釣果や順位を競うこと以上に、人と出会い、つながり、刺激を受けることに魅力がある。
(アイキャッチ画像提供:TSURINEWSライター・刀根秀行)
空気感に魅せられるアジング大会
今回紹介するのは、アジングのロッドやリグを開発・製造するメーカー『34』が主催するアジング大会だ。今大会の最大の魅力は、ただの競技会ではないという点にある。

見た目はいつもと同じ海。毎年顔ぶれが少しずつ変わるが、変わらない人もいる。釣果を左右するのは魚種なので運の要素も大きく、たとえ最下位の人でも、釣りの内容が深いと感じることがある。
順位は記録に残るが、初心者も常連も、勝者も敗者も、その境目がなくなるような空気感が漂っている。ゆるやかで、温かくて、それでいてちょっと真剣。そんな大会だ。

大会当日の風景
「今日はどんな人が来ているのだろう」「予選はどこで釣りをしようか」――そんな少しの緊張とワクワクを胸に、受付を済ませる。タックルの違い、キャストの所作、他の人のリグ構成など、ついつい気になってしまう。
決勝では、ある人の釣り方に見入ってしまうこともある。「その釣り方、なんだかすごく理にかなっているな」と思ったりする。そんなふうに、人の釣り方やスタンスに“惚れる”瞬間があるのも、この大会ならではの魅力だ。
「比べる」けど否定じゃない
釣れている人を見て焦ることもあるし、自分の釣りが急にかすんで見えることもある。でも、それは考えるきっかけにもなる。
「今度真似してみようかな」
「その視点はなかったな」
そんな気づきが、釣りの幅を広げてくれる。比べることが、悪いことばかりではなく、刺激や学びにつながることもあると思う。

つながりが心に残る
釣果よりも心に残るのは、ちょっと交わした会話だったりする。「また一緒にやりましょう」と笑ってくれた人。隣で「お互い釣れませんね~」と苦笑いしてくれた人。そういう、釣果では測れない時間が、ちゃんと心に残る。人との出会いが、この大会を特別なものにしてくれているのだと思う。
アジングカップに出てみて思うこと
周りに合わせるのは、ある意味「楽」だし、「正解」もある。「こうしておけば間違いないらしい」「誰々が言っていた通りにやればいい」――そんなふうに、形を寄せていくこともできる。そして、他人と比べるのも簡単だ。「あの人よりマシだった」とか、「自分は全然ダメだな」とか。でも、それだけでは少しもったいない。
最初は、誰かの所作を「真似る」だけでもいい。
そういう経験が、自分の“釣り”を厚く形成していくのだと思う。大会に出ることで、そうした感覚に出会えることがあるかもしれない。だからこそ、自分は時々この場所に戻ってくる。
気軽で緩い大会
……って、ポエムかよ!って自分で思った(笑)。まぁ、要は「誰かの釣り方、パクれそうならパクっちゃおう」的な(笑)。気軽で、緩い大会だ。そんなふうに、軽く楽しみながら、自分の釣りを深められたらいいなと思って参加している。
またこの大会に戻ってきたくなる理由
うまくいく日もあれば、そうじゃない日もある。何なら、自分はほとんどうまくいかない派(笑)。でもこの場所は、自分を俯瞰して見られる場所でもある。
ドラグ音と笑い声が交差する、ちょっと不思議で、温かい海。近いうちにアジングカップに出場する予定なので、また誰かと出会えるのが楽しみだ。

<刀根秀行/TSURINEWSライター>