NHKで好評放送中の大河ドラマ「豊臣兄弟!」。戦国時代、主人公・豊臣秀長(=小一郎/仲野太賀)が、兄・秀吉(=藤吉郎/池松壮亮)を支え、兄弟で天下統一を成し遂げるまでの軌跡を描く物語は快調に進行中。

4月19日に放送された第15回「姉川大合戦」では、織田・徳川連合軍と浅井・朝倉連合軍が激突する歴史に名高い“姉川の戦い”が展開。その中で、登場人物それぞれの覚悟が描かれていたことが印象に残った。

 戦いの発端は、朝倉攻略に出陣した織田信長(小栗旬)が、信じていた義弟・浅井長政(中島歩)に裏切られたこと。それにより、金ヶ崎で朝倉軍と浅井軍の挟撃に遭いながらも、長政の妻で妹の市(宮﨑あおい)の報せにより間一髪で難を逃れた信長は、重臣たちの前で「浅井を討ち滅ぼす!」と決意。それを聞き、市の身を案じた小一郎は、「うかつに攻めれば、お市様のお命が危のうなりまする」と再考を促す。だが信長は、「それがどうした」と一蹴すると、「市が浅井を選んだのじゃ。であれば、わしももう容赦はせぬ」と告げる。

 すると小一郎は、金ヶ崎の一件を持ち出し、「きっと、お市様は浅井に残り、いざというときに、また殿をお助けしようとお考えなのでござりましょう!」と食い下がり、浅井との和睦を進言。それでも信長は、撤退中に六角氏との戦で負傷した明智光秀(要潤)を引き合いに出し、「今ここで和睦など持ち掛ければ、浅井に屈したも同じこと。六角のような輩が、次々と現れよう。わしの言葉は力をなくし、誰も従う者などいなくなる。夢の終わりじゃ」と告げ、「世に知らしめるのじゃ。

われらを裏切った者の末路は、地獄であると」と宣言する。

 信長らしい猛々しい言葉だが、その端々には市を犠牲にしなければならないつらさがにじんでいた。それは同時に、そこまでしても自らの信じる道を進まねばならぬという戦国大名としての信長の覚悟の表れであり、それを伝える小栗の熱演も相変わらず見事だった。

 一方の市も、夫の長政に金ヶ崎の件を打ち明けようとするが、長政から「言うな。ほかの者に知れたら、そなたの命はない」と制止され、間者と疑われた家臣が身代わりに命を落とすことに。その様子を見た長政は、「もう後戻りはできぬ」と市にささやく。

 こうして双方覚悟の下、姉川の戦いが幕を開ける。そして、この戦に臨むにあたってもう一人、覚悟を迫られたのが、徳川家康(松下洸平)だ。信長から参陣を求める書状を受け取った家康は「もしも、わしが間に合わなかったら、織田殿はどうなるかの?」と側近の石川和正(迫田孝也)に問う。和正が「われらなしに、織田勢が勝つのは難しいかと」と答えると、「そういうことを、織田殿にも少しはわかってもらいたいものよの」と不満気に語り、遅れて参陣する。言ってみれば、信長をなめていたわけだ。ところが、信長との対面の場で家臣たちに取り囲まれた途端、殺されるかと恐れおののき、「二度とこのようなことは致しませぬ!」と平伏。

覚悟を決めて臨んだ合戦では、信長の命に従い、勝利に貢献する。

 こうして幕を開けた合戦で、最後に覚悟を決めたのが、主人公の小一郎だ。藤吉郎と共に、市を救うためにさまざまな手を考えたものの、奏功せず、やむなく戦場へ。乱戦の中、危機に陥った藤吉郎を救うため、敵兵を背後から斬り捨てた小一郎は「うおー!」と雄たけびを上げる。この場面、SNSでも「小一郎がついに人を斬った」と話題になった通り、戦国武将として後戻りのできない覚悟を示すシーンだった。

 信長、市、長政、家康、そして小一郎。それぞれの覚悟が示された姉川の戦い。その姿からは、血縁や親しい相手であっても、時には斬り捨てねばならない戦国の世の過酷さがひしひしと伝わってきた。この回のラスト、藤吉郎と共に戦闘終結後の死屍(しし)累々横たわる戦場の有様を眺めながら「ここは地獄じゃ」と呟いた小一郎は、これからどんな道を歩むのか。合戦に入る前、藤吉郎が掛けた「小一郎、今ここからは、生き延びるために戦うのじゃ」という言葉が、この合戦だけでなく、今後の小一郎の生き様を暗示しているようにも思える。覚悟を決めた登場人物それぞれの転機となるような回だった。

(井上健一)

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