今シーズン最初のタイトルでもある真夏の決戦・なでしこリーグカップ決勝は日テレ・ベレーザがINAC神戸レオネッサを延長戦の末、3-1で退けて2連覇を達成した。
とはいえ、このタイトル獲得には女王・ベレーザは相当苦しんだ。
強いチームにいても奢ることなく上を見続ける籾木結花
当然と言えば当然だった。FIFA女子ワールドカップに出場するなでしこジャパンに、ベレーザはケガで離脱した植木理子を含めて10名の主軸を5月下旬から送り出していた。さらにケガ人を抱えるなか、下部組織であるメニーナから高校生、中学生まで引き上げてほとんどの試合に臨んでいた。
そこで奮闘したのが、代表を外れた有吉佐織、田中美南の2人に、守備の要である岩清水梓ら経験値の高い選手たちだった。日々の練習ですら人数が不足してしまい、14、15人で回さなければならない。1試合1試合、取り組むべき課題を明確にしてチームを成長させていき、ようやく若手がフィットし始めた頃、ワールドカップをベスト16で終えた代表組が戻ってきた。それでも、状況が急に好転する訳ではなかった。
「(ワールドカップは)精神的にもタフ(な戦い)で、さらに結果も出なかったことで選手にはいろんな思いもあったでしょう。
指揮官の目にも代表組の心身の疲弊は明らかだったため、まずはコンディションを上げることに尽力した。そして、若い選手たちが奮闘した流れを途絶えさせずにつないだ結果の決勝進出だった。
決勝では、INACの徹底した守備に苦しめられ、先制点を奪われながらも、「あの1点は大きかった」と敵である鈴木俊監督をうならせたゴールは奪ったのは有吉。そして、試合を決めたのは延長後半の田中の2発だった。この2人のゴールには、当人の意地とプライドが詰まっていたが、それ以上にメニーナの選手たちへの想いが込められていたように感じた。
優勝を決めたあと、サポーターの前で、ベレーザの選手全員で写真に納まろうとしている姿をピッチ脇でメニーナの選手たちが笑顔で見つめていた。それに気づいた岩清水らが彼女たちを呼び寄せた。この優勝は、メニーナの選手たちの努力がなければ成し得なかった。全員でつかんだタイトルだと、写真に納まる選手たちの笑顔が物語っていた。
苦しみながらも獲得した一冠に、喜びとともに課題を口にしたのは籾木結花だ。なかなかパスを受けることができない時間帯が多かった。
「前半にたくさんチャンスがあったので、そこで決めきれるかどうか。この間のワールドカップもそうですし、そこが勝敗を分ける。それができれば、勝利を確実に、より簡単に手に取れるはずなので、まだまだ足りないところだと思います」
ワールドカップでは、ケガのため、わずかな時間しかピッチに立つことができなかった籾木。ラウンド16のオランダ戦では、ゴールが欲しい時間帯に出場のチャンスを得たが、訪れたビッグチャンスをモノにできなかったことを、帰国後も思い出すという。
世界大会での悔しさを跳ね返すために、海外移籍を視野に入れる選手は少なくないが、ベレーザの選手たちはそうした考えを持ち合わせていない。
「スコアの状況とか試合の流れによって相手の出方も変わる。そこに対応しながら自分たちのポジショニングひとつで相手のプレスを無効化したり、すぐに攻守が切り替えられるポジショニングを、いろんな相手がいる中で、すべてに対応できるようになりたい」(籾木)。
ワールドカップで多くの強豪国が採用していたように、アンカーを置いて常に流動的なポジショニングを取り、守備から攻撃まで一筆書きのようにパスが流れる。昨年から取り組み始めたベレーザのサッカーが完成されれば、世界トップに比肩するスタイルになる。
「ベレーザが今取り組んでいるサッカーを高めていけたら、最終的に世界の相手とも十分に渡り合える自信があるんです。その可能性が見えているからこそ、今ここ(ベレーザのサッカー)を突き詰めたい」と迷いなく籾木は答えた。
ここからなでしこリーグは中断期間に入る。取り組むべきプレーのイメージは、すでに永田監督から選手たちに伝えられている。しっかりとリフレッシュしたあと、8月31日に再開されるリーグ戦で、次のステップへ挑戦するベレーザを見ることができそうだ。