Jリーグクライマックス

ペナルティ ワッキー インタビュー 前編

お笑い芸人のペナルティ ワッキーさんが自身のSNSで発信している「Jリーグモノマネシリーズ」が盛り上がっている。モノマネされた選手たちもノリよく反応し、サッカーファンから、サッカー界の外まで広がりつつあるようだ。

本人にモノマネを始めたきっかけや狙い、裏話などを聞いた。
※選手の所属は2021年シーズン終了時点

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ペナルティ ワッキーの「Jリーグモノマネ」がバズり中。「神が...の画像はこちら >>

長友佑都のモノマネをするペナルティ ワッキーさん(本人Twitterより)

【何気なくやってみた福森晃斗選手がきっかけ】

――まずはJリーグのモノマネを始めたきっかけを教えてください。

「TwitterやInstagramを全然アップしていなくて、なんかあげなきゃなと思っていたんです。やるならサッカーのことを、と思ったので、ただのリフティングの動画をあげたんですよ。"おじさんリフティング"みたいな形だったんですが、みんな食いついてくれたんですよね。

 だからまたちょっと違う技を撮りに行こうと思って、うちの子どもと公園に行って、遊びながらいろいろ撮ったんです。

そのなかで、僕が北海道コンサドーレ札幌の福森晃斗選手が大好きなので、彼が普段やっているルーティーンをなにげなくモノマネしてみたのを撮ってもらって見たら、なかなか似ていて。

 それで『これアップしちゃおう』と思ったのが最初ですね。それから自分が特徴的だと思っている選手をあげていくようになりました」

――福森選手をあげた時はどんな反応がありましたか?

「いろいろな方から似ているって反応をいただきました。Jリーガーたちからも多かったです。福森選手はFKを蹴る前に左足を右足でこするんです。多分蹴るほうの足のボールが接する部分を拭いているんだと思います。

宇賀神友弥選手(浦和レッズ)がそれを見て『そこが気になっていたんですよ』ってコメントくれました。福森選手本人からも『福森公認で!』ってレスをもらえたんですね。仲のいいJリーガーが結構反応してくれて、それがすごく楽しくなっちゃいましたね」

――多くの反響がありますが、印象に残っているものはありますか?

「レフェリーの村上伸次さんの、バニシングスプレーを使うモノマネをした時ですね。多くの審判の方はボール側のほうの地点を線で描くんですが、村上さんは短くシュッと点だけなんですよ。それが個人的につぼでマネしたんです。

 そうしたら村上さんから、『実は理由があるんです』と丁寧な反応をいただきました。

『キッカーによっては、半円を描くのを嫌がるキッカーがいるんです』と。泡がスパイクについてしまうとか、邪魔だとか思う選手もいるらしいんです。そこで、点だったら嫌がる選手もいない。蹴る場所がわかればいいだけだから、本来点だけでいいんですよね。理にかなっている。決してスプレーをケチってるわけではないんですよと(笑)。
選手にそこまで気を使っている名審判ですよね」

――他にはどんな反応がありましたか?

「都倉賢選手(V・ファーレン長崎)からの反応はうれしかったな~(※試合中の給水で、飲んだ水より多く吐き出すモノマネをした)。本人から『似ています』とレスが来て、水を吐き出す理由を教えてくれました。都倉選手はお腹が弱くていっきに冷たい水を飲めないと。ただ『次からは水をもっと大切にします』と(笑)」

――意外な真実が顕わになりますね。

「若手の選手たちのモノマネをすると、本人からの反応をいただける割合が多くなりますね。三笘薫選手(サン=ジロワーズ)のドリブルもやったんですが、おじさんがあんなドリブルできるわけないんですよ(笑)。

だから、基本的なイン&アウトのドリブルをやって、体の姿勢を似せるみたいな形にしたんですね。最後は『無理』って締めたんですけど、それに対して三笘選手本人から『似ています』ってレスが来たのはうれしかったですね」

【カズのモノマネはお蔵入りに】

――お笑いという部分もあるかもしれませんが、プロだけじゃなく実際にサッカーをやっている人たちの反応がいいですよね。サッカーの技術の本質的な部分を捉えているからこそだと思います。

「全く似てないモノマネの羅列だったら、あそこまでいろんな人が反応はしてくれないかもですね。僕はある意味ふざけているところもあるので。一番気をつけているのはそこの割合です。

やっぱり僕は芸人なので、やればやるほど欲しがって笑いに走ってしまうんですよ。本格的なモノマネとチョケる割合で、チョケる割合が超えてこないようにしています。まあ、たまに全編ボケているみたいなのもあるんですが、それは今までの蓄積があってちゃんとやってきた部分もあるから、許してもらっているのかなと。

 技術的なものは、キックのフォームなどは自分もサッカーをやっていたので培ってきたものがあります。『あ、サッカーやっている人だな』とわかる人にはわかってもらえるんじゃないでしょうか」

――難しくて撮り直したモノマネとかはあるんですか?

「実はお蔵入りがあって、カズさん(三浦知良)のモノマネです。カズさんのシザースがどうしてもあの速さのようにできなくて。まあ、当たり前ですよね。やればやるほど疲れてきてどんどん遅くなっちゃったんですよね。構成はシザースからのシュート、ゴールイン、カズダンスという王道の流れをやったんですが、あまりにも酷くてお蔵になっちゃいました」

――個人的には長友佑都選手(FC東京)のモノマネがめちゃくちゃ似ていると思いました。

「おおーわかってくれますか! あれすごく似てますよね! (相手ボールを)突く時の長友選手。神がかり的に似ているというのは、大体一発撮りなんですよね。しかも資料VTRみたいなのも見ていないでやっています。もう何回も見てきているので、頭のなかにすでにあるんですよね。だから自然と体が動く。

 それで言うと藤春廣輝選手(ガンバ大阪)のモノマネもそうですね。自分の頭のなかにあるものだけでやったものです。藤春選手は走り方が特徴的なだけでなく、クロスのシーンで手が"ゴチャ"ってなる時があるんですよ。そのイメージがずっと頭のなかにあって、一発目にやったのを見たら『おお!藤春じゃん』ってなりました(笑)。この2本は神が降りましたね。自分がずっとJリーグを見ている蓄積も大きいかもです」

【Jリーグに恩返しがしたい】

――監督シリーズは笑えるのが多いですよね。ミシャ(ミハイロ)・ペトロヴィッチ監督(札幌)が好きです。あれはタイトルも気に入っています。『アラノ時々ヒロキ』というタイトルです。

「あれもうれしかったのが、コーチ&通訳の杉浦大輔さんがすぐミシャに見せてくれたらしいんですよ。そうしたらミシャが大爆笑してくれたみたいで。あれは最後に宇賀神選手を見つけて『ウガ!』って言うんですよね。札幌対浦和の設定です。個人的には宇賀神選手がツボなんですよね。"ウガ"という存在そのものが好き(笑)。だからモノマネシリーズのなかには、ウガがちょいちょい出てくるんです。

 監督シリーズではミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(前清水エスパルス)が評判よかったですね。ただ頭を掻いているだけなんですけど。あれはやっていても気持ちよかった」

――やっぱりワッキーさんは表情が似ていますよね。顔芸というか。

「顔芸は一番の本業ですから(笑)」

――今後のJリーグモノマネシリーズはどんな展開が待っているんでしょうか?

「うれしいことに片野坂知宏監督のモノマネをやったことで、大分の試合に呼んでもらったんですよ。降格が決まっちゃったあとですが、逆に盛り上げようと思いました。そういうふうにモノマネをした選手や監督のいるチームに呼んでもらえると、自分のなかでは気持ちよさがありますね。

 最後に真面目な話ですが、そもそもJリーグに恩返しをしたい思いがあってモノマネシリーズを始めたんですね。

 癌で入院している時にJリーグを見て勇気をもらったし、Jリーガーからいっぱいメッセージをもらったので。特に槙野智章選手(浦和レッズ)を中心にVTRを作ってくれたんですよ。本当にいっぱいの勇気をもらったんで、これは自分の一生をかけて恩返ししたいという気持ちがあります。

 Jリーグを盛り上げるためには、Jリーグを見てくれる人の幅というか、量というか、それらが増えるのが大事で、興味のない人が『Jリーグっておもしろそうだね』ってなってほしい。コメントでもそういう方が何人かいるんですね。『こんな面白そうだったらJリーグ見ようかな』とか、『この選手見に行ってみたい』とか、そういうことを言ってくれる人がいるので、自分がやっていることに意味があるんだなと思えています。それは本当にうれしい。

 あとは新シリーズのサッカー大好きおじさんの『今日のよっぱさん』もみなさんよろしくお願いいたします。僕自身あんまり怒るキャラじゃないんですが、普段Jリーグに思っていることを、よっぱさんのせいにしていろいろ愚痴を言わせたいなと。クレームが来ても『酔ってるんで勘弁してください』ってことにしようかと(笑)」
(後編につづく>>)

ペナルティ ワッキー
1972年7月5日生まれ。北海道出身。吉本興業所属のお笑い芸人。1994年に高校・大学の先輩であるヒデとお笑いコンビ「ペナルティ」を結成。濃いキャラクターやギャグで人気を博し、様々なメディアで活躍中。サッカーは名門・市立船橋高校出身で全国高校サッカー選手権に出場した。
SNSアカウントは、Twitter:@wakitayasuhito/Instagram:@japan_wacky