コロナ禍においてでも、東京五輪・パラリンピックなどで盛り上がった2021年のスポーツ界。そのなかでも、スポルティーバはさまざまな記事を掲載。

今年、反響の大きかった人気記事を再公開します(2021年9月17日配信)。

※記事は配信日時当時の内容になります。

立浪和義インタビュー 後編
注目の若手野手と阪神・佐藤のスランプ

■前編:中日に愛あるダメ出し>>

 今シーズンのプロ野球は、各球団とも若手の台頭が目立っている。そのなかで、立浪和義が注目する選手は誰なのか。また、セ・リーグの新人王候補筆頭だった阪神のルーキー、佐藤輝明のスランプについても言及した。

立浪和義が「守備は私より格段に上」と絶賛する新人。阪神・佐藤...の画像はこちら >>

前半戦で大活躍も調子を落とし、現在は二軍で調整する阪神の佐藤

***

――今季もシーズン終盤に入ってきましたが、立浪さんが特に成長を感じる若手の野手はいますか?

パ・リーグの7、8月度の月間MVPを受賞した、ロッテの藤原恭大選手です。
残念ながら現在は(左ふくらはぎの打撲で)選手登録を外れていますが、優勝争いをするチームに勢いをもたらしました。

 彼については、大阪桐蔭時代から『走・攻・守で、選手としてできあがっている』と思って見ていました。特に打撃ではインコースの速いボールを捌けていたので、あとは変化球などに慣れてくれば活躍できるだろうと。苦しい時期もありましたが、3年目にして真価を発揮しているように感じます」

――パ・リーグでは、育成出身のソフトバンク4年目、リチャード選手も台頭してきました。

「お父さんがアメリカ人ということもあってか、パワーはものすごいですね。一方で、日本人選手が得意とするタイミングを合わせる能力も兼ね備えている。
気になる点は、スイング時に肘が体から離れてしまい、バットが遠回りしてしまう点。もう少し肘が体の近くをとおり、グリップからバットを出せるようになると、確率も上がってくると思いますよ」

――ロッテの藤原選手と大阪桐蔭時代の同級生で、やはり開花が待たれる根尾昂選手のことはどう見ていますか? シーズン前のキャンプでは中日の臨時打撃コーチとして、2年目の岡林勇希選手らとともに指導をされていましたが。

「2年目の岡林選手は一軍でのチャンスが少ない(5試合に出場)のに対し、根尾選手はある程度の機会をもらいながら結果がついてきていませんね(67試合に出場し、打率.169)。まだスイングの形ができていないのに、長打を狙い、上を見るような形でバットを振ってしまっています。

 私がキャンプで見た時には、しっかりトップを作ってボールを待ち、ピッチャーの足元に打ち返すことを心がけるように根尾選手に伝えましたが......。ボールを打つ直前に左肘が背中側に入り、バットが出てくるのが遅れる点は直っていないように見えます。



 タイミングがうまく取れていないので、たとえば歩きながらスイングするといった練習を反復して行なうなどして改善していってもらいたいです。確実性を増せば、今のフルスイングできる力がより生きてくる。本人もいろいろ考えていると思いますが、『このままではいけない』と、より強い危機感を持って取り組む必要があると思います」

――守備面で期待している選手はいますか?

「DeNAの森敬斗選手です。脚力を活かした守備範囲の広さ、肩の強さは大きな魅力ですね。私がバンテリンドームで解説を務めた試合では、三遊間に抜けそうな打球を、一歩目の速さとすばらしい送球でアウトにしてしまった。守備については、私の新人時代よりも格段に上ですよ」

――高卒1年目でゴールデングラブ賞を獲得した立浪さん以上の守備となると、相当に期待値が高まりますね。
一方でバッティングはいかがですか?

「ミート力はありそうですが、まだまだこれからです。バントを失敗し、追い込まれて三振してしまうこともあるなど、今はそういった細かい点を徹底的に教える時期だと思います。レギュラーを掴むまでは、ある程度の厳しさも必要。未来のDeNAを背負うことができる選手なので、うまく育てていってほしいです。

 現在のDeNAは、打ち勝つか、打てずに負けるかといった大味な野球になっています。しかし森選手のような選手が増えてくれば、チームの野球が変わってくるでしょう。
プロのピッチャーに慣れるのは実践を積んでいくのが一番です。私個人の考えとしては、少し調子はよくなくても残りの試合で使い続けて来シーズンにつなげてもいいのかな、と思います」

――DeNAは大卒1年目の牧秀悟選手も活躍を続けていますし、楽しみな若手が多いですね。その牧選手、広島の栗林良吏投手とともに、新人王候補に挙げられるのが阪神・佐藤輝明選手ですが、スランプで二軍での調整となりました。

「何年もプロ野球でプレーしているような体格と雰囲気はありますが、出場を続けてきたことによる疲労の色が濃くなっています。春のキャンプでも、すぐに息が上がってしまう印象がありましたし、まだ体力面は追いついていません。どんなにヘバっていても1年間試合に出続けると、シーズンを戦い抜くためのペースを掴むことができるんですが、耐えられませんでしたね」

――成績としては、75年ぶりに新人左バッターの最多本塁打記録を更新するなど、23本塁打を放ってチームを牽引していました。



「成績はすばらしいです。彼のようなアッパースイングは、投手が投げるボールの軌道に点で合わせるようなイメージ。調子がいい時はしっかりボールを捉えることができ、打球も角度よく飛んでいきますが、今はスイングの軌道さえ外せたら抑えられる感じになっています。

 それでも、六番などにいると非常に怖いバッターですから、三振の多さは気にせず、長所である強いスイングを大事にしてほしいです。ゆくゆくは"ミスタータイガース"と呼ばれるような選手に成長していってほしいですね」

――立浪さんから改善点を伝えるとしたら?

「インサイドへの攻めが厳しくなっていますが、それを我慢することが大事です。まずは基本に立ち返って、センター方向に強く打てそうなボールだけを振る、ということを意識してほしいです。インハイの難しいボールまで捌こうとするから、バランスを崩してアウトコースも打てなくなる。ピッチャーは全部インコースに投げてくるわけではないですから、割りきることも必要になります」

――先ほど話に出たアッパースイングについて、立浪さんはどのように考えていますか?

「調子がいい時の佐藤選手や、エンゼルスの大谷(翔平)選手もホームランを量産しているように、打球に角度がつくことで長打が出やすくなることは否定しません。しかしそれは、プロでもトップレベルの速いスイングスピードがあってこそ。特に、まだ体力がない子供たちがマネしてもただの平凡なフライになりますし、ただ空振りが多くなるだけです。

やはり最初に教えるべきなのは『レベルスイング』です。理想は、投手が投げるボールの軌道上にロープを張ったとイメージして、そのやや上かロープに重なるように、軌道と平行にスイングができるようになること。ヤンキースの(デレク・)ジーター選手が、通販番組で紹介していた器具を覚えている人もいるかもしれませんが、イメージはあれに近いですね。レベルスイングを身につけることが、大打者になるための第一歩になるはずです」

■前編:中日に愛あるダメ出し>>