木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第10回

 最近、歳のせいか、寒さが身にしみるようになり、なかなか布団から抜け出せません。そんなことを言っていたら、朝5時ぐらいに起きて支度をするゴルフなんか、とても無理な話ですよね。

 昔は1月、2月の厳冬期でも、月に3~4ラウンドはしていたんですけどね。何しろ毎週、ラウンド報告をする連載をやっていたので、サボることができませんでした。

 それが今や、厳冬期は月に1回、ラウンドするかどうか。それも、老いた体に鞭を打ってのことですから、ひと苦労です。おかげで、結果は予想どおりボロボロです。

 でも、ラウンド後の感想はいつも「やってよかった」というのが正直なところ。

不思議ですよね。

 ではなぜ、冬の寒い時期にゴルフをやると達成感が得られるのか。今回はその理由について考えてみたいと思います。

(1)もともと寒い地方の文化
 ゴルフ発祥の地、スコットランドは寒いです。ある年の全英オープンの中継を見ていると、セーターを着てラウンドしている選手がいました。7月開催ですから、季節は夏。

それを考えると、北海道の高緯度地方ぐらいの気候になるのでしょうか。

 それでいて、スコットランドは雪がさほど降りません。日本の日本海側や北海道みたいに雪が降ってくれれば、ゴルフ場もクローズになって諦めがつくんでしょうけど、聞いた話によると、スコットランドでは根雪にならない限り、冬でもゴルフをやるそうです。それも、ウィスキーの携帯ボトルを持って、それをチビチビやりながらラウンドする人たちですから、筋金入りです。

 そもそもヨーロッパ系の人たちは寒いところが好きなのでしょう。だって、アメリカ大陸に移住した人たちはどこでも好きな土地を選べたのに、「それまで住んでいた気候が好きだから」と、ニューヨーク近辺を好んだと言いますから。

実際、ニューヨークの元の名称はニューアムステルダム。オランダ人が毛皮貿易のために建てた街です。

 少し話は逸れましたが、ゴルフというのは本来、寒い人々が好む遊び。だから、冬にやるのは当然のことで、潜在的にやりがいを感じるのかもしれませんね。

(2)自分との戦い
 ゴルフが寒い地方の人の遊びだった、という前提があるとしても、実際に冬にラウンドするのはどうなんでしょう?

 冬のゴルフは、ボールは飛ばないし、グリーンは固いし、芝は枯れて霜だらけ。加えて、風も強い。

何もいいことがありません。

 けど、その逆境に立ち向かって、今年も無事にラウンドできた――そこに、意義があります。

 個人的なことを言えば、以前は当たり前だった冬のラウンドも、今は誰にも頼まれていません。ですから、休むのも自由です。

 とはいえ、冬のゴルフを一旦休みにすると、それ以降ずっと、冬にゴルフをしなくなってしまうでしょう。人間はラクなほうに進む習性がありますから。

 そうすると、冬場は練習場にも行かなくなって、当然冬の競技はパス。そのうち、歩きのラウンドもパス、距離の長いコースもパス......などと、どんどん自分を甘やかす方向に向かっていきます。

 要するに、冬のゴルフをやめるということは、その"甘え"の第一歩。だから、歳を重ねてからの冬のラウンドは、ある種の達成感、満足感が得られるんでしょうね。

 怠惰なゴルファーにならないためにも、シーズンに一度でいいから冬のラウンドをこなす、というのはオススメです。

【木村和久連載】寒いし、風も強くて苦労ばかり。それでも冬にゴ...の画像はこちら >>

布団からはなかなか抜け出せないものの、自らを甘やかさないためにも冬のゴルフは続けていきたいものです...

(3)冬があるから、人は進化する
 人類の進化は、冬の寒さに耐え、飢えをどうしのぐか創意工夫することによって、大脳が発達したと言われています。
そうして、発酵食品などの保存食を編み出したことで、人類は生き延びてきたのです。

 常夏の南の島は、寒さに耐える必要もなく、そこまで知恵を絞らなければいけない環境にはありません。ゆえに、4大文明は四季(雨季、乾季等の気候変化を含む)のある場所で起きているんですよね。

 同様に冬のゴルフは、最も頭を使わなければいけませんし、真の実力が試されます。

 ボールが上がらないライでどう攻めるか。グリーンが凍っている場合、どれぐらい手前からボールを運んでいけばいいのか。いろいろと考えることが多いですし、多彩な技術が求められます。

 そうしたことにチャレンジし、克服していくことで、人は成長し、進化していくのです。そういう意味でも、冬のゴルフをやる意義は大きいのではないでしょうか。

 だいたい丸一日ゴルフをやって、実際にショットを打つ時間は1時間もありません。残りの時間は同伴競技者のショット待ちと移動です。その間に、いろいろと考えることができます。その時間の使い方で、スコアメイクはどうにでもなるってことです。

(4)冬と夏、どっちが危険か?
 地球温暖化によって、最近は夏のゴルフもどうなのか、という状況になっています。一部では気温が40度近くまで上がって、「日中は外に出ないで」といった注意報が発令されたりしますからね。

 これはもう、ゴルフどころじゃありません。紫外線もキツくて、軽いやけどになる恐れさえあります。特に埼玉や栃木の内陸部はマジで危険な日がありますから、本当に気をつけたほうがいいです。

 じゃあ、冬はどうなのか?

 まず最近の傾向として、夏の気温が高くなると、その反動なのか、冬も寒かったりするので始末におえません。気温とは実に不思議なものです。実際、残暑も厳しかったこの夏、かなり寒い冬を迎えています。寒波襲来が多くて、日本海側では早くから記録的な大雪に見舞われました。

 ともあれ、そもそも冬には極寒の雪山などで行なわれるウインタースポーツがあります。その過酷さに比べたら、ゴルフのために日中屋外にいることは平気です。ただ、プレーするにはショットを打たなければなりません。そのたびに厚手の上着を脱いだり、手袋を外したり、面倒くさいことが増えるのは確かです。

 まあでも、スコットランドの冬の寒さを思えば、日本の関東以南の太平洋側ではなんぼ寒くてもゴルフはできますって。ちなみに、本場スコットランドの冬のゴルフを見た人が言うには、本グリーンは凍って使えないので、手前に冬用のサブグリーンを作って、そこに穴をあけてパットをすることがあるんだとか。

 そうまでして、ゴルフをしたい人々。感服しますなぁ~。

(5)地元・宮城での冬のゴルフ
 ところで、今から10年くらい前、私は地元・宮城で一度、1月に高校の同級生たちとゴルフをやりました。気温はおおよそ氷点下1度ぐらいでした。

 それならスキー場よりいいじゃん、と思われるでしょうが、日陰はとんでもなく寒いし、風がマジで冷たい。体感温度は風速1mで約1度下がると言われますから、風速5mで5度も下がるんですよ。それは、たまったものではありません。

 その寒さの備えとしては、背中とお腹の両方にカイロを貼ります。「そうしろ」と友だちが言うので半信半疑でやりましたが、それが正解でした。

 寒いと体も回りませんからね。常時、ミントのような手袋を装着するのは当然で、耳もしもやけになってしまうので、ニット帽も必需品です。

 そういえば、昔は"耳かけ"が必需品だったな、とその時に思い出しました。小、中学生の頃は、みんな鼻水をたらして、耳を真っ赤にしていたな、と。

 なんやかんやと大変な冬のゴルフですが、たまにはいいこともあります。思い出すボーナスショットは、池越えのショートホールでボールが池に落ちたと思ったら、なんと氷に跳ねて、見事にナイスオン!でした。

 これが、冬の風物詩。せっかく冬のゴルフをやるなら、なるべく池が凍っているコースを選びましょうね......って、ほんまかいな。

 とまあ、何歳まで冬のゴルフができるかわかりませんが、個人的には気力、体力がある間は続けていきたいと思っています。