チーム事情から見るドラフト戦略2022~阪神編

 最後の最後まで熾烈な3位争いを繰り広げ、なんとかクライマックス・シリーズへの出場権を手にした阪神。今シーズン、セ・リーグ記録となる開幕9連敗からのスタートだったことを考えると、驚異的な追い上げは賞賛に値する。

 猛追を支えたのは、チーム防御率2.67と12球団ナンバーワンの投手陣。

 セ・リーグ最多勝で防御率1位の青柳晃洋、防御率2位の西勇輝、さらに伊藤将司、新鋭・西純矢の先発陣。リリーフ陣も湯浅京己、岩貞祐太、浜地真澄、ラウル・アルカンタラに守護神を務めた岩崎優と盤石。とくに、リリーフ陣の防御率(2.39)のよさは特筆ものだ。

筆頭は高松商の浅野翔吾だが...

 2020年、2021年と、直近2回のドラフトでは、5位指名までの計10人のうち7人を投手で占めてきた阪神。その点からも、今年は「野手の年」なのかもしれない。

"甲子園のスター"であり、打てて、しかも走れる浅野翔吾(高松商/170センチ・84キロ/右投右打)はその筆頭候補だろう。

ただ巨人が1位指名を明言しており、抽選は避けられない。

 ほかにも、松尾汐恩(大阪桐蔭/捕手/178センチ・77キロ/右投右打)、海老根優大(大阪桐蔭/外野手/182センチ・85キロ/右投右打)は、能力的にも"ブランド的"にも魅力的な存在だ。

 早い時期から大山悠輔、佐藤輝明とクリーンアップを組めるスラッガー候補がほしいというなら、澤井廉(中京大/外野手/180センチ・100キロ/左投左打)と野尻幸輝(法政大/外野手/178センチ・92キロ/右投左打)のふたりもかなりの実力者である。スイングスピードはすでにプロの域に達しており、大きな放物線を描ける澤井、ライナー性の長打を放てる野尻......どちらも甲子園球場の漆黒の夜空に映えることだろう。

 昨年、ドラフト7位で獲得した中川勇斗(京都国際)は捕手センスの溢れる選手だが、それでもこのポジションについては将来の備えがほしい。顔ぶれから考えて「打てる捕手」が狙いか。

阪神がドラフトで獲るべきは打てる野手。将来の「投手王国」へ甲...の画像はこちら >>

2年夏から3季連続甲子園に出場し、通算11勝をマークした近江の山田陽翔

 タイミングが合った時の長打力と強肩で野口泰司(名城大/180センチ・85キロ/右投右打)、パワーにシュアさを兼備した打力が魅力の吉田賢吾(桐蔭横浜大/180センチ・93キロ/右投右打)の名前が挙がる。

 高校生で松尾以外に打力が光る捕手なら、清水叶人(健大高崎/176センチ・82キロ/右投左打)をおすすめしたい。守備面でもっとわかりやすく"活気"がプレーに表れてくればさらによし。

森木大智に続く逸材がほしい

 この2年間、森木大智以外、高校生の逸材投手を獲っていなかった阪神にとって、今年はうってつけの"甲子園のスター"がいる。

 山田陽翔(近江/175センチ・78キロ/右投右打)の甲子園での熱投ぶりは、伝説の"ミスタータイガース"村山実氏の姿と重なる。夏の甲子園後に侍ジャパンの一員として戦ったワールドカップは疲労が抜けきれていなかったはずだ。

まずはしっかり体調を立て直し、ひとシーズンを投げ続けられる健全な心身を鍛えて、プロの実戦に挑みたい。

 それを待てる余裕が、今の阪神投手陣にはあるはずだ。

 さらには、田中晴也(日本文理/186センチ・92キロ/右投左打)、日高暖己(富島/184センチ・78キロ/右投右打)、武元一輝(智辯和歌山/187センチ・88キロ/右投左打)といった「甲子園育ち」の本格派も楽しみな投手だ。