サッカー日本代表「パリ世代」インタビュー06
松岡大起(清水エスパルス/MF)後編
17歳にしてJ1デビューを果たし、早々に日本のトップリーグで活躍するようになった松岡大起は、いわばパリ世代のフロントランナーだ。
4年前にU−17日本代表に初めて選ばれて以降、同年代の年代別代表の常連であったばかりか、上の世代、すなわち東京オリンピックを目指す年代別代表にも"飛び級"で選ばれてきた。
中盤の底で的確に相手の攻撃の芽を摘み、奪ったボールをつないで、今度は自分たちの攻撃の起点となる。そんな落ち着いたプレーぶりは、まだ21歳とは思えない落ち着きを感じさせる。
目標だった東京オリンピック出場には手が届かなかったが、現在U−21日本代表に名を連ねる松岡は、今度こそパリオリンピック本番の舞台に立つべく、日々成長を続けている。
◆松岡大起@前編はこちら>>久保建英と比較されてきた「もうひとりの才能」
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松岡大起(清水エスパルス)2001年6月1日生まれ
---- 松岡選手は年代別代表でも豊富な経験を持っていますが、その最初となったのが2018年のU−17代表選出でした。
「代表に選ばれるのは初めてでしたが、いろんな選手と実際に会って、一緒にプレーして、すごく楽しかったです」
---- 翌2019年にはU−22代表にも選出され、トゥーロン国際トーナメントに出場。パリ世代の松岡選手が「飛び級」で東京世代に選ばれたことが話題となりました。
「うれしかったですけど、自分のなかで東京オリンピックに出るということは、中学生ぐらいから目標として立てていたところでもあったので、最終的に出られずにすごく悔しかったですし、もっともっと速いスピードで成長していかないといけなかったとも感じています。その悔しさは常に持って、今もプレーしています」
---- 昨年はU−20ワールドカップの開催が中止となり、せっかくの国際舞台に立つ機会が失われました。その事実をどう受け止めましたか。
「あの大会があれば、いろんなことが変わったと思いますし、それが開催されなかったことはすごく悔しかったです。自分にとって大きな国際大会は初めてになっていたはずなので、そこで活躍したかったなっていうのが本音です」
---- すぐには割りきれませんでしたか。
「そうですね。
---- その後、パリオリンピックを目指すU−21代表が正式に立ち上げられました。大岩剛監督が目指すサッカーをどう捉えていますか。
「まずは、一人ひとりのしっかりとした強度と、ピッチのなかでの判断が大事になってきます。そのうえで、攻守にわたって自分のできることだったり、チームとしてできることだったりを見せること。そういったところは常に求められています。
(速い攻守の)切り替えはどのチームでも求められていることですが、それをやるなかで自分の特長や長所をどれだけ出せるかっていうところはすごく求められている。実際に活動をやっていて、そう感じます」
---- 今年6月には初めての公式戦となる、U−23アジアカップに出場。日本は3位となりました。
「正直、自分自身はなかなかうまくいかなかったなっていうところはありますね。相手というよりも自分自身(の問題)だった、ということを本当に感じています。
(シーズン前の)ケガから復帰して、(清水エスパルスで)試合には出ていたんですけど、スタートからフルで出ることが少ないなかでのU−23アジアカップだったので、すごく難しかったなと思います。
---- まだコンディションが戻りきっていなかった、と。
「当時、自分のなかでそういう感覚はなかったんですけど......。清水でも途中から試合に出ることが多かったので、多少なりとも(コンディションが戻っていないところが)あったのかなって、今振り返ると思います」
---- 9月にはヨーロッパ遠征があり、さらにレベルが高い相手、スイス、イタリアと親善試合で対戦しました。
「すごく体も動いて、しっかりプレーできた感覚はあったので、やれることはやったっていう気持ちがありながらも、欲を言えば、(スイス戦のみの出場だったので)もっともっと試合に出てアピールしたかったなってすごく思います」
---- アジア勢相手の試合とは違いましたか。
「ヨーロッパとアジアとでは、強度にしても、切り替えの速さにしても、全然違うなっていうのはすごく感じました。
また、自分たちは代表活動のなかでセットプレー対策を集中してやっていて、U−23アジアカップの時はセットプレーから失点することなくやれたんですけど、ヨーロッパでは1試合目(スイス戦)の序盤でセットプレーから失点してしまった。
---- U−21代表のボランチは、J1で活躍している選手だけでなく、田中聡選手(湘南ベルマーレ→コルトレイク/ベルギー)のようにすでに海外移籍した選手もいて、競争が激しいポジションです。
「一人ひとりに違ったよさがあるとは思いますが、ピッチに入ったら全員がライバル。チームとして何を求められているのかを感じながらも、この選手がいないとダメだなって思われるぐらいにならないといけないと思っています。海外にいるから、日本にいるから、というのは関係なく、ピッチの上で結果を出し続けた選手がパリオリンピックや、そういった大きな大会に残れる選手になるんだと思います」
---- パリオリンピック出場は目標として意識していますか。
「そうですね。大きな目標のひとつです」
---- 大会や遠征を通じて感じた、U−21代表の雰囲気はどうですか。
「雰囲気はすごくいいですね。一人ひとりが高い意識を持って、プレーだけでなく、日々生活もしていると思います。コロナでコミュニケーションをとるのが難しいところもありますけど、一人ひとりが練習のなかでもそうですし、空いている時間を使ってしっかりコミュニケーションをとっています。互いに切磋琢磨し合える、いいグループだなって感じます」
---- 今年1月には、国内組だけでの編成とはいえ、A代表にも初選出されました。
「A代表は一人ひとりのレベルがより高いと感じましたし、意識も高かった。そのなかで実際にやって、経験して、知れたことがあったので、すごくいい合宿でした。
欲を言えば、最後の試合(中止になったウズベキスタンとの親善試合)はやりたかったなっていうのはありましたけど、それでもA代表の選手はどういう準備をし、どういうプレーをしているのかっていうことを短い合宿のなかでも感じられたので、そこはすごくよかったと思います」
---- A代表に一度選ばれたことで、そこがより具体的な目標になりましたか。
「実際に行ってみると、自分が何をすべきなのかがより明確になっていくっていうのはありました。ただ、それだけに自分がその後にケガをしてしまったのは、すごくもったいなかったなって思います」
---- 松岡選手の地元である熊本でも、A代表は2009年にアジアカップ予選を戦っています。当時の記憶はありますか。
「その試合を見に行ったのかどうか、記憶はないのですが、大分であった時とか、小さい頃に日本代表の試合を見に行ったことは何度かあります」
---- 印象に残っている試合はありますか。
「小学生だったので、正直、試合の記憶はあまりないです(苦笑)。でも、選手のことはよく覚えていて、自分は中村俊輔選手をよく見ていましたし、背番号10の入ったユニフォームを来て応援していたことはよく覚えています」
---- パリオリンピックはもちろん、その後のワールドカップ出場なども含め、今後の自身のキャリアをどう思い描いていますか。
「自分のなかでは、まずは自チームでしっかり活躍して海外へ行き、そのなかでステップアップして、より激しい場所で戦うっていうところは目標として持っています。
自分の目標はプレミアリーグでやることなので、そういった高いレベルで試合に出て、自分を表現し続けることがパリオリンピックだったり、ワールドカップだったりに呼ばれることにつながると思うので。そのためにも、まずは自チームで活躍し続けることがすべてなのかなって思います」
---- 松岡選手にプレーしたいと思わせる、イングランド・プレミアリーグの魅力とは何ですか。
「レベルの高い選手が一番多いのがプレミアリーグじゃないかなって思っています。すごくプレーが激しく、強度が高く、また展開が速いので、見ていてもおもしろいですし、実際にやったら、もっとおもしろいんじゃないかなって思うので。自分もこういうところでやりたいなっていうのは、高校生ぐらいから思い始めていました。
一番レベルが高いリーグで自分自身を表現し続けられるのがすごい選手だと思いますし、自分の特長をすべて出し、そこで活躍していきたいなって思います」
【profile】
松岡大起(まつおか・だいき)
2001年6月1日生まれ、熊本県熊本市出身。サガン鳥栖のアカデミー出身で、2019年6月にクラブ初の高校3年生でトップ昇格を果たす。ルーキーイヤーから先発の座を掴んだのち、2021年8月に清水エスパルスへ完全移籍。日本代表ではU−17から各年代で呼ばれ、2019年のトゥーロン国際大会に参加するU−22には飛び級で招集された。2022年1月、20歳にしてA代表に初選出。ポジション=MF。身長170cm、体重65kg。