前回の箱根駅伝は、1区が18位でトップとは3分12秒差。2位の駒澤大とは2分33秒差で、16位の早稲田大にも1分29秒差という致命的な出遅れをした順天堂大。

2区の三浦龍司が区間11位ながらも、前を行く14~16位を20秒前後の差まで追い詰める走りをして追撃態勢を整えると、往路は5位でゴール。そして復路は、6区と8区で区間賞獲得の走りをして、総合2位まで順位を上げる底力を見せつけた。

順天堂大は箱根駅伝の往路に「経験者は残っている」と自信。長門...の画像はこちら >>

箱根駅伝でもよい成績を残せるか期待される三浦龍司

 そのチームから区間賞を獲得の2名を含む3名が卒業したが、主力の4年生5名と3年生2名は、今年の出雲駅伝や全日本大学駅伝でもしっかり走っている。出雲は5位で全日本は4位と、納得できる結果ではなかったが、箱根で16年ぶりの王座奪還へ向けて意識は高い。監督就任6年目ながらも、チーム指導歴は12年になる長門俊介監督は、駒澤大と青学大の強さが少し抜け出ている状況のなかで、チームの勝機をこう語る。

「なかなか難しいとは思いますが、前回の箱根では青学大が3区でリードを広げて、そこから2位以下をまったく寄せつけない走りをした。
それに今年も駒大が、出雲では2区で抜け出し、全日本は3区でリードを奪って主導権を握ってそのまま逃げ切った。それを考えると序盤で主導権を握らせないのが大事だと思います。

 あと、うちの場合は往路の経験者はすべて残っているので、自信を持って戦えると思っています。青学や駒大ではなく、前半から勝負をしようと思っているであろう國學院大や中央大などの大学と一緒に逃げていき、追われる展開にならなければ勝ち目はないのではないかと思っています」

 前回3区を走った伊豫田達弥(4年)は、17位でタスキを受けて前を追わなければいけない難しい状況だったが、トップに立った青学大の太田蒼生には19秒差の区間3位で走っている。

 そして今回も「関東インカレの1万m1部で優勝できたことが自信になり、各校のエースと戦わなければいけないという考えになっているのが前回とは違う。2年生から2回続けて3区を走っているので、今までの経験を生かした走りができれば、去年より練習を積んでいるし、結果を出す準備はできている」と伊豫田は意欲を持つ。

 また前回4区の石井一希(3年)は創価大の嶋津雄大に区間賞は奪われたものの、青学大には15秒勝って区間2位で走っている。経験者ふたりがいることに加え、長門監督が前回5区を走った四釜峻佑(4年)に自信を持っていることが、往路で先手を取るのが可能だと考えている要因だ。

 四釜は前回、区間3位だった青学大に58秒差をつけられる1時間11分44秒の走りだったが、長門監督は「前回は出雲と全日本で好調だったので、その時の雰囲気を見たら1時間10分を切る力があるのではと思って私も張り切りすぎてしまい、彼も調子を保てなかったところもある。ただ今年の四釜は、平常運転のレベルが去年の好調な時期と変わらない力を持っていると思う」と話す。

 今年、関東インカレのハーフマラソン(男子1部)で自己記録を2秒更新する1時間03分04秒で7位になり、全日本では最長区間の8区で区間3位。青学大を1秒差まで追い詰めた。



そして、四釜自身も「前回の箱根は最初から突っ込んで入ったのが後半の失速につながったし、12月からウエイトコントロールができずに調子を落として当日にピークを合わせられなかった。前回は1時間9分30秒を出そうと思って臨んでいましたが、今回は区間記録の1時間10分25くらいを目安にして、そこから何秒削れるか挑戦してきたい」と意気込んでいる。

 その戦力を生かすためには1区と2区の流れが重要になるが、三浦龍司(3年)をどこで使うかが注目だ。チームの流れを作るために重要な1区は、前回の箱根で平駿介(4年)が走ったが、その前の2021年は三浦が走って区間10位だった。今年の出雲の1区は野村優作(4年)が1位と19秒差の区間5位、全日本の1区は平が2位の青学大に17秒差の区間12位になっている。

 長門監督は「僕も9区を4回走っていますが、(過去の)順大を見れば同じ区間を何度も走った選手が多い時のほうが勝率は高いし、自分たちの時もそうだった。
だから適材適所の配置をしていきたいと思う」と話す。

 そう考えれば三浦の起用は1区か2区になってくるが、前回、中央大の吉居大和が1区で、最初から突っ走って2位の駒澤大に39秒差をつけたような展開を考えると、それに対応できるのは三浦だろう。彼は今年も40km走をこなしていて、長門監督は「今年は40kmを走ったあとも練習で落ち込むこともないので対応力はついている。22~23kmを走る準備はしっかりできている」と話す。

 本人も「経験している区間を走ると思う」と言うが、「できれば1区のほうがいいし、そのほうがチームに貢献できると思う」とも話していた。

 昨年1区を走った平が全日本で12位だったとはいえ、青学大や駒澤大とは僅差だったことをどう判断するか。

距離も長くなるだけに、安全性を重視すれば三浦を1区にして駒澤大や青学大の前で中継させ、野村優作(4年)を4区で起用して耐えさせるような展開を考えるか。野村は21年の箱根2区で、1時間08分05秒で区間10位だったが、ハーフマラソン1時間01分51の力を持っているだけに、前で走り出してうまく流れれば1時間7分前後は可能。駒澤大と青学大が1時間6分近辺で走ったとしても傷口は浅く済み、そこからの追撃も期待できる。

 復路には前回7区を走った主将の西澤侑真(4年)もいて、三浦が1区なら平も回せる。さらに11月20日の上尾ハーフでは、出雲の4区区間5位の油谷航亮(2年)が1時間03分14秒、全日本5区区間9位の海老澤憲伸(2年)は1時間02分43秒、浅井皓貴(2年)も1時間02分13秒と、ともに自己新を出していて層の厚い戦力になっている。

「2000年頃の順大は3位以内を目指すなかで優勝したことが多く、守りを固めていく戦い方でした。
でも今はスピード化もしていて攻めていかなければいけない。勝つためにはそのなかでマイナスをなくすということに行き着きますが、高速レースに対応するためにも攻めの練習をさせていきたい」

 こう話す長門監督が、往路で先手を取るためにどんな攻めの布陣を取ってくるかが、今回の順天堂大の見どころだ。