Sportiva注目若手アスリート「2023年の顏」

第7回:北野颯太(サッカー)

 2023年にさらなる飛躍が期待される若手アスリートたち。どんなプレーで魅了してくれるのか。

スポルティーバが注目する選手として紹介する。

【歴代最年少記録を塗り替える18歳】

 スピードに乗った切れ味鋭いドリブルは、簡単に止められない。ボールが入ったら遠目からでも積極的にシュートを狙う、ゴールへの貪欲さも目を見張る。セレッソ大阪の次世代を担う存在として注目を集めるのが、FW北野颯太(18歳)だ。

セレッソ大阪、そして日本サッカーの未来を担う18歳北野颯太。...の画像はこちら >>

セレッソ大阪の18歳、北野颯太

 セレッソ大阪が持つ歴代の最年少記録を塗り替え、話題を呼んできた。

 高校1年生の2020年10月に、セレッソ大阪U-23の一員としてJ3に出場。FW柿谷曜一朗名古屋グランパス)が持っていたクラブ史上最年少での公式戦デビューを16歳2カ月12日と塗り替えた。

 2022年3月に行なわれたルヴァンカップ第2節の鹿島アントラーズ戦では、プロ初得点を記録。17歳6カ月17日での得点はFW南野拓実(モナコ)よりも早く、クラブとしてJ1最年少得点となった。

 ルヴァンカップでは10試合で3得点を奪い、ニューヒーロー賞を獲得。過去にはMF名波浩(元ジュビロ磐田)、MF長谷部誠(元浦和レッズ、現フランクフルト)ら、日本代表経験者が受賞した賞で、高校生のうちに受賞したのは北野が初だ。

 数多くの有望株を獲得してきたC大阪の都丸善隆スカウトも、「非常に期待している選手。近い将来、日本に留まらず世界で活躍してくれると願っている」と口にする。

 こうしてC大阪だけに留まらず、日本サッカーの未来を担う北野は、和歌山県出身。3歳上の兄の影響でボールを蹴り始め、アルテリーヴォ湯浅を経て、中学からC大阪U-15に加入した。

 持ち味であるスピードと高い技術力を活かしたプレーは当時から高く評価されており、中学1年生の頃からコンスタントに世代別代表のメンバーに選ばれてきた。U-18昇格以降も1年目からAチームでの出場機会を掴み、右サイドハーフやFWでプレー。J3でも8試合に出場し、着実に経験値を高めている。

【高校年代で異なるスタイルを経験】

 彼にとって、大きな転機となったのは高校2年生のシーズンだ。C大阪が川崎フロンターレや名古屋グランパスを率いた風間八宏氏を技術委員長として招き入れ、アカデミー改革を実施。

ハードワークを求められたこれまでとは180度変わり、「止める、蹴る、運ぶ」といった基本技術の徹底が図られた。練習ではパス&コントロールを繰り返し、キックやトラップをミリ単位までこだわるようになった。

 新体制になってからはポジションも変わり、北野が与えられたのは右サイドバック(SB)だった。自陣からのビルドアップを徹底するチームのなか、ボールに触る回数も多いポジションだが、プレーエリアが限定される難しさもある。

「一つひとつの蹴るボールの質や、ラストパスの質も精度を高めて欲しかった」(島岡健太監督)というのがコンバートの狙いだが、もう一つの意味合いもあった。

「北野は惜しみなく守備ができる部分を、代表でも評価されている。

そこは申し分なかったけど、抽象的なハードワークという言葉で済ませるのではなく、もっと細かな部分まで意識して覚えさせなければいけないと思っていた」(島岡監督)

 また、北野と同じく高校生でトップチームデビューをしたMF石渡ネルソンも右サイドバックでプレーするなど、期待の若手が経験する登竜門としての意味も持つ起用だった。

 ただ、攻撃的なポジションばかりを経験してきた北野には、葛藤があったのは間違いない。島岡監督は「SBならやりたくないと言い出すギリギリのところまで来ていた」と当時について振り返る。

 それでも悩みなながらも技術と守備を高めると、シーズン半ばからは、右サイドハーフに復帰。U-18年代の全国リーグ、高円宮杯プレミアリーグU-18ではこれまでの鬱憤を晴らすような活躍を披露し、7得点をマークした。

 1年目でフィジカル、2年目で技術と、異なった2つのスタイルを経験できたのは、彼にとっての大きな財産になっている。

当時の北野はこんな言葉を残している。

「今年に入ってからすごく成長を感じている。昨年と比べて、見えているものが増えた。ボールが止まる分、余裕が生まれて、世界が変わった。今のサッカーはすごくプラスになっている。やれることが増えました」

【ワールドカップを見て悔しい気持ちも】

 高3になる直前の2022年2月にプロ契約をし、一足早くU-18は卒業。

昨シーズンは主に交替の切り札としてJ1で19試合に出場したが、本人に満足した様子は見られない。

「トップチームの試合に出させてもらいながら、納得の行く結果を残せなかった。来シーズンは僕にとって2年目のシーズンになる。プロは結果の世界なので結果にこだわり、今まで支えてくれたみなさんに恩返しができるように頑張りたい」

 C大阪の森島寛晃社長が現役時代に背負った8番はチームのエースナンバーとなり、MF香川真司(シント=トロイデン)、MF清武弘嗣、FW柿谷曜一朗(名古屋グランパス)ら日の丸経験を持つレジェンドたちが受け継いできた。

 クラブは"いずれ北野が"との考えを持っているのは間違いない。北野自身もそうした偉大な先輩たちを強く意識している。なかでも同じアカデミー出身で、先日のワールドカップにも出場した南野は、ロールモデルとも言える存在だ。

「南野選手はリバプールやモナコなど世界の大舞台で活躍されている。すごく憧れる存在ですが、憧れているだけでは追いつけない。追い越す勢いで自分ももっともっと活躍しないといけない。すごく刺激を与えてもらっている存在なので、近い将来自分も世界に出て、C大阪のアカデミーの選手に僕が南野選手からもらったような刺激を与えたい。憧れられる存在になりたい」

「ワールドカップを見て感動すると同時に悔しい気持ちもあった。4年後に僕が出て、日本で初めてのベスト8に導けるような選手になりたい」。世界での活躍を見据える北野にとって、2023年は大事な年になるのは間違いない。強烈なインパクトを残した昨年以上の成績を残し、先人たちと同じ階段を登っていけるか注目だ。