ヤクルト石川雅規投手 インタビュー後編
ヤクルトスワローズ一筋のサウスポー、石川雅規投手は入団1年目から21年連続で白星を継続中。
通算勝利数は183勝を重ね、200勝まであと17に迫っている。
今年43歳。身長167センチの小さな大投手の200勝への思い、そして、22年目のシーズンの目標を聞いた。
ヤクルト石川雅規投手。2月の沖縄・浦添キャンプにて
●常に目指すはキャリアハイ
ーーこの3年間は登板数が15~17試合に収まっています。石川投手からすれば、もっと投げられるという思いもある?
石川雅規(以下、同) こればっかりは、評価は周りがしますからね。僕らは、投げろと言われた試合で投げるしかありません。
ここ数年は15試合ちょっとの登板数ですが、もちろんもっともっと投げたいという思いはありますし、常にキャリアハイ(13勝)を目指しています。
"投げれば勝つ"というピッチングを続けていたら、使いたいと思ってもらえると思うので、そういうピッチングをしていきたいと思いますね。
ーー石川投手の登板間隔はけっこうバラバラなので、ファンの立場からすると、登板日を予測しにくいです。
投げたあとには、だいたい次の登板日が決まっていることが多いんです。この辺で投げてもらいたいから、ファームで調整してきてくれ、とか、ここに合わせてくれ、とか、言い渡されています。
調子が悪ければ、もちろん2軍落ちもあり、次の登板日がわからない状況の時もあります。
次の登板を言われるのと言われないのとでは大きな違いがありますね。
●「小さいから野球はできないなんてルールはない」
ーー昨シーズンの登板数が16試合だったのは、7月後半に新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことも一因だったと思います。実際に、コロナになる前はナイスピッチングが続いていました。そこで調子が狂ったところもあったのではないでしょうか?
めちゃくちゃ調子狂いましたよ。コロナ明けのピッチングは正直あんまりよくなかったですね。1週間も10日間も何もできない期間があると、こんなにも体力が落ちるものなのか、と実感しました。
戻るまでには2カ月近くかかりました。やっと調子が戻ってきたと感じたのが日本シリーズぐらいですかね。
シーズン中にあんなに体が動かなかったことがなかったですし、まして初めてのコロナ。不安もありましたし、難しかったです。
そういう意味でもコンディショニングって大事だなってあらためて思いました。肩肘が痛くなくて、健康でさえいれば、どんなに打たれようと練習はできるじゃないですか。
でも、コンディション不良だと、練習もできない。そういう辛さがありました。
ーー状態が上がってきたという日本シリーズでは、最年長勝利記録の更新とはならず、前年に続く白星は上げられませんでしたが、5回2安打1失点とナイスピッチング。技巧派のピッチングで魅了してくれました。
僕はバンバン三振を取って抑えるタイプじゃないので、俗にいう"映えない"ピッチングだと思いますけど(笑)。
でも、スピードが速くはなく、体も大きくはなくても、物事は考えよう。
昔は体が小さいことにコンプレックスがありましたけど、今は、これでもできるんだぞって示せているかな。小さいから野球はできない、なんていうルールはないですからね。
インタビューに応じた石川投手
●山本昌超えの220勝が目標
ーー現在183勝。200勝まではあと17勝となりました。
200勝は自分の中で大きなモチベーションになっています。
マサさん(山本昌)が219勝なので、僕は220勝を目指しています。そもそも、200勝でいいってことはないので、まだまだ勝てると信じていますし、まだまだ勝ちたいですから、自分自身に期待したいです。
ーー新シーズンは、どのような目標設定をされていますか?
もちろんチームあっての自分ですし、リーグ2連覇している中で3連覇にチャレンジできるのは、セリーグではヤクルトしかないので、3連覇の力になりたいです。
日本一ももう一回取り返したい。それには日本シリーズに出なきゃなりませんから。
個人的にはやっぱりもう一度2桁勝ちたい。2桁勝つことができれば、またその先も見えてくると思いますから。5勝でいいやと言っているようでは、1、2勝で終わってしまう。だから、選手である以上は、キャリアハイを目指しますよ。
自分で気持ちは若いって言っていながら、こういう時だけ年齢を出すのもなんですけど、しんどい時は、もう40過ぎだからって言いたいですし、あの年であんなに頑張ってるって言われたいです(笑)。でも、前向きにプレーしたいですね。
年齢を重ねて、同世代の方々の応援がいっそう大きく聞こえてきます。本当にありがたいことです。
しんどい時期はいつだったか、ってよく聞かれるんですけど、いつが最後の年になるかはわからないですし、野球選手としてやれている以上は、しんどいよりも、幸せのほうが大きいです。
打たれたとしてもプロ野球選手として投げられるんだったら、しんどいって思うよりも、今度はどうやって抑えるかを考えたほうがいい。だから、ユニフォームを着ていることに感謝したいです。
終わり
前編<ヤクルト石川雅規「勝てない自分が恥ずかしいと思った30代半ば」を乗り越えて 43歳の今「まだまだ野球がうまくなりたい」>
【プロフィール】
石川雅規 いしかわ・まさのり
1980年、秋田県生まれ。秋田商高、青山学院大を経て2002年自由獲得枠で東京ヤクルトスワローズに入団。1年目に12勝を挙げて新人賞を獲得すると、そこから5年連続2桁勝利を達成。2008年、最優秀防御率(2.68)をマークし、ゴールデングラブ賞も手にした。2022年には史上3人目の新人から21年連続勝利を記録。2022年までに2桁勝利11回、通算183勝。167センチの小柄な体格から「小さな大投手」と呼ばれる。