ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

――いよいよ今年もクラシックが始まります。第1弾は、3歳牝馬によるGI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)です。

最近は、有力馬のローテーションや、本番の馬場が話題になることが多くなっています。

大西直宏(以下、大西)ローテーションで言うと、年明けのGIIIシンザン記念(京都・芝1600m)から直行した2018年の覇者アーモンドアイをきっかけにして、GI朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)からぶっつけで挑んだ2019年の勝ち馬グランアレグリア以降、だいぶ様変わりしましたね。

 この頃から、有力馬の多くがトライアルを挟まずに2歳戦から直行するようになりました。牧場で仕上げる技術が格段にアップしたことで、他のGIでもこういったローテを採用する馬が増えてきましたよね。

 また、馬場については、2020年と2021年とでは両極端でした。デアリングタクトが勝った2020年は、雨が降る道悪馬場でズブズブの消耗戦となりました。

 一方、ソダシが制した翌年は"コンクリート馬場"とも言われた超高速の馬場。勝ちタイムは1分31秒1と、従来のレコードを大幅に更新しました。ちなみに、この2年のタイム差は実に5秒もありました。

 そして昨年は、近年のGIでたびたび話題に上がる、コース取りによる"トラックバイアス"が注視されることに。枠順は「外より内」、位置取りは「後ろより前」が有利に働きました。

 こうしたことから、桜花賞では"馬場状態"を把握することが重要なポイントのひとつであることは間違いありません。

――京都競馬場の改修工事に伴って、阪神競馬場では2021年から桜花賞の週にコース替わり。同週から仮柵を設けたBコースに替わります。その辺りも馬場の高速化に影響しているのでしょうか。

大西 それはあると思いますよ。馬場が速いのは、時期的に芝が生育しやすいのもありますが、内、前が有利になるのは、間違いなくコース替わりが影響しているでしょうね。

 先週の大阪杯では、ジャックドールが逃げ切り勝ちを収め、先行した馬も上位に入線。

Aコース最終週でも内目を運んだ先行馬が優勢でしたから、今年はコース替わりが一段と結果を左右する可能性があります。

 昨年同様、外枠が不利になる、ということは頭に入れておいたほうがいいかもしれませんね。

――今週は、開催前は雨予報ですが、週末は天気がよさそうです。馬場が回復するとしたら、どんなレースをイメージされますか。

大西 2年前のソダシが勝った時のような、高速決着が予想されます。勝ち時計が1分31秒台に突入するかどうかはペース次第ですが、少なくとも1分32秒台前半の決着になるのではないでしょうか。

スピード馬場への対応力が求められそうですね。

 その場合、やはり内目で立ち回れることがメリットになるはず。枠順はもちろん、鞍上の馬場への意識がどうか、という点もよく考察しておくべきでしょうね。

――下馬評では"2歳女王"リバティアイランド(牝3歳)の「1強」とされていますが、大西さんはどうご覧になっていますか。

大西 僕もそうした見方には異論がありません。GI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)を2馬身半差で完勝した同馬は、かなり強い馬だと思います。

 とりわけ、新馬戦で上がり31秒4というタイムをマークした末脚は、見た目にも、記録的にも次元が違いすぎます。のちに、2歳GIを楽勝するのも納得です。

 それだけのスピードが出せる馬ならば、高速決着も大歓迎と見ます。その強さがますます引き出されるのはないでしょうか。

 年明けの重賞では、そんな2歳女王の「ライバルとなり得る馬が登場するか?」といった点をテーマに置いて見てきましたが、個人的には女王を脅かすほどの存在は現れなかったと思っています。「1強」の勢力図に変化なし、というのが僕の見立てです。

 2歳戦からのぶっつけとなるローテーションも、今の時代は不安どころか、むしろ最適とすら言えるもの。実際に中間の動きにも、不安を感じさせるものはありませんでした。リバティアイランドの"相手探し"の一戦と言えるでしょう。

――馬券圏内(3着以内)と考えた場合、ひとつはリバティアイランドで当確として、残りふたつのイスはどうなるのか。前哨戦をご覧になってきたなかで、残りのイスを奪える候補として、すぐに頭に浮かぶ馬はいますか。

大西 時計面で言えば、阪神JFと同じ勝ちタイム(1分33秒1)だったGIIIクイーンC(2月11日/東京・芝1600m)組には魅力を感じます。特に1、2着となったハーパー(牝3歳)とドゥアイズ(牝3歳)ですね。

 ドゥアイズは、阪神JFでも直線でややスムーズさを欠きながら3着と好走。この世代で上位争いできることは証明されています。

 その比較から、勝ったハーパーも当然上位進出が期待できます。しかも、この馬にはクリストフ・ルメール騎手が騎乗しますから、その期待度はさらにアップします。

――人気薄で出番からあるとしたら、やはり内目でうまく立ち回れる馬でしょうか。もし具体的に気になる存在がいたら、教えてください。

桜花賞は昨年と同じく「内、前」が有利か 人気薄の一発を期待す...の画像はこちら >>

3歳牝馬で唯一重賞を2勝しているキタウイング

大西 そのパターンで言えば、キタウイング(牝3歳)でしょうか。2走前のGIIIフェアリーS(1月9日/中山・芝1600m)では、思いきってインを突いたことが勝利につながりました。

 出遅れたことで腹をくくれたのもあるでしょうが、あれで結果を出せたことで、この馬の戦法が確定したことは明らか。プロフィールが地味なので人気になりにくい馬ですが、3歳牝馬世代で唯一の重賞2勝馬ですから侮れません。

 展開と乗り方がハマッたら、ここでも一発というシーンが作れるかも。関東馬ながら、1カ月以上も前から栗東入りして調整していることも、桜花賞で全力投球するためですから、陣営の本気度はかなり高いと見ています。

 ということで、桜花賞の「ヒモ穴」には同馬を指名したいと思います。