ダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)は今から11年前の2012年に、テキサス・レンジャーズからメジャーデビューした。

 2015年3月にトミー・ジョン手術を受け、このシーズンは全休したので、今シーズンはメジャーリーグ11年目。

これまでの10シーズンで通算95勝を挙げている。

ダルビッシュ有の次なる目標は? 史上3人目の日米200勝、奪...の画像はこちら >>

ダルビッシュが今季達成しそうなマイルストーンは?

 その登板に白星を挙げたかどうか、あるいは黒星を喫したかどうかは、必ずしも投球の結果(と内容)とは一致しない。今シーズン初登板の4月4日がいい例だ。

 ダルビッシュは5イニングを投げ、犠牲フライによる1点に抑えた。リリーフ投手と交代した時点では5対1とリードしており、そのままいけば通算96勝目となる白星を手にしていた。けれども、パドレスは6対8で敗れた。

一方、2012年4月9日のメジャーリーグ初登板は、5.2イニングで5失点ながら勝利投手になっている。

 とはいえ、三ケタの白星を挙げるには、長年にわたって先発ローテーションの一員として投げる必要がある。今のところ、通算100勝以上の日本人メジャーリーガーは、野茂英雄(1995年~1998年ロサンゼルス・ドジャース→1998年ニューヨーク・メッツ→1999年ミルウォーキー・ブルワーズ→2000年デトロイト・タイガース→2001年ボストン・レッドソックス→2002年~2004年ドジャース→2005年タンパベイ・デビルレイズ)だけだ。

 野茂は1995~2005年の11シーズンで123勝を記録した(12シーズン目の2008年カンザスシティ・ロイヤルズでは0勝)。通算70勝以上も野茂とダルビッシュのほかには、79勝の黒田博樹(2008年~2011ドジャース→2012年ニューヨーク・ヤンキース)と78勝の田中将大(2014年~2020年ヤンキース/現・東北楽天ゴールデンイーグルス)のふたりにとどまる。

 故障に見舞われることがなければ、ダルビッシュはオールスターブレイクの前にシーズン5勝目を挙げ、通算100勝に到達するだろう。

過去2シーズンの5勝目は、2021年が10登板目の5月23日、2022年は11登板目の6月7日だった。

【歴代5位はガリクソン?】

 さらに将来的には、野茂の123勝を上回るだけでなく、150勝に達する可能性も皆無ではない。

 ダルビッシュとパドレスは今年2月に6年1億800万ドル(約142億円/2023年~2028年)の延長契約を交わした。この契約期間中にシーズン平均9.2勝を挙げると、通算150勝となる。現在36歳の年齢からすると、容易ではないものの、過去10シーズンは平均9.5勝だ。

 また、ダルビッシュは日米通算200勝にも近づいている。こちらのマイルストーンには、あと12勝でたどり着く。

メジャーリーグで1シーズンに12勝以上は、昨シーズンが3度目。2012年と2013年に16勝と13勝を挙げ、昨シーズンは16勝を記録した。

 日本プロ野球とメジャーリーグで投げ、合わせて200勝以上は、野茂と黒田のふたりが達成している。

 野茂はNPB78勝とMLB123勝で計201勝。NPBの白星は1990~1994年に近鉄バファローズで記録した。MLBで手にした白星のうち、約3分の2の81勝はドジャース時代に挙げている。

 黒田の日米通算勝利は野茂を上回る。NPB124勝とMLB79勝で計203勝。その内訳は、1997年~2007年に広島東洋カープで103勝、2008年~2011年にドジャースで41勝、2012年~2014年にヤンキースで38勝、2015年~2016年に再び広島で21勝だ。

 もっとも、野茂と黒田に続き、日米通算200勝の3人目となるのはダルビッシュではないかもしれない。

 田中は今シーズンの開幕戦でエスコン・フィールド初の勝利投手となり、日米通算191勝としている(2登板目の4月6日は7回1失点で黒星)。現時点ではダルビッシュより3勝多い。

昨シーズンの田中は9勝だったので、今シーズンも同数の場合、日米通算200勝は来シーズンに持ち越しとなるが、田中のシーズンふたケタ勝利は12度を数える。NPBとMLBで6度ずつだ。

 ちなみに、日米通算180勝以上は6人が記録している。203勝の黒田、201勝の野茂、191勝の田中、188勝のダルビッシュに、あとのふたりは、183勝のビル・ガリクソン(MLB162勝・NPB21勝/1988年~1999年読売ジャイアンツ)と182勝の石井一久(NPB143勝・MLB39勝/2002年~2004年ドジャース→2005年メッツ)だ。日米のいずれでも80勝以上は、ダルビッシュしかいない。

【ワールドシリーズは2回降板】

 また、MLB100勝と日米200勝のほかに、ダルビッシュは今シーズン中に野茂の奪三振記録をダブルで塗り替えそうだ。

 野茂のMLB1918奪三振と日米3122奪三振に対し、ダルビッシュは4月4日の3奪三振を含め、それぞれ1791奪三振と3041奪三振。

野茂との差は、127奪三振と81奪三振だ。

 順序としては、まずは野茂の日米通算を追い抜き、続いてMLB通算を超えることになる。田中のMLB通算は991奪三振、日米通算は2491奪三振。4月6日にNPB1500奪三振に到達した。

 さらにダルビッシュは、日本人メジャーリーガーふたり目の通算1500イニングと先発250登板にも近づいていて、あと7イニングと先発7登板で到達する。言うまでもなく、こちらもひとり目は野茂だ。1976.1イニング(先発1967.0イニングと救援9.1イニング)と先発318登板(救援を含めると323登板)を記録している。

 これらのマイルストーンもさることながら、ダルビッシュにはワールドシリーズ初優勝のチャンスもある。

 ジョー・マスグローブが戻ってくれば、ローテーションには三本柱が揃う。ダルビッシュ、マスグローブ、ブレイク・スネルの3人だ。

 マスグローブは4月6日に3Aでリハビリとして投げており、復帰は近い。それに続き、フアン・ソト、マニー・マチャド、ザンダー・ボガーツが並ぶ打線も、さらにパワーを増す。フェルナンド・タティースJr.の出場停止はパドレスの試合が順延にならないかぎり、4月19日が最後の80試合目だ。その翌日から出場できる。

 ダルビッシュは、2006年に日本シリーズ優勝を経験し、WBCでも2009年と今春に優勝を味わっているものの、ワールドシリーズ優勝はまだない。出場も2017年の1度きりだ。

 2017年夏のトレードでレンジャーズからドジャースへ移り、ワールドシリーズでは第3戦と第7戦の先発マウンドに上がったが、どちらも2回途中に降板した。そしてドジャースは3勝4敗でヒューストン・アストロズに敗れた。

【ダルビッシュの次回登板は?】

 なお、この年のアストロズは"サイン盗み"で知られるが、それだけで優勝したと断じることはできない。たとえば、ダルビッシュが投げたワールドシリーズの2試合中、第7戦はドジャースタジアムだった。アストロズが相手バッテリーのサインを盗んでいたのは、ホームのミニッツメイド・パークだった。

 ダルビッシュだけでなく、パドレスもワールドシリーズ優勝はない。1969年の創設以来、進出は2度。最初の1984年はタイガースに1勝4敗で敗れ、2度目の1998年はヤンキースにスウィープされた。

 悲願と形容するのは大袈裟かもしれないが、ワールドシリーズ優勝が皆無の6球団中、パドレスの球史は2番目に長い。今シーズンが63年目のレンジャーズ(1961年にワシントン・セネタースとして創設)に次ぎ、55年目のミルウォーキー・ブルワーズ(1969年にシアトル・パイロッツとして創設)と並ぶ。ほかの3球団は、創設から50年経っていない。

 ダルビッシュのシーズン2登板目は、4月10日(日本時間11日)のニューヨーク・メッツ戦が有力だ。予定どおりならシティ・フィールドでマックス・シャーザーと投げ合う。