10月14日からクライマックス・シリーズ(CS)が始まる。今季はセ・リーグを制した阪神、パ・リーグを制したオリックスが、ともに2位に10ゲーム差以上をつける圧倒的な強さを見せた。
【消化試合をなくしたCSの功績】
── 日本シリーズと違って、CSはファーストステージ、ファイナルステージとも上位チームの本拠地で開催されます。
飯田 CSは移動もないですし、とにかく初戦が重要になります。とくにファーストステージは、初戦をとれば王手です。初戦に敗れたチームはプレッシャーがかかりますし、そのなかで連勝するのは並大抵のことではありません。
薮田 応援はやはり心強いですし、上位チームの「ホームアドバンテージ」は大きいと思います。
── CSファイナルステージは、1位チームに1勝のアドバンテージがあります。
飯田 1位チームが初戦に勝てば2勝となり、さらに優位に立てます。逆に下位チームが勝つということは、先発3、4番手での勝利となり、1位チームのエースを倒したことになります。さらに1勝1敗のタイに戻したという安心感、勝ち上がってきた勢いもさらに加速するので、1位チームに相当なプレッシャーをかけられると思います。
薮田 短期決戦で1勝のアドバンテージは本当に大きい。しかも1位チームはファイナル初戦にエースをぶつけられる。1位チームにしてみれば、いかに普段どおりの戦いができるかどうかでしょうね。状態のいい選手、相手との相性のいい選手をうまく使いながら戦えればいいと思います。
── CSで先発ローテーションは何枚必要ですか?
飯田 1位のチームは休養十分ですし、投手はきっちりローテーションで回ってきます。
薮田 ボビー・バレンタイン監督時代の2005年の先発陣は、渡辺俊介、小林宏之、ダン・セラフィニ、清水直行の4人で回しました。2010年の西村徳文監督の時は、成瀬善久、ビル・マーフィー、渡辺俊介、ヘイデン・ペン、大嶺祐太(もしくは唐川侑己)の5人でした。そしてレギュラーシーズンの先発5、6番手の投手が「ロング(第2先発)」を務めることがあります。今回、阪神の才木浩人投手がそのポジションを担うかもと言われています。
── 過去プレーオフで勝率5割以下のチームが進出したのは、パ・リーグは2004年から昨年までの19シーズン(※2020年はコロナ禍によりセ・パともにCSは不開催)で一度だけ。
飯田 毎回、そういう話は出てきますが......これはルールですからね。もちろん、1位チームに10ゲーム差以上離されたチームや、勝率5割未満のチームが日本シリーズに出て、日本一にでもなったら物議を醸すでしょうし、ルール改正の話も出てくるかもしれません。そうなるとCSの意義が薄れてしまうので、難しいところですよね。
薮田 CSは必要だと思います。
── 何かいい方法はありますか。
飯田 あくまで個人的な意見ですが、現状のようにアドバンテージをつけて1位チームを有利にするくらいなら、CSは廃止していいのでは......と思っています。CS制度の導入で"消化試合"がなくなったのはたしかにメリットですが、せっかくプレーオフをやるのであれば、メジャーのようにアドバンテージなしで対等に戦ったらどうでしょうか。
薮田 3位のチームが勝率5割以下であっても、CSファーストステージに関しては従来どおり、アドバンテージなしの2勝先取制でいいと思います。ただ、ファイナルステージに関しては、たとえば「5ゲーム差につき1勝」「10ゲーム差なら2勝」のアドバンテージを1位チームに付与してもいいのではないでしょうか。
【ペナントレースとCSは別物】
── シーズン2位、3位からCSを勝ち上がるのは難しいですか。
飯田 1位チームが有利なのはたしかなので、2位、3位チームは気楽さをバネに「やってやるか!」的なリラックスした感じで臨んだほうがいいと思います。プレーするのは選手ですので、選手のモチベーションを上げて、その気にさせてやるのがコーチの手腕ですね。
薮田 ルール的なことを考慮すると、1位チームの優位は変わりませんが、下位チームのほうが気持ち的に開き直れますし、戦いやすさはあると思います。ペナントレースと短期決戦はまったく別物なので、いかにチームに勢いをつけられるか。エースがしっかり投げて、打つべき選手が打って、思いきったプレーをする。それができたチームが日本シリーズに進むと思います。
── 飯田さんは今年のセ・リーグCSをどう予想しますか。
飯田 1位の阪神は、村上頌樹、大竹耕太郎、西勇輝、伊藤将司、青柳晃洋、才木浩人......と先発投手陣は余ってしまうぐらい充実しています。シーズン同様、強力な投手陣を中心に守り勝つ野球になると思います。ただ今回に関しては、ファーストステージを勝ち上がったチームが、そのまま日本シリーズに進出してしまうかもしれません。
── それはなぜですか。
飯田 とにかく甲子園の応援はすごいので、阪神の選手たちは乗ったら手がつけられませんが、その一方で大きなプレッシャーにもなります。それに村上をはじめ経験の浅い選手が多く、短期決戦独特の雰囲気のなかで普段どおりのプレーができるのかどうか。しかも阪神は、岡田彰布監督が指揮を執った2005年の日本シリーズでロッテにストレート負けを喫しています。金本知憲監督時代の2017年にも、シーズン2位で迎えたファーストステージで3位のDeNAに敗れたこともありました。そうしたこともあり、阪神は短期決戦が得意ではないのかなと......。いずれにしても、今年は勝ち上がり方や意義も含めて、例年以上に興味深いCSになることは間違いありません。
── 薮田さんは今年のパ・リーグCSをどう予想しますか。
薮田 オリックスは優勝してからファイナルステージまで1カ月近くあるわけで、大事なのは"試合勘"です。とくに打者は、どれだけ生きた球を見られるか。そこがポイントになってくると思います。とはいえ、オリックスの投手陣は超強力です。山本由伸投手、宮城大弥投手のほかにも、東晃平投手ら若い選手の成長が著しく、さらに中継ぎ陣も充実している。短期決戦は投手力のいいチームが有利ですので、オリックスが強いかなと。いずれにしても、初戦だと思います。おそらくオリックスは山本投手でくると思うのですが、そこでしっかり勝てるかどうか。初戦をオリックスがとれば、確率はさらに上がるでしょうね。