レオザフットボールインタビュー後編

アジアカップ、ベスト8で敗退した日本代表の森保一監督の采配が大きな批判にさらされている。チーム内外から聞こえてくる声は、シリアスで日本代表の今後を憂う声が多い。

シュワーボ東京のオーナー兼監督、YouTuberレオザフットボールは日本サッカー協会にもしっかりと目を向けるべきと語る。アジアカップ期間内に起こった"伊東純也離脱問題"には日本サッカー崩壊のリスクがあるというが、その真意とは?

(>>『サッカーYouTuber・レオザフットボールがアジア杯を振り返る 森保監督は戦術家として「全然足りてないというか浅い」』)

伊東純也離脱問題にレオザフットボールが警鐘「サッカー協会おか...の画像はこちら >>

――森保一監督の資質の問題は、勝ち続けている時も見えていたと思うのですが、なぜ声が上がらなかったのでしょうか。

「人は、勝ったらいろんなこと忘れてしまうからです。勝っていると多くの人が内容を見ず、『森保監督はすばらしい』となってしまう。また、悪いところを忘れてもらうと都合のいい人がその流れを利用します。森保さんに戦術がないことを、選手は理解していると思いますが、アジアカップの大事な場面で出てしまった。

このままだといけないと思っている選手が危機感を覚えて、インタビューでアラートを出しているんです」

――選手やサポーターからもそっぽを向かれつつあるということですか。

「すでに関心が薄れているんじゃないですか。日本代表のメンバーを発表しても以前ならみんな、興味津々で見ていたと思うんですけど、森保監督の哲学の薄さがバレてから徐々に落ちて、今じゃアクセスランキングにのらない。数字が取れないんですよ。どうせ同じような内容でスポンサーや関係各所に配慮するだけなので、みんな、どうでもいいと思っているんです」

――それは、森保監督に期待できないということの表われですか。

「そうですね。

でも、誰も期待していないなら監督を代えた方がいいんじゃないかなと思いますけど、協会が次の一手を考えているかというと、それもないでしょう。試合を分析して、この大会ではこういう問題があったので、このレポートを軸に代表の予算で呼べるような監督を各国で探す。外交上手の人が出てきて交渉し、まとめる。今の協会にそれができる人がいるとはまったく思えないです」

――アジアカップの最中、サッカー協会が伊東純也の離脱を発表しました。

「これには、本当にがっがりしました。森保さんのサッカーは選手任せだからこそ、あそこで伊東をしっかりと守らないといけないんですよ。

それに伊東のクオリティがあれば、イラン戦は違う結果になっていたかもしれない。日本サッカー協会は、そのクオリティを自ら手放す判断をしたわけです。田嶋(幸三・日本サッカー協会会長)さんは、伊東の件はまだ真偽がはっきりしていない段階なのに、スポンサーへの配慮か分からないですけど、離脱させた。そうなると今後、例えば森保さんが週刊誌などに取り上げられた場合、それだけで離脱になり、解任にまで発展する可能性がある。今回の決断はおおげさではなく、日本サッカー界が潰れてしまうリスクを負ってしまったことになります」

――トルシエの時代はシドニー五輪でグループリーグ突破とか、明確な目標設定があり、達成できないと解任という中で指導していました。森保監督の場合、今回のように大会で負けてもおとがめは一切ないですね。

「森保さんが結果を出せなかったり、目標を達成できなくても監督を続けさせるというのは、田嶋さんを含めたサッカー協会という組織全体の問題です。監督を変えてチームが良くなるケースもあります。でも、本当に強いチームにするにはトップとクラブの方針が一貫していて、それができる監督を登用していくんですよ。例えばマンチェスター・シティはペップ(ジョセップ・グアルディオラ)に任せ、リバプールは(ユルゲン・)クロップに任せ、町田ゼルビアは藤田(晋)さんが社長になり、監督に黒田(剛)さんを招聘し、トップと現場の考えが噛み合ってJ1に昇格した。田嶋さんは、哲学というよりも波乱がなく、いい人でスポンサー受けがよい森保さんを選択し、森保さんもよく言えば選手を尊重して不満が出ないように運営している。でも、代表を本質的に強くするという観点からはズレている。

それはライセンスの問題も絡んでくると思います」

――監督のライスセンスですか。

「めちゃくちゃ能力がある監督が日本代表監督になることは、この先しばらくはないでしょうね。哲学を持ち、賢くて現場をきっちりやりたい監督は、協会からのお達しと衝突した場合、そこで終わってしまうからです。だから、哲学がなく、協会からの声を聞ける人が上に上がっていく感じなんです。実際、名波(浩)さんはどこのチームでもまだ結果を出せていないですし、五輪代表の大岩(剛)監督も鹿島で同じ失敗を繰り返すサッカーを続け、内容に改善が見られず退任しています。そういう人がコーチや監督になって上がっていく組織になっている。

協会が選んだ代表監督の思考、知性とかには期待しない方がいいです」

――サッカー協会が選ぶ代表監督は、競争社会にはないということですか。

「代表監督になるためにはS級ライセンスが必要です。C級からA級までのライセンスをまず取り、その後S級を取得するのですが、めちゃくちゃ時間とお金がかかり、コネもいるので限られた人しか取れず、カリキュラムの中身にも疑問が多いです。しかもS級を取って終わりではなく、クラブで監督経験を積み、なおかつサッカー協会のお偉方に気に入られ、会長に選ばれないと代表監督にはなれません。このような自由競争や実力社会と程遠い場所に優秀な人が寄り付かなくなるのは当然です」

――日本代表監督の椅子に魅力がない。

「あまりないでしょう。年俸が安い上に、ハリル(ヴァイッド・ハリルホジッチ元監督)を選手とのコミュニケーションが多少薄れていたというふわっとした理由でクビにする国ですよ。それで一時は裁判沙汰にもなり、そんな国の代表監督になりたいと思わないと考える方が自然です」

――過去の代表監督をみると選考基準も一貫性もないですね。

「まったくなかったです。哲学がないので、それっぽい人を呼んでくるだけ。本当に『ガチャ』なんですよ」

――チームを変える上で重要なのは、監督ではなく、トップですか。

「本当に強いチームにしたいならそこでしょう。田嶋さんは自身の安定のなかで組織をつづけていきたいんですよ。でも、SNSとか外の声が大きくなり過ぎて、今まで見えなかったロッカールームのなかが可視化され、いろんな声が出てくるようになった。サッカー村の村長である田嶋さんは、猟銃でまだ戦っていたいのに新しい武器を入れないといけないみたいな感じになっている。次は、恒(宮本恒靖)さんが会長になりますが、就任の流れを見ていると田嶋さんの傀儡の可能性が高く、状況はきっと変わらないでしょう」

――トップはサッカーの経験者である必要性がありますか。

「そこは実力があればどちらでもいいと思います。重要なのは必要なものを見極められるかどうかです。僕は、プロレスが好きなんですけど、新日本プロレスは選手が現場でいろいろ決めていた時代は危険を孕んだ面白さがありました。しかし、流れが崩れると選手が自分の立場を守りたいうえで起きる現場での権力闘争がファンのニーズと合わず、衰退を招きました。でも、ビジネス感覚のある人が内に入って来て、どういう戦略で世界に打ち出していけばいいのかをとことん議論して、実行したら経営が軌道に乗り出した。その流れが日本サッカー協会にも起きればなと思うんですけど、現実的にはスポンサーが下りて経営的に厳しくなるなどの直接的な打撃がないと難しいでしょう。自浄作用は期待できそうもない組織に見えてしまっています」

――今のサッカー界でレオザフットボールさんができることはありますか。

「僕は、現在のサッカー協会に夢が持てないので、自分のチーム(シュワーボ東京<東京都社会人サッカーリーグ3部>)を成長させていくのを一番の楽しみにしています。僕みたいな元プロ選手ではないオーナー兼監督が情熱と知性で日本一強いチームを作ったとなると、無視できなくなると思うんです。でも、同時にサッカー協会はおかしいぞっていうのを、みんなが言い続けていかないといけない。勝ったらいい、盛り上がればいいではなく、ダメなところは修正されるまで言い続けていかないと。今のままじゃ大会が終わるごとに、『今回もダメでした』で終わってしまう。それでは日本のサッカーはいつまで経っても成長しないでしょうね」

伊東純也離脱問題にレオザフットボールが警鐘「サッカー協会おかしいぞってみんなが言い続けないといけない」
おなじみの配信席に座るレオザフットボール(本人提供写真)

おなじみの配信席に座るレオザフットボール(本人提供写真)

■Profile
レオザフットボール(れおざふっとぼーる)
2016年よりYouTubeチャンネル『レオザフットボール』を開設し、活動を開始。歯に衣着せぬ鋭い配信にファンがじわじわと増加中。現在のチャンネル登録者数は23.3万人(2024年3月時点)。並行してサッカー指導者としての顔も持ち、自身で立ち上げたシュワーボ東京(東京都社会人サッカー連盟3部)の監督兼オーナーを務めている。
YouTubeチャンネル:@leothefootballtv7690